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【社会】

薬物との決別 元刑事が支援 現役時代から「再犯させぬ」貫く NPO設立

「大丈夫だよ」。宝物というペンとペンケースを傍らに、携帯電話で親身に相談に応じる蜂谷さん=東京都内で

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 警視庁で長年にわたり薬物事件を捜査してきた元刑事の蜂谷嘉治さん(62)=埼玉県白岡市=が今春、薬物からの脱却を目指すNPO法人「NEXT STAGE」(ネクスト・ステージ=事務所・東京都港区)を立ち上げた。現役時代、薬物事件の当事者らが悩みを語り合う会を、10年間で120回開いてきた蜂谷さん。刑事魂を胸に新たな一歩を踏み出す。 (木原育子)

 三月上旬のある朝、蜂谷さんの携帯電話が鳴った。二〇一六年に覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕され、更生を目指す女性(25)だ。

 -「怖い夢みちゃった」

 蜂谷さん「どんな夢?」

 -「薬やっちゃった夢」

 蜂谷さん「薬をやめる人はみんなそういう夢を見る。もう大丈夫だよ」

 -「蜂谷さんを裏切らなくて良かった…」

 蜂谷さんの携帯電話は当事者らからの相談が絶えない。「心の中の風船が膨らんで破裂する前に、空気を抜いてやらないとね」

 一九八〇年に警視庁に入った。父親は茨城県警の暴力団担当の刑事だった。幼いころから、家に暴力団関係者が訪ねてきて、父親の前で涙を流すこわもての男を何人も見てきた。

 三十代で念願の刑事になった時、父親にこう言われた。「捕まえるだけが刑事の仕事じゃない。二度と犯罪をしないと思える関わり方をしろ」

 二〇〇九年八月から署の講堂などで薬物の当事者らが語り合う会「NO(ノー) DRUGS(ドラッグス)」を開いた。周囲から「そこまでやる必要があるのか」との声もあったが信念を貫いた。薬物事件を巡っては、再犯率の高さが課題とされるが、昨年九月の退職まで、蜂谷さんが関わった薬物事件で摘発された約百人超のうち再犯者は三人だけだった。

 三月から本格的な活動を始めたNPO法人では、芸能プロダクションや音楽事務所と協力して薬物の「検査キット」を普及させる環境づくりに乗り出す。「芸能人の薬物事件は、若者に計り知れない影響を与える」と思いを語る。

 退職祝いに会のメンバーにもらったペンとペンケースをいつも持ち歩く。ケースには、こんな言葉が添えられている。「Efforts Never Give Up」。蜂谷さんが、当事者らに伝え続けてきた言葉だ。

 「『あきらめない努力』が一番大事だよ」

 

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