新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急経済対策として現金給付が発表された。額は一世帯三十万円だが対象が絞られ効果を疑問視せざるを得ない。不公平が生じる前に仕組みの変更を求めたい。
今回の現金給付は二月以降の収入が減った世帯が対象となる。基準は世帯主でそれ以外の家族の収入が減っても考慮されない。対象は全世帯の二割程度とみられ、わずかな差で線引きが行われる仕組みであることは間違いない。
給付を希望する世帯は支給条件に合うことを証明するため、給与明細や源泉徴収票などを用意する必要がある。市区町村の窓口に行って書類を出し、審査に通って給付をもらえる段取りだ。オンライン申請は検討中で、どの程度稼働するかは未知数だ。
受け付け開始後、何とか書類を用意した希望者が、窓口で長蛇の列をつくる光景は想像に難くない。給付を断られて抗議したり、書類が不備で突き返されるなど混乱が生じるケースも多いだろう。
経済的に逼迫(ひっぱく)している世帯を素早く救済することが給付の狙いのはずだ。しかし、このままでは実際の支給が夏ごろになり対策の意義自体が失われる恐れもある。
政府は経済的に余裕のある世帯への給付を避けるために対象を絞ったという。これは一見、公平のようだが逆ではないか。
高額所得者以外で収入が大幅に減っても対象とならない世帯はかなり出る。その中には、家族が入学や受験期を迎えたり病気になるなど、通常より出費が多くならざるを得ない世帯もある。今の仕組みでは、著しい不公平が生じると強く指摘したい。
一律の給付が貯蓄に回るとの見方も理解できなくはないが、今回は的外れだろう。給付を受けた世帯が給付金を食料や日用品、公共料金など日々の支払いに使うことは確実だ。多くの世帯が日常生活にも困窮しつつある現状を、政府は改めて認識すべきだ。
給付の実行にはどのみちある程度の時間はかかる。ここはやや額を下げてでも、全世帯一律給付とするのがより効果的でスピードも大幅にアップすると強く主張したい。
富裕層に回った分は後年、税で徴収すればいい。給付の辞退を募り、浮いた分を別の対策に配分する手もあり得るだろう。多くの国民にとって政府支援は「マスク二枚だけだった」という事態を避けるためにも現金給付についての再考を求める。
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