東方裏@ふたば
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画像ファイル名:1586079180913.jpg-(28332 B)
28332 B無題Nameとしあき20/04/05(日)18:33:00No.12863278そうだねx8 18:19頃消えます
ヤッホー!みんな元気か~?
清明を過ぎてすっかり春もたけなわだな~!
世間では外出もままならん状況みたいだから詩の話でもして春の盛りを味わおうではないか~!
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
1無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:36:10No.12863305+
    1586079370730.jpg-(27215 B)
27215 B
さて前回で「琵琶行」も終わったことだし
https://archive.vn/5Kg56
今日は短い句をサクッと読んでいこ~かな~
しばらく一方的に読んでもらうのが多かったから今回は一緒に考えながら読んでいきたいぞ~
2無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:39:30No.12863317+
    1586079570527.jpg-(28430 B)
28430 B
それじゃあ一発目だ~
音読してみような~
 花下忘帰因美景 はなのもとにかえらんことをわするるは びけいによりてなり
 樽前勧酔是春風 たるのまえにゑひをすすむるは これはるのかぜ
3無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:41:08No.12863324+
こんな詩読んだら花見したくなっちゃうじゃん…
4無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:42:44No.12863331+
    1586079764682.jpg-(27215 B)
27215 B
これは毎度おなじみ白楽天の句だ~
「花の下に帰らんことを忘れる」というのは「花の下へ帰るのを忘れる」という意味ではなくて(それだと「忘帰花下」)
「花の下にいて帰ることを忘れる」の意味だぞ~
5無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:47:01No.12863351+
    1586080021331.jpg-(28332 B)
28332 B
ここでみんなに想像してほしいんだけど
 1.「花」って何の花?
 2.「美景」ってどんな景色?
 3.この一聯のいい所はどこ?
の3点について意見が聞きたいな~
いつも言ってるけど正解不正解じゃなくて直感を信じていってみてほしいぞ~
6無題Nameとしあき 20/04/05(日)18:57:55No.12863385+
1.春の花といえば桜
2.最初は山とか遠くの眺めだと思ったけど桜が咲いたり舞い落ちる様子かもしれない
3.風景描写と作者の楽しい気持ちが上手く融合して伝わってくること
7無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:05:31No.12863414+
昔の花だったら梅かな桃もありえるかもしれない
花の下で見える美景だったら蒼天だろうか
「下」と「前」で位置が対に「忘」と「勧」で精神が対にかな?「因」と「是」は同意かな
8無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:25:02No.12863499+
    1586082302723.jpg-(28332 B)
28332 B
よしひとつずつ見ていこ~
まず1についてだけど中国には桜を見るという文化はあまりなくて春の「花」と言えば桃や李(すもも)の花を指すぞ~
次に2については作者がこの詩を作ったのは科挙に同期で及第した仲間とともに曲江という川のほとりで飲んだことを次の年に思い出して作ったといわれてるぞ~
この「思い出して」ってのがミソだな~
川の流れとか山の眺めとかそういう景色じゃなくて楽しかった思い出と全て一緒くたになって「美景」という抽象的な表現になってるんじゃないかな~
9無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:29:44No.12863515+
    1586082584669.jpg-(27215 B)
27215 B
…とここまでは教科書的な回答だけどここで違う答えがバツにならないのが詩の面白いところだな~
例えば
>1.春の花といえば桜
というのも全然悪くないし
>2.最初は山とか遠くの眺めだと思ったけど桜が咲いたり舞い落ちる様子かもしれない
>花の下で見える美景だったら蒼天だろうか
というのも実にいい答えだと思うぞ~
それは自分の知っている物からこの一聯の言わんとしていることにちゃんと近づいていけてるからなんだ~
作者は「花」「美景」としか言っていないしそれは読者の自由な創造に任せているということにもなるんだな~
10無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:34:37No.12863542+
    1586082877260.jpg-(28332 B)
28332 B
というわけで私が思うこの一聯の特に妙であるところは
「花」と「美景」という抽象的な表現によって読み手の自由度を広げているところだな~
言うのは簡単だけど実際やるのは難しいぞ~
作るとなるととにかく目の前の景色を描写したくなるもんだからな~
それに何の考えもなく「花ときれいな景色がよかった」じゃ何も伝わらないしな~
11無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:41:04No.12863573+
    1586083264097.jpg-(27215 B)
27215 B
もちろんこの聯の妙処はほかにもたくさんあるぞ~
>3.風景描写と作者の楽しい気持ちが上手く融合して伝わってくること
これも然りだ~
この一聯は景の描写が多くて情の描写は「忘帰」「酔」といった間接的な表現にとどまるぞ~
まさに「景中情あり」といった感じで巧みに表現してるといっていいな~
>「下」と「前」で位置が対に「忘」と「勧」で精神が対にかな?「因」と「是」は同意かな
御指摘の通り対句だな~
「忘」「勧」は精神というより行為・動詞の対で専門的に言うと「虚字対」というもんだな~
対句であるのに固さがない柔らかい句づくりになっているな~
12無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:48:28No.12863614+
    1586083708294.jpg-(28430 B)
28430 B
よし長ったっらしい解説はこれくらいにして次に行こ~
 背燭共憐深夜月 ともしびをそむけてはともにあわれむ しんやのつき
 踏花同惜少年春 はなをふんではおなじくおしむ しょうねんのはる
さあこれも音読だ~!
13無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:52:04No.12863637+
日本だと何をおいても桜だけど当時の中華だとどうだったんだろうな…?
桃園の誓いとかあるし桃の花が尊ばれてそうな気はする
14無題Nameとしあき 20/04/05(日)19:52:34No.12863640+
あっリロード忘れてたお恥ずかしい
15無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:11:53No.12863727+
    1586085113358.jpg-(28332 B)
28332 B
これも白楽天の一聯だな~
「憐」は「あわれむ」とは読むけれども現代語とはニュアンスが違って「めでる・賞する」の意味だぞ~
所謂「あはれ」の感覚に近いものがあるな~
じゃ~これも考えてもらおうか~
 1.「共」「同」の相手は誰? 
 2.季節が「春」である必要性は?
 3.この一聯をもって作者は何が言いたい?
16無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:15:42No.12863754+
今の日本だと春は別れと出会いの季節だけど白楽天の時代の中国はどんな感じだったのかな
17無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:30:32No.12863853+
1.遠方の友
2.作者の若い頃すなわち「春の時代」に思いを馳せる為
3.あなたもまた、過ぎ行くこの春を感じているだろうか
18無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:32:59No.12863871+
こういう楽しい詩だとやっぱり莫逆の友かなぁと所見は漠然と思ったけど
少年ということは息子か甥っ子か何かの祝い事だろうか
例えば成人とか任官とか結婚とか
そう思うとこれまでの句も健やかに育ったこれまでと輝く未来を寿いでいるような
19無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:43:03No.12863924+
    1586086983380.jpg-(27215 B)
27215 B
さて私の意見も言っとくか~
1.遠方の友
出してくれた人もいるように私も遠くにいる友人だと思うな~
根拠は前後の句でまず一つ前後の句で時間の隔たりがあること
これが距離の隔たりを感じさせるというか手紙に書いているような効果を生んでいると思うぞ~
そしてもう一つは「同じく惜しむ少年の春」という所だな~
共に若き日を惜しむ…つまり相手と同年代であることを感じさせるぞ~
20無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:47:14No.12863955+
    1586087234457.jpg-(28332 B)
28332 B
「同惜少年春」は
「誰もが少年だった」ということを踏まえると
>少年ということは息子か甥っ子か何かの祝い事だろうか
>例えば成人とか任官とか結婚とか
>そう思うとこれまでの句も健やかに育ったこれまでと輝く未来を寿いでいるような
こういう解釈もできるな~目からうろこだったぞ~
そうやって自分で解釈できれば若者に贈る言葉として生き生きと使うことができるな~
21無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:47:24No.12863957+
月を眺めるのは遠くにいる人に思いを馳せる意味があると以前のスレで教わったな
22無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:50:34No.12863970+
    1586087434715.jpg-(28430 B)
28430 B
2.春と少年期が結び付いている為
これは簡単だったな~所謂「青春」ってやつだ~
何時かも言ったかもしれないけど春だけでなく「朱夏」「白秋」「玄冬」も人生の各時期と結び付けられてるな~
>月を眺めるのは遠くにいる人に思いを馳せる意味があると以前のスレで教わったな
おお~覚えてくれて嬉しいぞ~
そういう連想の材料は読むうえで多ければ多いほど読み方も深まるな~
23無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:56:08No.12864004+
    1586087768133.jpg-(27215 B)
27215 B
3.作者の人生はあなたと過ごしてこそ最高の時間であるということ
これは個人的な感想だけどな~
私が特に気になったのはやっぱり「共」「同」という所なんだ~
だって月を見るのも花を踏んで歩くのも独りだってできるじゃないか~
そこをあえてこういう言葉をつけるってのは相手がいてこそだったんじゃないかと思うんだな~
それが友か家族か…そこはまあ置いとくとしても「あなたがいないと何をしてても楽しくない」という思いが裏にあるような気がしてな~
24無題Nameとしあき 20/04/05(日)20:59:09No.12864026+
    1586087949223.jpg-(28332 B)
28332 B
ちなみにこの一聯は月や花を賞して若き日の過ぎるのを嘆くものとして「俊成」「忠度」「経政」なんかの謡曲にも引用されてるぞ~
無常観とことさらに結びつくあたりは中世の日本的な感性と言えるかもしれないな~
25無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:07:44No.12864067+
    1586088464755.jpg-(28430 B)
28430 B
さてもう一つくらい行くか~
これは早春の聯だけどとっておきのヤツだぞ~
 気霽風梳新柳髪 きはれてはかぜしんりゅうのかみをくしけずる
 氷消波洗旧苔鬚 こおりきえてはなみきゅうたいのひげをあらう
26無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:08:16No.12864068そうだねx3
それはあんたが詠ったもので嫦娥!
27無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:09:53No.12864076そうだねx1
    1586088593225.jpg-(28273 B)
28273 B
う~んいいな~実はこの聯は和人の作でかの有名な…
えっと…誰だったっけ~わすれた~
ダメだな~詩人の名前も思い出せんようじゃ詩人キョンシーとしてもヤキが回ったな~
28無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:12:12No.12864085+
聞き覚えあると思ったら茨の冒頭で華扇が詠んでる詩か?
29無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:16:47No.12864117+
    1586089007292.jpg-(28332 B)
28332 B
まあそれはともかくの聯は上の句を作者が羅城門の下で詠んだときに楼上の鬼が下の句を継いだという伝説があるぞ~
さてそれを踏まえて考えてみよ~
 1.上の句と下の句が別人の作であるならその味わいの違いは何か
 2.逆に共通しているものは何か
 3.下の句を鬼が作ったと信憑性を感じさせるものがあるとすれば何か
さ~どうだ~?
30無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:38:47No.12864221+
1.上の句が若々しさを発しているのに対して下の句は落ち着いた、年月の重なりを感じさせる
2.自然の景観を通じて春を迎えた清々しさを伝えている点
3.上の句が新柳について言及しているのに対して旧苔を取り上げているのが人と人ならざる者の時間の流れに対する認識の違いが出ていると思う
31無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:43:41No.12864245+
波ってのが引っかかる 他の対と同じように風に対して波なんだろうけど通して読むと長い年月で氷河が溶けて削れたU字谷の苔でもこそげ落ちたのかとやたらダイナミックな方に想像しちゃう 当時の都人は洛中から出ず波から直結的に海を連想しなかったんだろうか
32無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:45:50No.12864253+
1. 明るく軽やかな上の句に対して下の句は氷の冷たさや波の荒々しさを感じる…気がする
2.「梳る」と「洗う」どちらも何かを綺麗な状態に整える行為
新しい季節に対する願いや喜びなのかな
3.1で挙げた違いに人と鬼の心の内の差が表れている?
33無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:49:52No.12864275+
1.上の句はある程度の高さの情景を詠んでいるのに対し下の句は地面の情景を詠んでいる
穿った見方をすれば上の句は地面に立って見上げる視点、下の句は高所から見下す視点になっている
2.春の情景を人の顔を清める動作に喩えていること
3.露が苔を伝う時間的スケールの大きい現象に着目していることが人よりずっと長命なものの作であることを示唆している
34無題Nameとしあき 20/04/05(日)21:57:09No.12864294そうだねx1
>波ってのが引っかかる
もしかしたら一春の現象ではなく春が訪れるごとに苔が洗われるのを波に喩えているのかも
35無題Nameとしあき 20/04/05(日)22:08:50No.12864359+
    1586092130963.jpg-(28332 B)
28332 B
色々出てきたな~面白いぞ~
とりあえず私の考えを言っていこ~
1.視点の差異
>1.上の句はある程度の高さの情景を詠んでいるのに対し下の句は地面の情景を詠んでいる
>穿った見方をすれば上の句は地面に立って見上げる視点、下の句は高所から見下す視点になっている
ほとんどこの通りだな~言いたいことをピタリと言い当てられた気分だ~
36無題Nameとしあき 20/04/05(日)22:15:38No.12864397+
    1586092538486.jpg-(27215 B)
27215 B
2.視線の方向の一致
1と矛盾してるみたいだけど私はこう思うな~
この一聯が羅城門の上下で詠まれたことを考えてみてくれ~
都の南端に位置する羅城門で景色を見るにあたって都の街の景色や門のことについて全く詠われていないってのは二人とも門の外側…つまり南側を向いていたってことになるんじゃないかな~と思うんだ~
そして下から上へ…上から下へ…その視線の交わるところに何というか初めて出会った二人に奇妙な友情の様なものが生まれたんじゃないかと想像するぞ~
37無題Nameとしあき 20/04/05(日)22:23:02No.12864411+
    1586092982138.jpg-(28332 B)
28332 B
3.「旧苔鬚」の描写
>上の句が新柳について言及しているのに対して旧苔を取り上げているのが人と人ならざる者の時間の流れに対する認識の違いが出ていると思う
この考えに近いかな~
「髪」に対して「鬚」というのは日本での漢文が男の文学であるのを差し引いてもワイルドな表現だしまた「旧苔」というのも渋い表現だ~
所謂「詫び・寂び」の美学から言えば趣あるものであるけどこの時代の人からすればかなり面白くて斬新な表現であったと思うぞ~
38無題Nameとしあき 20/04/05(日)22:28:20No.12864437+
    1586093300711.jpg-(28430 B)
28430 B
>波ってのが引っかかる
いい疑問だな~その引っかかりにはちゃんと理由があると思うぞ~
まず漢詩の表現において「波」が海のなみを表すことは極めて少ないんだ~
なぜなら漢詩文の中心であったのは内陸部の都会が多かったからなんだな~
だから漢詩において「波」は基本的に黄河・長江といった大きな川の波か池に広がる「さざ波」のことなんだな~
それを考えると氷が張っていた描写からここでは「池のさざ波」とわかるって訳だ~
39無題Nameとしあき 20/04/05(日)23:02:44No.12864571+
    1586095364562.jpg-(28423 B)
28423 B
さて今日はこれくらいにしておこ~
短い聯や詩について3つくらい疑問を立てて考えるってやり方はやってると自然に読み方が身についてくるからおすすめだぞ~
今回みたいに複数人でやると色々発見があってなおいいな~
読書メモなんかを作るときの参考にしてくれ~
それじゃな~友よ~
さらば~
40無題Nameとしあき 20/04/05(日)23:02:59No.12864574そうだねx11
    1586095379903.png-(20228 B)
20228 B
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
41無題Nameとしあき 20/04/05(日)23:21:30No.12864648+
面白かった
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