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20~40代の患者が急増している

症状がなければ働く。しかも軽装備では医療従事者は不安ではないですか。

斎藤氏:はっきり言って、怖い。怖くなってきている。

 というのも、今は感染症にかかって入院してくる患者さんが20~40代ばかりだからです。これまでは、65歳以上の高齢者や心臓や肺に疾患を持っている人が中心でしたが、今はそうではなくなっています。

20年3月25日付ビジネス・インサイダーの記事に掲載された、ニューヨーク市における年齢別新型コロナ感染者数や死亡者数など。表の数字は30日に更新されている。感染者が最も多いのは実は18~44歳の年齢層で、死者も41人に上る

 なぜかは分かりません。何も治療歴のない健康そのものの屈強な男たちがいきなり、急性呼吸不全(ARDS)になって自発的な呼吸ができなくなり、重篤化、死に至るというようなケースを毎日のように目の当たりにしています。

 ICUでは1日に何度も「ラピッド・レスポンス(Rapid Response)」と呼ばれるコールが鳴り響いています。ラピッド・レスポンスというのは、患者が心肺停止など容体急変の時に用いられる「コードブルー」の前の段階で、血圧の急低下や意識の混濁など、心肺停止前の変化を看護師たちが察知して緊急信号を発します。そうなったら、担当の医師チームが集まって処置をします。

退院が近いと思われた患者もいきなり重篤化

斎藤氏:このラピッド・レスポンスは毎日ありますが、最近は回数が急増しています。特に先週末はひどかった。大丈夫そうだな、退院は近いかな、と思うような患者さんでも、いきなり重篤化するのがCOVID-19の恐ろしいところだと感じています。

 もちろん、こうした患者さんに対して何もしていなかったわけではありません。呼吸状態を見て、血中酸素濃度の数値がある基準を下回った場合は、治験中の薬を投与することもします。効く場合もあるのですが、重篤化している場合は全く効きません。

 若い人を助けてあげたいけど、全然ダメ。かなり急激に悪化して、戻ってこない。そんな場面が続くと、無力感にさいなまれます。

 だからでしょうか。医療従事者たちは皆、逆にハイになっているような気がします。しょうもないことを言って、互いを笑わせたりして……。