前回黒いと書いた部分も最後に付け加えました。
とはいえそんなに黒くはないですので、おおらかな気持ちで読んでいただければと思います。
インクリメントは今回のアインズ様当番の間に伝えたい事を心に潜め激務をこなしていた。
その中で僅かな仕事の空きを見つけてインクリメントはアインズに声をかける
「アインズ様、お話ししたいことがあるのですが少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
アインズが忙しいのを承知の上で時間を使わせるこに抵抗を感じつつも、伝えたい事があった。
「ん?かまわないぞ…聞こう」
インクリメントはアインズの正面に膝をつき頭を下げて話をはじめる
「感謝いたしますアインズ様…私はアインズ様に頂いたお休みに感謝しております。お休み頂けたからこそ私は掛替えのないものを手に入れることができました」
「それは何だ?」
「友達です」
「…そうか」
アインズは自分が無理矢理に作った休日が受け入れられていないことは知っていたが、それでもいつかそれを喜んでもらいたいと思っていた。
今その日が訪れたこと、そしてそれが友達を作ることに役立ったと言われれば、アインズにとって最高の結果が出たと感じさせるに十分だった。
しかも相手が以前友だちがいないと言ったマーレだったこともアインズを高揚させる要因となり、緩やかな高揚がアインズを満たし続ける。
「インクリメント…私が望んだ最高の結果に至ってくれたことを嬉しく思う。」
「私こそアインズ様のお導きによって本当に素晴らしいものを手に入れることが出来ました。この喜びを与えてくださったことに感謝いたします。」
「(なるほどな、なんとなくユグドラシルの運営の気持ちが分かった気がするぞ、俺がエクリプスを見つけた時こんな気持だったんだろうな…ならば俺もそれに習おう)…インクリメントよ私の与えた課題を最初に達成した褒美を与えよう、クリエイトマジックアイテム!」
アインズは自らの経験値をその総量から見ればわずかといえ消費させることによりマジックアイテムをつくり上げる。
「…このアイテム名はボンド・オブ・インクリメント…お前のものだ。」
それは攻撃的な炎のダメージを防ぐことは出来ないが平時の7階層であれば一般メイドでも通り抜けることが出来る低位のマジックアイテムで、戦闘職であれば装備箇所を消費するだけのゴミアイテムかもしれないが、インクリメントにとっては最上のマジックアイテムだった。
インクリメントは平伏しそれを受け取った。
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ナザリック6階層。転移門のある闘技場を出て見渡すと高さよりも幹が太いずんぐりとした巨木がある。それはこの階層の守護者であるアウラとマーレの家だが、アウラは家よりも外を好みマーレは家にいる時は布団の一部となるため二人が揃わないかぎり静かな場所だったが、今日は活気にあふれていた。
一階のリビングの椅子に座るのは、指輪をはめた手で本をめくるインクリメント。
その指輪は課金クラスであるミニマムと同等の効果がありマーレ達の家に入るためには必要なアイテムだ。
アインズ様当番を終えたインクリメントが勢いで6階層まで歩いて行き、出迎えてくれたマーレから貰ったものだった。その時指輪を受け取ったインクリメントは、微笑み悩むこと無く左手の薬指にはめるのをマーレはニコニコと見つめていた。
それ以来インクリメントはまとまった時間が出来るとマーレの家に遊びに来るようになった。
「い…インクリメントさん、何読んでいるんですか?」
マーレはインクリメントの座る椅子の横に登り笑顔で話しかける
「銀河鉄道の夜。司書さんの話を聞くと内容が少し違うのが幾つかあると言っていたから比べ読みしようと思う。」
「お…面白そうですね」
「マーレ君は?」
「ぼ…僕は星の王子さまです」
「気になる…比べ読み終わったら借りてみようかな」
「は…はい、切ないですけど面白いですよ!」
家のドアが開き暴風のような勢いでアウラが上がってくる。
「あ~インクリメント来てたんだ、お昼はどうするの?」
「アウラ様こんにちは。お邪魔しています。お昼はお弁当を持ってきましたから一緒に食べませんか?」
インクリメントは机の上に巨大な弁当箱を置く。普通の人間なら5人は軽く食べられそうな大きさだったが、その大半は種族特性として大食を定められているインクリメント一人に必要な量だった。
「いただきます。所でインクリメント?」
「なんでしょうか?」
「食事の時にさ本の話聞かせてよ、マーレ教えてくれないんだよ」
「お姉ちゃん…自分で読もうよ…」
「いいじゃない!ねぇ?インクリメントお願い」
「はい、でもオチは話さないので、気になったら本読んでみてください」
「まっまってよ!それってひどくない?」
「そ…そうだね僕もそうするね」
「あ~~~もう、ご飯食べよご飯!マーレお茶いれて!」
楽しそうな笑い声が重なり、アウラもそれにつられて笑いだした。
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ナザリック10階層宝物殿
アルベドがリング・オブ・アインズウールゴウンで転移してきた。
「アルベド、首尾は上々のようですね」
パンドラズ・アクターは大げさな仕草でうやうやしくアルベドを宝物殿に迎え入れる。
しかしその表情は変わること無く何も読み取れない。
「あら?それは嫌味かしら?褒め言葉かしら?」
「おお…分かっていただけていると思いましたが…」
いつもどおりの演技がかった声から、トーンが落ちる
「両方ですよアルベド」
「なら良かった」
笑顔で受け止めるアルベドに対し、肩をすくめて見せる
「もし非常事態が起こりインクリメントを諦めねばならなくなった時マーレを脆くするのでは?」
「自覚もなく出来る傷のほうが予想がつかないわ。だけど自覚できているなら対処できる、それなら早いほうがいいと思わない?」
「そこに…今回の件でマーレがより強くあろうとする…とでも続きますか?そのためにアインズ様に間違ったスケジュールを伝えた…などとは言いませんよね?」
パンドラズ・アクターの声に危険な色が灯る。
「あら?私がアインズ様に嘘をつくと思われているのかしら?」
「スケジュールが変わったのを伝え忘れただけ…と?」
「急ぎではない案件に混ざっていただけよ」
「同じように聞こえますが…そういうことにしておきましょう…」
パンドラズアクターから危険な雰囲気が消える
「初めから予想していたのでしょう?それでもあなたは手を貸してくれたわ」
「建前が完璧で嘘ではなく、本音もアインズ様の損にはならないなら…というだけです」
パンドラズ・アクターはアルベドの狙いがマーレの想いを叶えながらも、違う創造主を持つものが交流を持つことで…仮にぶくぶく茶釜が敵対した際にマーレが敵となりにくいような
ただアインズが多くの者と交流し繋がりを強くすることは有益だと考えてあえて口を出さなかった。
「少し違うわ、本音が2つあるだけよ」
パンドラズアクターは大げさに天を仰ぐ
「…本当に2つだけなんでしょうかね…」
「そうだとして何か問題があるのかしら?」
「いささか考え過ぎと思いますが?」
「それが統括たる私の役目よパンドラズ・アクター」
「
「ところであれだけの服よく用意出来たわね、人数分以上あったと思うけど?」
「シャルティア、アウラ、マーレから借りれましたし、あとは色々頑張らさせていただきました」
能力向上を必要としない低位の服で良かったためアインズの使わないけど捨てられないアイテムをもらいパンドラズ・アクターが作ったものだった。
「今度私の服も用意してもらおうかしら?」
「おお…レディの衣装を用意できるとは光栄です…機会があればぜひ」
「その時は是非お願いするわ…ダメね本題が最後になってしまったわね…今回はいろいろ動いてくれてありがとう。これからも色々お願いすることがあると思うけどよろしくお願いね」
パンドラズアクターは何も言わずに恭しく頭を下げる
「
「ありがとう。でも私は常にそれを感じているわ」
アルベドはにこやかな顔で転移した
「出来るなら独り占めしたいと思うのは欲張りかしらね…」
それを見送るパンドラの表情からは何も読み取れない
「アルベド、私はアインズ様の孤独を埋めて差し上げたいのですよ…しかし疲れました…気分転換にコキュートスあたりと気楽に一杯やりたい所ですが…慰労もかねてシャルティアでも誘ってみましょうか」
その夜パンドラズ・アクターは違う意味で疲れ果てることになるがそれはまた別のお話
読んでいただきありがとうございます。
色々読みづらいところがあったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
補足になりますが、マーレの友達がいない、自宅の様子、あと前編の司書長についてはBD1巻の特典を元にしています。
クリエイトマジックアイテムでの経験値消費についてはD&Dがそういうルールらしいのでそれに習いました。