うちのファクトリーに来て、いろいろマシンを
いじっていた若い子のホンダホーネットにセパ
ハンを装着した個体を試し乗りさせてもらった
事がある。
コーナーで素直に寝るので、「ああ、NSRの
MC-18の88式が最悪ハンドリングだったのが
89式MC-18で改善されたように、ホンダも解っ
てきたのかなあ」とか思っていた。
しかし、先週これに乗って、「なんだよ。相変
わらずじゃん」と思った。
これで本気走りしたら死ぬわ、と。
上のホーネットがこいつの4年後に出たが、その
4年間で改善されたのだとは俄かには判断でき
ない。
2ストクォーターのNSRでは、同じMC-18でも
88年式と89年式では劇的にハンドリングが改善
されていた過去があるからだ。
基本的にホンダのハンドリングはかなり悪い。
16インチ時代などは、ある程度の領域でのチャ
ターとインに急に切れ込む内向性の現出によって
レーシングマシンでさえもが最悪ハンドリングで
多くのレーシングライダーが転倒した。
ホントの話、発売されたばかりのRS250純レー
サーの初乗りとなった年の富士スピードウエイ
では、場内放送で「RS250ユーザーの方は走行
に十分にご注意ください」と大音声でオフィシャ
ルが注意を促していたほどだった。
コースインしてみると、あちこちに、まだカラー
リングしていないホンダRS250の白い車体が、
まるで屍のように何台も転がっていた。
ヤマハTZのつもりでコーナーに入ると、軒並み
前輪をすくわれて転倒してしまっていたのだ。
これ、実体験の実話。
また、今だから言えるが、ワークスライダーの
人から聞いた話で、そのメーカーの市販公道マ
シンを指して、「あんなの乗ってたら、絶対に
飛ぶわ」という事も耳にしていた。
実際のところ、MVXや公道NSのハンドリング
の悪さは特筆物で、「確かに、こりゃ飛びます
ね」というものだった。
スズキガンマ1型も欠陥バイクで、ガンマの16イ
ンチの場合、寝かしこむとビタリとレールの上
を走るようでコントロールが利かない。
また、ホンダと同じく、高速コーナーでのチャタ
リングがひどかった。
それは私個人はユーゾーから特殊チューンを教
わって解消してクリアしたが、まあ、ヤマハが
なぜ頑なに前輪18インチにこだわり続けていた
のか、現実問題としてよく分かる、分かりすぎる
現象が1980年代初期〜中期に起きていた。
ただ、ホンダは、小排気量車についてはとても
素晴らしいハンドリングのマシンを作っていた。
それはレーサーのMT125やRS125であり、市販
公道モデルのMBX50などはヤマハに匹敵する
ナチュラルハンドリングだった。
だが、250以上は、どれもが❌であったのは
紛れも無い事実である。
バリ伝グンちゃんなんて、よくあんなCB750や
NS400なんて走らせられると思うよ。
あの時期、ヤマハは別格としても、カワサキの
ほうがホンダよりも遥かにハンドリングが良か
った。
(ヤマハRZ350などと比べるとCB750Fは
決して「完成されたバイク」ではなかった)
実は、ホンダは、レーサーレプリカであろうと
当時同時代のSSだろうと、最後までハンドリン
グの最悪さを解消でききらなかった。
これは知っている奴らは知っている。
分かっていても言えない立場の多くの「知る人」
たちも。
言えないだけだ。
それでも、悪いものは悪いのである。
しかし、世の中、正論と客観的事実を述べる事が
正義とはならないという社会の仕組みがある。
正当な正論を表明すると、たちどころに力を持つ
連中からパワハラを受ける事が今世紀に入っても
続けられているのが日本の社会だ。
ホンダのエンジンは素晴らしい。
最新の超高度技術を惜しみなく投入し、他国で
は真似できないようなエンジンを作る。
しかし、四輪車も二輪車も、エンジン単体で前
に進むのでも曲がったり止まったりするのでも
ない。大切なことは、トータルバランスだ。
スズキなどはシャシが図抜けて良い。
ヤマハはハンドリング=操縦性だ。
カワサキは、かつては並行輸入の外車並みに壊れ
易いマシンを作るメーカーだったが、今は改善
されている。ユーザーフォロー体制も破竹の勢い
で完備されつつある。
今、市販車の売れ行きでカワサキがホンダを抜い
た理由が分かるような気がする。
モノ自体がカワサキがようやくホンダ並みとまで
はいかなくとも、やっとオートバイメーカーと
して真っ当な製造物を生産するようになったから
である。
トラックの世界なら、国内第3位だったいすゞが
日野を抜いて第1位に踊り出たのが数年前だが、
それに似ている。
ホンダのマシンのエンジンは最高に良い。
しかし、エンジンだけでは駄目なのだ。
理由は一つ。
モーターサイクルは、人間が乗る物だからであ
る。