特に戦闘とかは無くただの日常の一コマとして書いています。
初めてこのような場所に書きますので色々とおかしいところもあるかもしれませんがお許し下さい。
話は後編とエピローグで終わる予定です。
追記:書ききれずに中編が入りました
ナザリック大図書館への転送ゲートに続く通路を歩く一人のメイド、急いでいる感じはないものの足取りは早い。それでも周りには十分意識を向けており、後ろからの足音が近づくのに合わせて振り向き相手を確認後通路の端により両手を前に揃えておじぎをする
「マーレ様こんにちは」
「あっインクリメントさん、こ…こんにちは」
「マーレ様も図書館です?」
「あっはい、ほ…本を読み終えたので、次を借りようと思って」
「私もです。マーレ様はどんな本を読まれてるのかしら?」
「が、ガリバー旅行記です」
「どんなお話?」
「えと…ガリバーさんが小人の国や巨人の国、空飛ぶ都市、馬の国を訪れる話です。あの…最後は少し切なかったかな?ピニスンさんとか新しい仲間をちゃんと信じようって思いました」
「つぎ…貸してもらおうかしら?」
「あ…あの男の子向きだと思います」
「…なんとなくわかったから詳しくは聞きませんが…」
いつも冷静に一歩引いているインクリメントが顔を少し赤らめる
「あ…あのその…インクリメントさんは何を借りたんですか?」
「赤毛のアン…司書さんのお勧めを読んだわ」
少しづつ自分の中に散らばる物を手繰り、集めて言葉にしていく
「色々思った…そうね…木々に囲まれて…それで…うん本を読みたい」
「そ…それなら今度6階層に来ませんか?」
マーレにとってはなんでもない誘い
でもそれは一般メイドには厳しい誘いだった。
「マーレ様…ご厚意はありがたいですが私では7階層は通れません」
その言葉の中に諦めに近いものを感じマーレは混乱する
何故混乱するのかわからないけど…話を変えようと必死で混乱した頭で考える
「あ…あの…ぼっ僕達仲間ですし様はいらないです…」
「えっ…ですが…マーレ様は守護者で素晴らしい力をお持ちですし」
「そ…それならインクリメントさんは、ここを綺麗にしてくれてます、それはぼ…僕には出来ないことですよ!」
「ありがとう…マーレ…君…なんだかすごくこそばゆい…」
普段の仲間の会話から一歩踏み込んだだけなのに、抑えようとしても抑えきれない…気まずくもむずがゆい1秒が1分にも感じる時間の中、相手だけを意識してどちらともなく頬が染まり顔が緩んでいく。
マーレはどんな耐性魔法でも止められない精神の動揺をなんとか抑え
「くっ君付け…で呼ばれるの、はっ初めてなんです。う、上手く言えないけどうれしいです…えへへ」
インクリメントもそのあまりにも素直な一言に答えにならない答えを返す
「っ・・・・・・・照れるわ…」
しばらく相手を見て目が合うとそらし、何かを言おうとして止まり
次の行動への取っ掛かりが掴めないまま時が過ぎ…
全身黒尽くめの男に抱えられたペンギンが通りかかる
「止まれ」
「いー」
「マーレ様、インクリメントさんこんな所でどうかされましたかな?…まるで…そう図書館にあるキックオフという漫画のようでしたよ…」
声をかけるが反応の薄い二人
「どうやらこれ以上お話しするのも野暮のようですし邪魔な私はこれで…よしいけ」
「いーー」
「「じゃ邪魔って…」」
「と…図書館にいこうか」
「そ…そうですねマーレ…君」
この後二人は図書館でキックオフを見つけページを開き再びもじもじ時間を過ごすことで、互いに心のなかの相手の位置をずらし、だからこそ意識をしてしまっていた。
そして廊下でもじもじしていた姿は一部のメイドの間で噂になった
-------------------------------
内股で何かに怯えるようなしぐさで歩き、脇から出てきた他の者にびっくりしながらも、頭がぶれることも歩幅が狂う事もない…例えるなら演技中の俳優のように振る舞う少女、正確には女装をした少年が歩いていた。女装とはいえ金髪のボブカットに少したれた長い耳、オッドアイのどこか緩い表情は年齢的な中性さを超え知ら無い物には男装であっても少女に見えるかもしれない。
その少年は豪華な扉の前で一度大きな深呼吸をし、意を決した表情でドアをノックし許可をもらい中に入る
「しっ失礼します…アインズ様」
「マーレか?どうした何か問題でもあったか?」
「あっあの…実はお願いがあるんです…」
「(マーレがお願いというのも珍しいな)ふむ、聞かせてもらおう」
マーレは指にはめた指輪を意識せずに触りながら
「メ…メイドさんを6階層に、まっ招く際に、あのその…指輪を使ってもよ…よろしいでしょうか?」
「(メイドを招く?…なるほど確かにLV1じゃ7階層は危険だよな…でも何故だ?わざわざ許可を取りに来るという事は仕事ではないってことか?)それはマーレの個人的な理由なのかな?」
マーレはアインズの”個人的な理由”を聞き体を固くする
「…は…はい、やっぱり…だ…だめですよね…」
「構わないぞ?」
「あっ…え?あっありがとう…」
「私は反対致します」
マーレがお礼を言い終わる前にアインズの横に立つアルベドが口をはさむ。その口調は冷静で感情的なものは感じられなかった。それだけにその場にいるもの、アインズ、マーレ、アインズ様当番のメイドを硬直させる。
「(この様子からすると訳がありそうだな)…理由を聞かせてもらおう」
「はい、アインズ様」
アルベドはマーレに向かう
「マーレ、メイドさんという事なら多分一人、良くて数人よね?」
「は…はい」
「個人的に仲の良い子がいるのはいいことよ…でも6階層にまで招くのであればその子に対する妬みを生むかもしれない…それは理解できるわね?」
マーレは自分が指輪をもらった際に祝福してくれながらも複雑な顔をした姉、それ以上に貰った時のアルベドを思い浮かべ理解する
「…そ…そうですね…やめておきます」
マーレはインクリメントが木々に囲まれて本を読むことにあこがれいるのを知り、一緒にそれをしたいと考えると居ても立っても居られなくなり、勢いに任せてここに来た自分を振り返り浅慮を恥じ入る。しかしそれでも叶えてあげたかったという後悔も湧き上がる。
「まちなさい、そういうことを言いたいのではないわ」
優しいまなざしでマーレを見つめ、アインズに振り返る
「アインズ様せっかくですから全一般メイドを6階層に招いてはいかがでしょうか?”いあんりょこう”…でしたか?を行うのはいかがでしょうか?」
アルベドの提案はマーレの願いを内包したものだった
「(一般メイドはずっとこの階で過ごしているし、いい息抜きになるだろう)慰安旅行か…どちらかと言えばピクニックに近いが、十分楽しめるだろうだろう。マーレ」
「はっはい!」
「お前に幹事を任せる、日程は1日…だな、スケジュールを作り調整せよ。移動は転移のアイテムを貸すので食堂と会場を繋げば良いだろう。マーレが必要と思う部署とこの件を直接打ち合わせる許可を与える。食事などで支出が増えると思うが遠慮はいらないぞ。どうせなら豪勢に行こうじゃないか」
「あっありがとうございます、アインズ様、アルベド様」
普段おどおどしているマーレだが、今この時は心の中からあふれる喜びの笑顔であふれ挙動全てが明るく活き活きとしていた。
「(こんな嬉しそうな顔をされるとこっちが嬉しくなるな…マーレだしきちんとやってくれるだろう…これは絶対成功させてやらないとな)いや礼を言うのは私だ。私の仲間たちが作ったナザリックを美しく保ってくれているメイドの皆には感謝をしているが、私なりの感謝を示す方法が見つからなかったのだ(みんな、俺に仕えることで十分とか言うんだよな)。それを教えてくれたこと感謝する、マーレ、アルベド」
そのアインズの言葉を聞き、あふれる涙を抑えきれなかったアインズ様当番により事の顛末はナザリック中に伝わり、メイドたちの会話を独占した。曰く「アインズ様のご配慮もったいないけど感謝感激」「お優しきアルベド様」「マーレ様頑張れ~」特にマーレの行動に心当たりのあるメイドたちはニコニコとインクリメントを刺激しないように話のネタにしつつ慰安旅行の日まで盛り上がっていた。
-------------------------------
マーレは休みの日こそ布団の一部だが仕事となれば手を抜く事はない。今は普段の仕事に加え慰安旅行の準備が重なり大好きな布団でごろごろする暇が少なくなった。
というのも布団で横になるとアイデアが浮かび想像を膨らませるとワクワクが止まらくなり布団から抜け出すのを繰り返していたからだ。
マーレはそれが楽しくてたまらなかった。
そして今そんなアイデアを実行すべく大図書館で司書長のティトゥスと話していた
「…なので、みんなに本を読むきっかけを作りたいんです!」
「協力しよう」
「わ…わ…ティトゥスさんありがとうございます」
マーレは何度も何度も頭を下げる
「構わない、私としては大歓迎だ。騒がしいのは願い下げだが活気が無いのは淋しいものだからな」
「ぼ、僕もそう思います、せっかくこれだけ色々あるんだからみんなに楽しんで欲しいです」
本来表情が無いはずのスケルトンメイジの顔に孫を見るような雰囲気が宿る
「そうだ一般メイド・インクリメントから君宛の手紙を預かっている」
「わっあっありがとうございます」
「司書J、渡してあげなさい」
わきに控えていた司書Jの腕章をつけたエルダーリッチがマーレに近づく
「どうぞマーレ様」
「ありがとうございます!」
喜ぶマーレをみてティトゥスが体を動かす
「…どうかしました?」
「いやな、少し体が痒かっただけだ気にしないでくれ」
スケルトンである司書長がかゆいというのに不思議なものを感じつつも、優しい手つきで手紙をアイテムボックスではなく懐に収める。
それはまるで手紙を自分の心臓に近づけようとする行為にも見えた
「そ…それでは失礼します!」
頭を深々と下げ、足早に図書館から退出するマーレの足取りは軽やかで、何かのリズムを取るように頭が揺れ髪がなびく。
「恋ですね、司書長」
「違うな。守護者マーレは初めて友だちができたのだ。それが異性だっただけだろう」
「友達…ですか?それならシャルティア様は?」
「兄弟みたいなものだ…取り敢えずは初心者が読みやすい本を集めておいてくれ」
「分かりました」
司書が出て行くのを眺めながら
「研究以外でこんな気分になるとは思わなかったぞ。だが悪くない」
ティトゥスはつぶやきながらスクロールの研究に戻った
-------------------------------
「インクリメント…顔が緩んでるわよ」
食堂で本に目を向けても集中できずページをすすめることの出来ないインクリメントにシクススが声をかける
「・・・からかわないで欲しいんだけど?」
からかわれる自覚は有るんだと思いつつもそれを言葉には出さない
「マーレ様頑張ってるよね」
「…そうね」
木々の中でのんびり本を読みたいという夢を叶えてくれている、そのため忙しく動き回ってくれているのはすごく嬉しいと思う反面、最近会えていない…元々そんなに顔を合わせていたわけではないが…それを淋しいと感じる。
たった一度の触れ合いでこんなにも心が動いた事に疑問を感じ自分に何度問いかけても“楽しかったから”という答えしか帰ってこない。『好きか』と問いかければ好きだと即答できるが、『恋人になりたいか』と問えば答えはわからなかった。
そんな自分で理解しきれない気持ちを抱えつつも、マーレに対してお礼を伝えたい…その気持が手紙を書かせたが、何度も何度も書きなおし文字にできたのは『ありがとう、楽しみにしています』だけだった。そんな歯がゆい気持ちでも顔がにやけるだろうか?わからなかった
「…緩んでた?」
「そこまでじゃないけどね、普段の凛とした感じじゃなくてゆるい感じだったかな?」
何も答えず息だけを吐くインクリメント
「でね、みんなで話し合ったんだけど…」
インクリメントはシクススが笑いをこらえている顔を見て警戒する
「…何?」
「当日のマーレ様のお手伝いは任せるからね、その代わり食事の準備とか後片付けは全部私達がするから」
その提案は魅力的だった。魅力的すぎてつい意固地になってしまう
「お断りするわ…準備や片付けはみんなでするものだと思う」
意地を張るインクリメントを可愛いとシクススは思い暴走する
「ふ~~んだ…べ…別にあなたのためにするわけじゃないんだからね!」
シクススの顔は嫌味など全く感じさせない本当に楽しそうなな笑顔だった。わけがわからず『何を言ってるのこの子は?』という気持ちが溢れる
「私達みんなマーレ様に感謝してるのよ?それとあなたにもね、だから…あなたは私達からマーレ様へのプレゼントなのよ。だから遠慮無く本読んでていいからね?
でね、この話はペストーニャ様にも許可貰ってるから安心して」
「ちょ…どういうこと!」
「そういうこと」
シクススが周りを見渡すのに合わせて周りを見ると皆がこちらを見て微笑んでいる。手をふっている子もいる。同じ創造主を持つ姉妹なんか気合い入りすぎだと思うぐらいだ
「…わかったわ…みんな…マーレく…様当番引き受ける」
緩みきった空気はメイドたちの口を軽くする「君でしょ!く・ん」「そうだそうだ」
あまりもの姦しさに料理長や副料理長は苦々しい顔をしながらも今の勢いには勝てないと悟り口をつぐむ
「…うるさくなったからそろそろ帰る。あなたも当日は失敗しないように気持ちを引き締めるといいと思う」
普段と変わりない言動と行動、だけどその顔に浮かぶ恥じらいを見落とすものはいない。
「そうね、気をつけるわ」
そしてそれをその後話題にしないものもいなかった。
--------------------
「お…お姉ちゃん」
「なぁにマーレ」
「み…みんなが来た時の椅子とかどうしよう?あの…作ったほうがいいかな?」
「私はいらないと思うな、森林体験みたいな感じでしょ?シートやハンモック用意したり…うんトレントに来てもらって椅子になってもらおうよ!」
「そうだね!うん、それは楽しそうだね」
アウラは目元を緩めてマーレを見つめる
「…?ど…どうしたの?」
「椅子ならさシャルティアに来てもらおうか!」
「お…お姉ちゃんそれはやめようよ…」
苦笑するマーレの顔を見てアウラの目がいたずらっ子のそれに変わる
「そうだね、シャルティアが興奮してインクリメントを襲ったら困るもんね」
「お…お姉ちゃん!!!!」
いつものおどおどとは違う挙動不審がアウラには新鮮で面白い
「取り敢えず、食事を置いたりするテーブルは私が用意するから、トレントたちにはマーレから話をしておいて。後なにか考えてる?」
「う…うん、席取り合戦を景品付きで考えてるよ」
「景品って?」
「えと…アインズ様にお姫様抱っこされる券」
アウラの脳裏に変貌したアルベドが暴れる姿が思い浮かび『やめろ!それはまじでやばい』と経験則が警告を鳴らし額に汗が浮かぶ
「それ…アルベド知ってるの?」
「う…うんアルベドさんが発案だから」
「ああメイド達を出汁にして抱っこされるつもりね…大人げないなぁ」
「お…お姉ちゃん…信じてもらえないかもしれないけど…アルベドさんは参加しないよ」
「う…嘘だ!!!」
オークションの時のアルベドやアインズ様押し倒し事件を知っているだけに、そのアルベドは別人か?とまで考えてしまう。そんな姉に苦笑しつつマーレは会話を続ける
「…あ…あと宝探しを考えてるんだ、ヒントを書いた地図を渡してそれを元に探してもらうんだ。でね…あの…そっそれをお姉ちゃんにお願いできないかな?」
「うんわかった、41人分でいいの?」
「うっううん…ペストーニャさんやエクレアさんもくる予定だから余裕見て50ぐらいお願いしてもいいかな?」
「いいよ、マーレはどうするの?」
「ぼ…僕は大図書館にみんなを連れて行く役かな?」
「そっか…私も本読んでみようかな?」
「えっ…お…お姉ちゃんが??」
「マーレ…そこまで驚かれると流石に凹むわ」
「ご…ごめんなさい」
百面相のようにくるくると変わるマーレの表情に毒気を抜かれる
「でもそのとおりだけどね、面白い本読んだら話し聞かせてよ」
「うん、わかった!…そっそれじゃあいくね」
指輪を使い転送するマーレを見送りつつ
「楽しそうだな、よし私もせっかくだから楽しむか!」
そして慰安旅行の日がやって来た。
なんとなく気恥ずかしいものですね。
気になる点とかありましたらご指摘いただければ幸いです