過去最大の事業規模という割に中身は乏しく、緊急事態宣言で募る国民の不安を解消するにはほど遠いと言わざるを得ない。新型コロナウイルスの感染拡大にともない、政府が決めた緊急経済対策である。
目玉は計6兆円超の現金給付だ。国内感染の確認後、政府がこれまで2度にわたってまとめた対策では、原則として融資による支援に限ってきたから、一歩前進ではある。
個人向けでは1世帯当たり30万円の現金を配る。リーマン・ショック直後の経済対策で行った定額給付金(1人1万2千円、18歳以下と65歳以上は2万円)と比べ、破格の金額だ。
ただし、対象は全体の2割の1300万世帯。受け取れるのは、住民税がかからない金額まで年収が下がった低所得者世帯などだ。休業で収入が4割減った会社勤めの人でも、その多くは蚊帳の外に置かれる。
もちろん、コロナ禍の影響を免れている人や高所得者も含めて、一律に給付する必要はないだろう。しかし今回は対象を絞りすぎたのではないか。
企業向けでは、個人事業主には100万円、中小企業には200万円を上限に現金を給付する。これも収入が半分以上減っていることが条件だ。この措置で安心できる事業者は多くはないだろう。事業活動の自粛で生じた損失の補償を求める声も根強い。
二つの給付とも申請が必要だ。行政が対象者を特定して配ると時間がかかり、目標の5月に支給を開始できないからだという。しかし制度が複雑なだけに、自分がもらえるのかどうか、わからない人が続出する可能性が高い。
生活に困って情報を集める余裕の無い人に、給付が届かないことがあってはならない。政府は、制度をわかりやすく説明したうえで、手厚い申請のサポート態勢を組むべきだ。
事業規模108兆円は、リーマン翌年の対策(57兆円)の倍近い。安倍首相は「世界的にも最大級」とアピールする。
だが、今回の対策には、税金や社会保険料の支払い猶予や、東京五輪後の景気悪化を見据えて昨年末に決めた経済対策の未実行分など既にある予算も含めて膨らませたものだ。
コロナ禍はいつ収束するか見通せない。事態が長期化していったらどう対処するつもりなのか、政府は国民に説明し、準備を進める必要がある。
その際に大切なのは、規模ではなく、政策の効果である。感染の拡大を防ぎながら、国民の暮らしと経済活動をどう守るのか。いまはそのことを最優先しなければならない。
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