コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬:NSAIDs
こんにちは。
2020年3月15日
ヤフーニュースhttps://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200315-00167830/
に、
『コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬:フランスの厚生大臣が発表』
という記事が載りました。
フランスの厚生大臣オリヴィエ・ヴェラン氏が、
コロナウイルスに関して、
『イブプロフェンを服用しないほうがよい』と勧告したのです。
フランスの厚生大臣Olivier Veran氏は神経科医で39歳という若さです。
厚生大臣は、自身のツイッターで、
「!新型コロナウイルス:感染者が(イブプロフェンやコルチゾンなどの)抗炎症薬を服用すると、
感染を悪化させる要因になる可能性があります。
熱がある場合は、パラセタモール(別名:アセトアミノフェン)を服用してください」
と述べています。
<アセトアミノフェンとNSAIDs>
イブプロフェンは、非ステロイド性の抗炎症薬(NSAID)に属していますが、
勧告がでるということは、フランスでも、ウィルス感染の発熱に対して
NSAIDを処方する医師がいるのでしょうね。
日本では、近年、風邪などウィルス感染の発熱に対して、
NSAIDsを処方する医師は激減して、
ほとんどが『アセトアミノフェン』を処方するようになっています。
昔は、ロキソニンやボルタレンなどのNSAIDsが、安易に使用されていたので、
これはとても良い変化と思います。
例えばインフルエンザに罹患した患者さんで高熱がでれば、
私も解熱剤を処方することがあります。
このときに「使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけ」ということです。
商品名はアセトアミノフェン、カロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、セレコッックス、
イブプロフェン、アスピリン・・・
これらの一般的なNSAIDsはインフルエンザ脳症のリスクがあるので
全て使用してはいけません。
インフルエンザ以外にも各種ウィルス、細菌、原虫などの
感染症が存在しての発熱には、NSAIDsは使用してはいけません。
こちらもアセトアミノフェンだけが使用OKです。
<NSAIDとプロスタグランジン>
この薬(NSAIDs)は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。
特に高齢者の腰痛などに
ロキソニン(60)3錠/日 分×3 食後 7日間投与。
とかは、腎障害リスクがとても高くなるので危険です。
プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。
プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。
さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)
の働きを妨げて、解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。
COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。
NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。
ロキソニン1~2錠/日とか頓用は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、アセトアミノフェンが効かない時に、
生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、処方することもあります。
<アセトアミノフェンの作用機序、使用量など>
結局、
比較的安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。
なお、本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、
1日総量1,500mgを超す高用量で長期投与する場合には、
定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与することも必要です。
腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。
禁忌として以下があります。
消化性潰瘍のある患者
重篤な血液の異常のある患者
重篤な肝障害のある患者
重篤な腎障害のある患者
重篤な心機能不全のある患者
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
アスピリン喘息
しかし、アセトアミノフェン禁忌の患者において、
通常のNSAIDsは、勿論禁忌です。
あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。
江部康二
2020年3月15日
ヤフーニュースhttps://news.yahoo.co.jp/byline/saorii/20200315-00167830/
に、
『コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬:フランスの厚生大臣が発表』
という記事が載りました。
フランスの厚生大臣オリヴィエ・ヴェラン氏が、
コロナウイルスに関して、
『イブプロフェンを服用しないほうがよい』と勧告したのです。
フランスの厚生大臣Olivier Veran氏は神経科医で39歳という若さです。
厚生大臣は、自身のツイッターで、
「!新型コロナウイルス:感染者が(イブプロフェンやコルチゾンなどの)抗炎症薬を服用すると、
感染を悪化させる要因になる可能性があります。
熱がある場合は、パラセタモール(別名:アセトアミノフェン)を服用してください」
と述べています。
<アセトアミノフェンとNSAIDs>
イブプロフェンは、非ステロイド性の抗炎症薬(NSAID)に属していますが、
勧告がでるということは、フランスでも、ウィルス感染の発熱に対して
NSAIDを処方する医師がいるのでしょうね。
日本では、近年、風邪などウィルス感染の発熱に対して、
NSAIDsを処方する医師は激減して、
ほとんどが『アセトアミノフェン』を処方するようになっています。
昔は、ロキソニンやボルタレンなどのNSAIDsが、安易に使用されていたので、
これはとても良い変化と思います。
例えばインフルエンザに罹患した患者さんで高熱がでれば、
私も解熱剤を処方することがあります。
このときに「使ってもいい解熱剤はアセトアミノフェンだけ」ということです。
商品名はアセトアミノフェン、カロナール、コカール、アンヒバなどです。
それ以外の、ロキソニン、ボルタレン、ポンタール、インダシン、セレコッックス、
イブプロフェン、アスピリン・・・
これらの一般的なNSAIDsはインフルエンザ脳症のリスクがあるので
全て使用してはいけません。
インフルエンザ以外にも各種ウィルス、細菌、原虫などの
感染症が存在しての発熱には、NSAIDsは使用してはいけません。
こちらもアセトアミノフェンだけが使用OKです。
<NSAIDとプロスタグランジン>
この薬(NSAIDs)は、プロスタグランジンという物質の産生を抑えるために
腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。
結構頻度が高く、薬を飲んだ後に尿量が減るようでしたら、要注意です。
特に高齢者の腰痛などに
ロキソニン(60)3錠/日 分×3 食後 7日間投与。
とかは、腎障害リスクがとても高くなるので危険です。
プロスタグランジンは全身の様々な組織や器官の細胞に存在します。
結局、NSAIDsは単純に熱を下げるだけではなく、全身の細胞において、
プロスタグランジンという物質の生合成を抑制するのです。
プロスタグランジンは、血圧低下作用や筋肉の収縮作用、黄体退行作用、
血管拡張作用など色々な役割をもつホルモンです。
NSAIDsは、プロスタグランジンの生合成を抑制するのですから、
様々な副作用が出て当たり前なのです。
さらに、痛みや炎症や、解熱の目的で長期に飲み続けると、
胃炎や胃潰瘍の副作用が起こることがあります。
NSAIDsは痛みの元となる物質を作り出す酵素(シクロオキシゲナーゼ:COX:コックス)
の働きを妨げて、解熱や鎮痛、抗炎症作用を発揮する薬です。
COXには2つの種類があり、COX-1は胃粘膜や血管にあって生体の恒常性の維持に、
COX-2は主に刺激があった時に作られ、痛みや炎症に関係しています。
NSAIDsは、COX-2の働きを抑えて、解熱、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、
ほとんどのNSAIDsは、COX-2だけでなく、COX-1の働きも抑えるため、
胃酸の分泌が増えたり、胃粘膜の血流が悪くなったりして、
胃炎や胃潰瘍を起こす原因になるのです。
ロキソニン1~2錠/日とか頓用は、リウマチなど、症例により、
やむをえず投与することもあると思います。
私は、アセトアミノフェンが効かない時に、
生理痛とか、頭痛に頓用でなら、許容範囲と思って、処方することもあります。
<アセトアミノフェンの作用機序、使用量など>
結局、
比較的安全に使用できる、解熱剤、鎮痛剤は、アセトアミノフェンだけということです。
アセトアミノフェンは鎮痛・解熱作用を有しており、
NSAIDsと同様にCOXを阻害しますが、
その作用は弱く抗炎症作用はほとんどありません。
そのためアセトアミノフェンはNSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、
詳細な機序は未だに解明されていません。
発熱には、アセトアミノフェンを、
成人なら、1回に300~500~600mg、1日2回なら安全です。
年齢、症状により適宜増減で、原則として1日最大1,500mgです。
なお、本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し、
1日総量1,500mgを超す高用量で長期投与する場合には、
定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与することも必要です。
腰痛や生理痛なら、 成人はアセトアミノフェンとして、
1回300~1000mgを経口服用し、服用間隔は4~6時間以上とし、
年齢、症状により適宜増減しますが、1日総量として4000mgが限度です。
禁忌として以下があります。
消化性潰瘍のある患者
重篤な血液の異常のある患者
重篤な肝障害のある患者
重篤な腎障害のある患者
重篤な心機能不全のある患者
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
アスピリン喘息
しかし、アセトアミノフェン禁忌の患者において、
通常のNSAIDsは、勿論禁忌です。
あと、痛みが強いときは、
トラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン)が有効です。
トラマドールは非麻薬性オピオイド受容体刺激薬です。
トラムセットには、NSAIDsのような副作用はありませんが、
吐き気がすることがあります。
それで、初期の1~2週間は、吐き気止めと一緒に内服します。
江部康二