★ほんの1カ月前、緊急事態宣言を含む新型コロナウイルス特措法改正案の成立では、その懸念が指摘され続けていたが、都知事・小池百合子、日本医師会長・横倉義武の2人が強く要請し、今では国民の8割が緊急事態宣言を熱望する世論調査まである。だが多くの国民は政府の要請に応えることで補償が出ると考えているがそうではない。
★6日付東京新聞には「企業が社員を休業させる場合は『会社都合による休業』として労働基準法に基づき『平均賃金の6割以上の休業手当』を払う義務がある。現在、営業不振や自粛で社員らを休業させている企業にも義務は適用されている。しかし緊急事態宣言が出されると、都道府県知事は学校など公共施設に加えライブハウス、野球場、映画館、寄席、劇場など多数の人が集まる営業施設には営業停止を要請・指示できる。労働基準法を所管する厚労省によると施設・企業での休業は『企業の自己都合』とはいえなくなり『休業手当を払わなくても違法ではなくなる』(同省監督課)としている」とある。スーパーも含まれるが食品、医薬品、衛生用品、燃料など厚労省が定める生活必需品の売り場は営業を続けられる。
★結果、企業は会社を運営し続け、補償のない働く人たちは生活のため仕事に出かけ続ける。会社とてストップさせればそのまま倒れてしまいかねない。社会はテレワークだけで成立しているわけでもない。首相が都市封鎖はないとするのもここがポイントだ。経済界がこの件で積極的な発言を控えていたのはこのからくりを承知していたからか。小池は7月に都知事選が、日本医師会も6月に会長選挙があると考えると、2人の言動もいささかきな臭く聞こえる。あえて言えば「戦前日本のポピュリズム~日米戦争への道」(筒井清忠著・中公新書)に詳しいが今の緊急事態宣言を求める風潮は、戦前のマスメディアが開戦機運をあおり、世論がそれを後押しした姿に重なる。8日から始まる緊急事態宣言を国民は過剰に受け止め、都市部には混乱が広がるだろうが、その危険を政治は黙って見過ごすのか。(K)※敬称略