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【国際】<新型コロナ>封鎖より自主性を スウェーデンの挑戦
【ロンドン=沢田千秋】欧州で新型コロナウイルスがまん延する中、北欧のスウェーデンは欧州主要国の中で、街を封鎖しない最後の国と言われる。飲食店や小学校は通常通りで、感染者数は英国の15%。政府と国民の信頼関係を基礎とした強制力を用いない緩い対策には、他方で心配の声も上がる。都市封鎖せず感染を抑えられるのか。スウェーデンの今後に期待と不安が寄せられている。 「暗く長い冬が終わり、多くの人々が街に出ている」と話すのは、ストックホルムに住む企業コンサルタント、カリン・プライスラーさん(35)。レストランやカフェは営業し、小学生たちは通学。外出制限もない。厳しい外出制限を課す英仏などとは対照的だ。 スウェーデン政府は国民の行動制限より、その自主性を重視する。ロベーン首相は先月二十二日の演説で「私たち大人はまさに大人でなくてはならない。全員が人としての責任を果たすはずだ」と発言。国民自ら在宅勤務をし、高齢者への接触や大人数の集会を避ければ、規制がなくとも感染拡大は防げるとしている。 プライスラーさんによると、スウェーデンはノーベル賞のお膝元らしく「政府は専門家の助言を基に対策をとる伝統があり、国民は専門家に絶大な信頼を寄せる文化がある」という。 ただ、四月に入り、コロナウイルスの死者数が数十人ずつ増加し始めた。ストックホルムに暮らす主婦渡辺愛子さん(30)は「他国より緩い対策は不安だ。自分の身は自分で守るしかない。国民の自主性や信頼関係もいいが、危機的状況の中、この方式でいいのか疑問がある」と訴えた。 スウェーデン式対策は全面封鎖より経済への打撃が少ない。三日、安倍晋三首相はロベーン氏と電話協議。「両国は類似した科学的知見に基づくアプローチをとっている」と認識を共にした。日本でも七日に緊急事態宣言が発令されるが、安倍首相は都市封鎖は行わない方針を明言している。 英シェフィールド大の渡辺宏彰准教授(政治経済学)は「スウェーデンに共通項を見いだす点は、日本の自由への許容度を示す好例かもしれないが、感染症対策という緊急事態での対策は他国と同様であるべきでないか。迅速に外出禁止を進めなければ、今後、急速な感染者増を招きかねない」と懸念。英BBC放送は「どの国の対策が正しかったか、歴史が証明するだろう」としている。 PR情報
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