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2010/07/30 16:25
MTadmin

148回目の今日お届けしたのは、「サカナクション/セントレイ」でした。

「僕が、メンバーの山口一郎と、岩寺基晴の二人に初めて出会ったのは、2000年のことでした。当時、僕は札幌担当のビクターレコードのプロモーターで、札幌でイベントを企画した時に、二人がそれぞれ活動していたバンドに声を掛け、オープニング・アクトとして出演してもらったんです」。
現在、ビクターでサカナクションを担当する岡さんは、初めての出会いについてこう振り返ります。

1980年9月、北海道小樽市に生まれた山口一郎は、ヨーロッパに長年住んでいた父親の影響から、小さい頃からドイツのエレクトロニック・ミュージック・バンド「クラフトワーク」や、YMOなど、電子音楽をベースにしたポップミュージックを聴いて育っていきます。札幌市内の高校に進学した山口は、同級生の岩寺達と、UKロックのバンドを結成しますが、やがて解散。山口は、次第に打ち込みを重視した、テクノやクラブミュージックに傾倒するようになり、高校卒業後も、働きながら、独りで音楽活動を続けていきます。

2005年、山口は、テクノやクラブミュージックに、ロックやJ-POPのエッセンスを加えることで、"何か違う音楽が生まれるのでは"と考えはじめ、それを実践するために、別のバンドで音楽活動を続けていた岩寺を誘って、「サカナクション」を結成します。
「2000年に、山口と岩寺に初めて出会った後も、ちょくちょく彼らのライブは観ていたんです。それで、二人がバンドを結成したという話を聞いて、"一体、どんな音楽を作るのか"と興味を持っていたところ、二人からデモテープを貰ったんです。そのデモテープに収録されていた「三日月サンセット」と「白波ウォーター」の2曲を聞いた時、どちらも荒削りだったけど、テクノやハウス音楽の要素が詰まった独自の音楽性に、可能性を感じたんです。山口は、独りで活動していた時に、札幌のクラブで培った、サウンドの変調や、心地よいリズム感を、ロックミュージックに上手く活かしていたんですね」。サカナクションの曲を初めて聞いた感想を、岡さんはこう語ってくれました。

ロックバンドの世界に再び足を踏み入れた山口と岩寺の二人は、サポートメンバーとしてドラマ―の江島啓一、キーボードの岡崎英美、ベースの草刈愛美の3人を加え、地元北海道で、積極的にライブを積み重ねていきます。
2006年8月、サカナクションは、北海道最大の野外ロックフェスティバル「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」の公募選出枠に応募し、868組の中から、見事、出演枠を獲得します。これをキッカケに、サカナクションは、サポートメンバーを正式メンバーとして加え、5人組バンドとして活動を本格的にスタートします。

「RISING SUN ROCK FESTIVAL」の出演で注目を集めたサカナクションは、CD未発売ながら「三日月サンセット」が、地元北海道のカレッジチャートにランクイン、同時に「白波トップウォーター」もラジオから頻繁にオンエアされるようになって、ファンの間からはサカナクションのCD発売を求める声が、レコードショップに殺到します。
翌2007年、サカナクションは、こうしたファンの要望に応える形で、ビクターと正式に契約を結び、5月に待望の初CD『GO TO THE FUTURE』をリリースするのでした。

2007年5月にリリースされた、サカナクションのポップで、キャッチーな1stアルバム『GO TO THE FUTURE』は、地元北海道はもちろん、全国の音楽ファンからも注目され始め、彼らは8月に「SUMMER SONIC 」に、12月に「COUNTDOWN JAPAN」と、大型ロックイベントにも出演していきます。
「彼らは、クラブシーンにいるようなアンダーグランンドなリスナーと、J-POPのリスナー、この両方をターゲットにした音楽を作ることを目標にしました。音の質やアート性に拘りを持っているアンダーグラウンドのリスナーと、音には無関心だけど、歌には執着するJ-POPのリスナー。その中間の人達が気に入ってもらえるような音楽を作れば、自分達が目指した音楽ができるのではと考えたんです。1stアルバムに収められた"三日月サンセット""白波トップウォーター"を始めとした8曲は、どれも、彼らの過去の作品の中から厳選した曲ばかりで、どの曲もテクノ、クラブミュージックを基調としたサウンドに、日本語独自の言葉の響きや言い回しを上手くのせて、ロックファンも、クラブ系のファンも惹きつける魅力を放っていました」。岡さんは、サカナクションの1stアルバムについて、こう語ります。

子供の頃、読書家で俳句が好きだった父親の影響で、自らも寺山修司の作品や種田山頭火の俳句を読んでいた山口が書く、文学性の高い歌詞。そして、繊細なギターと、うねるようなベースのグルーヴ感。さらには抑揚感際立つドラムと、キラキラとしたシンセの音色。これら全てが融合したサカナクションのサウンドは、ジャンルを問わず、多くの音楽ファンに新鮮な感覚を与え、虜にしていきます。

そして、2008年1月、前作から8ヵ月というスピードで、サカナクションは、2ndアルバム『NIGHT FISHING』を発売します。

「彼らにとって1stアルバムは、名刺代わりのようなアルバムで、実は、音楽シーンに対して、どうアプローチしていけばいいのかが、全く分かっていなかったんです。でも、1stアルバムをリリースして時間が経っていく内に、"自分達が演ろうとしている音楽は間違いじゃなく、基本ターゲットは変えずに、サウンド面で進化させていくことが大切だ"という事に気がついたんです。その結果から生まれたのが、この2ndアルバムです」。

ロックファンのみならず、クラブ好きの音楽ファンからも支持を集めたサカナクションは、その後、全国8ヵ所を回る初めての全国ツアーを行った後、8月には2年ぶりの「RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO」を始め、8本もの野外ロックフェスティバルに出演します。
「野外ライブ出演が終わって、翌2009年に発売する予定のアルバム制作に入った時、「RISING SUN ROCK FETIVAL in EZO」で、未発表のまま演奏し、お客さん達の反応が良かったこの曲を、シングル化する話が持ち上がったんです。
それまで、彼らの頭の中には、シングルという概念はなく、幾つかの曲群が集まったアルバムを、一つの作品として捉えていました。しかし、僕は、アルバムを発売するにあたって、サカナクションをもっと盛り上げていくための、大きなうねりを作っていきたいと思っていたので、初めてシングル化することをメンバーに提案したんです。
次のアルバムに収める予定の曲の中でも、この曲はポップ感が際立っていて、メンバーからも、シングル化に対しての異論は出ませんでした」。

「ギターサウンドを全面に打ち出したこの曲は、アッパーなベースのグルーヴ感と、その二つを上手く融合させるためにアレンジ面にも工夫を凝らしていて、それまでのサカナクションとは違う、もう一つの新しいサカナクションの音楽が生まれたような感じがしたんです」。
こうして、2008年12月、サカナクションの1stシングル「セントレイ」は発売されます。
2008年12月に発売された、サカナクションの1stシングル「セントレイ」。
「"セントレイ"は、ギターサウンドを全面に出したことで、よりキャッチーな曲となり、多くの新しいファンを掴むことができました。発売直後に出演したライブイベント「COUNTDOWN JAPAN」でこの曲を歌った時には、会場に詰めかけた約5,000人のお客さんが、笑顔で踊りまくる、素敵な光景を目にすることができたんです。サカナクションが演ろうとしている、音楽の裾を広げるキッカケを作った曲ですね」。
最後に、ビクターの岡さんは、こう話してくれました。

バンドのチャレンジが生んだ楽曲が、J-POPの可能性を、また一つ拡げた瞬間でした。

今日OAした曲目
M1.ショールーム・ダミー/クラフトワーク
M2.三日月サンセット/サカナクション
M3.ナイト・フィッシングイズグッド/サカナクション
M4.セントレイ/サカナクション