ホイールの真実6(解明編2)

ホイールの真実5解明編1で書いた実験が終わりました。

実験内容を忘れてしまった方は1つ前のコラムを参照してみて下さい。

バイシクルクラブ2020年5月号で公開されています。
コラム下書き段階のものがSACRAと仲の良いところに見つかって待ったがかかり拡散しない方向で調整することになりました。SNS告知もHP告知もなしです。今回のコラムちょっと刺激が強すぎたようです。自転車業界狭いから知り合いの知り合いは知り合いということですね。SACRAが困ってる時にこんな手加減されませんでしたけどね。まったく調子の良いことです。そしてSACRAは優しすぎますね。こちらのコラムはここにたどり着いた人だけが見れる裏コラムです。下書きから読めた方はラッキーでしたね。

バイシクルクラブさんの記事ではページ数が足りなかった部分の補足をしたいと思います。バイシクルクラブさんの記事で
静的な状態(停止状態)でリムにそれぞれ
・縦荷重
・横荷重
・トルク
をかけてみたところ、全てのひずみゲージで同じ値が検出されました。つまり静的な状態でスポークは引張で使われている事が分かりました。

次に動的な状態(走行状態)でスポークのひずみデータを測定しました。以下の走行形態について計測を行いました。
・駆動時
・コーナリング時
・空走時
こちらも同様に全ての走行状態、すべての位置でひずみデータは同じ値が検出されました。
つまり動的でも静的でもスポークは引張で使われているのです。ホイールはスポークテンションを出し入れすることで力の釣り合いを取っている機構ということです。(ちなみに力学の先生に言わせるとスポークが引張で使われているのは常識とのこと。力学の基本が分かっていない人が引っかかる問題。まともな大手メーカーは当然たどり着いている。)

ということが証明されましたのでスポークの性能は引張方向の材料物性(比剛性・比強度)に依存すると言えます。
以下に材料別の比剛性を表にしました。

チタンスポークが一番剛性が出にくく、カーボンスポークが剛性が出やすいことが分かります。チタンスポークが流行らない理由はこれでしょうね。組み立てたことある方は軽いけど剛性が思ったほどでない経験があるのではないでしょうか。さらに今回ピアノ線(鉄)を挿入しました。これは鉄スポークがアルミスポークよりも剛性が出ることを示しています。マビックは鉄スポークを昔から使っています。ですのでマビックのホイールは他社よりもほんの少し硬い傾向があります。ただし鉄スポークは表面処理が剥がれると錆びる特徴があり一長一短です。昔のマビックホイールがお手元にありましたらみてみましょう。スポーク錆びてませんか?

次に強度の話をします。

チタンスポークが最弱でカーボンスポークが最強となります。チタンスポークが思ったほど強度でないですね。ステンレススポークもまぁまぁ善戦していますね。アルミスポークはステンレスと同等程度ですね。ところで強度に詳しい方はステンレススポークとピアノ線(鉄)の引張強度が妙に高い値になっていることに気が付きませんでしたか?これは製造工程に秘密があって、ピアノ線は引抜き加工という加工方法なのですがその工程を得ると鉄系材料は引張強度が大幅に上がるからです。表の値は最も高い値を記載してあります。(他の金属もこういう効果は多少あるはずですが試してみないとわからないです。チタンスポークのポテンシャルは高いかもしれないです。)つまり鉄系材料はスポーク限定で強度・剛性が他の金属よりでやすい条件が揃っているのです。おまけに密度が高いため細くても強度が出せエアロにも良く、価格も安いためスポーク材料としてはうってつけの材料となります。サピムCX-RAYは100年先でも売れるスポークかもしれませんね。

というわけでスポーク材料の特徴をおおざっぱに表にまとめると以下のようになります。

次は結線の話です。

注目を浴びるトピックですが、スポークは引張で使われていますのでスポークを結んでもスポークの力学に関われないので当然効果がありません。あったとしても極めて微小となります。

また結線だけでなくスポークを接触交差させること自体に意味がありませんので、新しく手組みホイールを作られる方はわざと接触交差させない組み方を試して見て下さい。ちゃんと剛性でますよ。完組ホイール創生時に多くのメーカーが接触交差と決別したのはこういうことです。SACRAが丸ハブで組み立てる時に接触交差させるのは伝統的外観を保持するためです。SACRAに手組みオーダーして頂ければ接触交差なしでも作成させて頂きます。

 

次は横剛性の話です。

横剛性はスポークが短いほどスポーク伸び量が減りますので剛性が上がります。つまりスポークが短い順に依存します。具体的には以下のようになります。

ラジアル>2クロス>3クロス>4クロス>7700組

この順で横剛性が上がります。ベテランの人は昔7700が横剛性が低いと話題になったのを覚えているのではないでしょうか?7700組はタンジェント組&左右スポーククロス組&リムサイドに引掛け式でスポークが長くなる要素が3つもありました。当然横剛性は下がります。剛性測定しなくても理論的にすぐに分かりますね。

 

おもしろい話が入ってきました。ライトウェイトが結線の効果についてインタビューに答えている記事によって結線の効果があると回答したり無いと回答していることが分かりました。
ツイッターより引用333さん@MloeZ8pjEiVYJeF

2015年4月号のサイクルスポーツ紙でのインタビューにおいてライトウェイトの人が結線しても剛性にはほどんど影響しませんと回答しています。

 

次にシクロワイヤードにてライトウェイトの同じ人が結線には剛性の向上の目的があると回答しています。なぜか両方とも自信満々の顔です。

さらに次にIT技術者ブログへのライトウェイトに近い人からの回答として結線は剛性向上のためとあります。

皆さんどう思われますか?後者の2つはSACRAが結線は効果がないと解説編で発表したあとにSACRAへの回答として掲載されたと思われる記事です。つまりライトウェイトの人は自社の都合によりエンジニアリングの結果を変えているんです。ドイツメーカーにもかかわらずエンジニアリングにこだわる会社ではないんです!こんなことが許されて良いんですか?これが皆さんの目指したい自転車業界なんですか?一環してエンジニアリングにこだわっていたのはどこだ!SACRAじゃないか!

今回のコラムをもってライトウェイトとのむラボに勝利宣言を出させて頂きます!

また

「ライトウェイトに勝ったメーカーSACRA」

として活動させて頂きます。また1つ箔が付きました。それと

「ホイール解明者SACRA」

の称号も頂きます。箔が2つですね。SACRAもオンリーワンメーカーになってきましたね。

エンジニアリングの良いところは後からいくらでも追試験ができて、ごまかしが効かないことですね。嘘をつけば必ずばれます。皆さん工学の世界で嘘をついてばれないとなめていませんか?機械学会論文集をみなさん読んだことありますか?日本の機械技術の最高峰です。自転車系メディアを読んでいると自分が技術に詳しくなったと思ってしまいますよね。でも機会学会論文集を読んでみてどこまで理解できるかというとほとんど理解できないと思います。それほどに差があるんです。技術に詳しい、自転車に詳しいと思っていたのがいかに幼稚であったのか分かって恥ずかしくなりますよ。そしてエンジニアリングで嘘をついて逃げ切ることは不可能だとすぐに理解できますよ。機械業界で不正が少ないのは皆ばれるのを知っているからというのが理由の1つでしょう。SACRAのマーケティング的に結線効果あります、アルミスポーク効果あります、のむらぼさん最高です!って言ったほうが圧倒的に楽だったんですよ。でもそんなことできないんですよ。すぐにばれちゃうし、エンジニアリングじゃないし、そこに自転車部品メーカーとしての理想がないから、未来が見えないから。

※一部行き過ぎた書き込みがありましたので削除いたしました。謹んでお詫び申し上げます。

今回厳しい内容を書いてるように思われるかもしれませんが、これでもまだ氷山の一角なんですよね。。。自転車業界腐敗していますね。結線はもはや腐敗と不正の象徴と言っても良いでしょう。今後まだこういう状況が続くようなら腐敗しているメーカー・メディアをリスト化してコラムにアップしようと考えています。逆にまじめにやっているメーカーをおすすめとしてリスト化していこうと思います。まじめにやったほうが得するようにしましょう。

皆さん、我々サイクリストにとって理想の自転車業界というものが何か考えて行動しましょう。

 

今後の測定計画について
今後ホイール剛性も測定しないといけないですし、他にもお見せしたいデータはたくさんありますがコラムが本業でないので予算と手が空いた時に行いたいと思います。また数ヶ月か1年以上間が空くかもしれません。あと今回の実験についての補足ですがハブからスポーク穴までまっすぐスポークが伸びていないとテンションでスポークに曲げがかかってしまうケースがありました。意外とスポークはまっすぐ抜けていないですね。アルミスポークが計測に向いてると以前書きましたが向いてないかもしれないです。まっすぐスポークが抜けてるホイールじゃないときれいなデータにならないです。

 

終わりに

自転車の歴史上いろんな人がはホイールの評価を繰り返し行ってきましたが、ホイールの全体像がはっきりと見えてきたことはありませんでした。そこで全体を見るのではなく、もっとミクロの視点に立ってホイールを観察することにしました。具体的にはスポーク1本の動きを観察することです。よくよく考えてみると我々はホイールのことだけでなく、たった1本のスポークがどのように力学的に使われているのかさえはっきりと明言することが今までできませんでした。そこでスポーク1本の動きを正しく理解することが重要でそしてスポークの動きを把握することでホイール全体の力学を明確にできると考えたのが今回の実験です。スポークは非常に細く、あらゆるセンサーが取り付かないとうっかり考えがちですが、実はスポークに取り付くサイズの極細のひずみゲージというのは世の中に存在していて今回はそれを用いて実験を行いホイール理論の全体像を明らかにしました。自転車の歴史上はじめてのことです。自転車業界的には超すごいことです。ですが先に述べたように力学の先生の間ではスポークが引張で使われていることは常識で力学の基本を理解していない人がひっかかる古典問題なのです。つまりホイールを何万本も組み立ててホイールを極めようと、ホイール理論を解明しようとさほど大した事ではないのです。機械業界としての評価は低いのです。さきほど称号もらいますとか書きましたけどあんなのゴミですからね。すでにSACRAを知っている人には称号なんか無意味です。あくまでSACRAを知らない人向けに紹介用として使うくらいです。SACRA的には今回の功績をもってSACRAが一番ですごいと言った方が楽なんですけど自社に対しても厳しくというわけです。いつまでも古典問題の話にばかりとらわれていないでそろそろ具体的に課題を解決して前に進んでいきましょう。