罷免取り消し求め提訴へ　上天草市立病院の元事業管理者

堀江市長「コメント差し控える」

　熊本県上天草市から今年2月、「適格性を欠く」などの理由で市立上天草総合病院の事業管理者を罷免された蓮尾友伸医師（62）が、「内容的にも罷免処分は不当」として処分取り消しと慰謝料などを求めて、同市を相手取り近く熊本地裁に提訴することが分かった。

　市は2月10日、「病院幹部の間で意思疎通ができない状態が続いていること」などを理由に、実名を挙げて処分を発表。会見では病院職員からパワーハラスメントの被害報告もあったとし「運営に支障をきたす」と述べたが、事案の具体的な内容については「個人の特定につながる」として説明しなかった。

　蓮尾氏の代理人弁護士などによると昨年12月20日、堀江隆臣市長から突然「（事業管理者を）辞めてくれないか」と求められた。文書で理由を説明するよう求めたが回答はなく、処分5日前に書面で罷免を通告された。パワハラについては、事実確認や弁明の機会もなかったという。

　訴訟では、処分の具体的理由が示されておらず聞き取りも不十分として「処分は内容、手続き双方の面から不当」と主張する方針。蓮尾氏は3月末に同病院を退職し、現在は熊本市内の病院に勤務している。「地域医療のために20年以上尽力してきたのに、説明なく突然『ふさわしくない』とされるのは納得できない」と話している。

　堀江市長は「訴訟になると聞いているのでコメントは差し控える」と述べた。

　罷免を巡っては、同病院の職員有志が「名誉回復」を目的として署名活動を実施。代表者の男性（37）が6日、職員236人分を含む署名1578人分を堀江市長に手渡した。再調査や説明を求めるものではないが、「地域住民や職員から支持されていたという意思表示」として集めたものだという。（綾部庸介）