全戸に二枚ずつ布製マスクを配布する-。マスク不足が続く中では歓迎する声はある。感染症への不安を少しでも解消する対策は必要だが、国民が実感できるほどの効果があるだろうか。
布製マスクを広く国民に届けることでマスク不足と不安の解消につなげたいと政府は考えている。
使い捨てマスク不足から、布製マスクを手作りする人も増えている。布製でも感染拡大防止には一定の効果がある。
だが、今回のマスク配布には、いくつもの疑問がわく。
マスクは一世帯に二枚を郵送する。一人世帯なら余るが多人数世帯では足りない。政府は追加配布も表明せざるを得なかった。
郵送でポストごとに配布されるため介護施設やグループホームなど多人数が暮らす施設でも二枚の配布にとどまったり、ホームレスなど住所のない人へは届かないのではないか。人によって支援に差がでるとしたら不安解消どころか逆効果だろう。
さらに、三日の国会で野党が「八百万戸余りの空き家にも配布されるのではないか」と指摘し、政府はその懸念を認めた。そうなれば有効に活用されないし、空き家からの盗難なども懸念される。
政府が三月十日に公表した緊急対応策第二弾には、布製マスク二千万枚の配布が盛り込まれたが、配布対象は介護施設や保育所などに限っている。経済対策だとしても広く国民への配布は唐突感が否めない。後から対策に穴が見つかるようでは場当たり的な対応と言わざるを得ない。
確かに、政府は医療機関へのマスクの優先配布や生活支援策なども打ち出している。だが、これだけの財源を使うのなら医療機関や介護施設へのマスク配布をさらに増やしたり、さまざまな経済活動の自粛で生活が困窮する人への支援を厚くするといった対策の方が必要な人に必要な支援が直接、届くのではないか。
ドラッグストアに通ってもなかなかマスクが手に入らない事態こそが不安や不満を招いている。台湾では増産を政府主導で進め生産能力を一月時点の七倍に高めたという。日本でも生産企業の支援にこの財源を回してはどうか。
必要な支援策を探り優先順位と財源をつけ、丁寧に説明して国民の理解を得ながら進める。政府はその姿勢を忘れるべきではない。
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