続・ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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 どうも、作者の松露饅頭です。果たして待ってた人がいたのかどうか、それは判りませんがジルクニフ日記、再開させて頂きます。
 待ってたよーと言う方、その貴重な時間をもっと有(自主規制)のか、有名な某軍師の台詞「ほかにすることはないのですか」を贈らせて頂きたいと思います。
 今回、気の毒にも興味を惹いて開いてしまった方、気の迷いというのは誰にでもあります。悪いことは言わないのでこんなもの読ん(以下、検閲削除)


・・・・・・ごゆるりと御覧下さいませ。


その01

○月○日 001

 私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。元・バハルス帝国皇帝にして鮮血帝と言われた男だ。

 皆も知っての通り、栄光あるバハルス帝国は、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の属国として、その傘下に置かれることとなってしまった。あの圧倒的な軍事力と、その首魁たるアインズ・ウール・ゴウン魔導王の鬼謀・神謀とも言える恐るべき知略の前に、その足下に傅くことを余儀なくされたのだ。

 おかげで私個人の肩書きにも、「元・バハルス帝国皇帝」と、「元」を付けなければいけない所が口惜しさを倍増させる。

 

 しかし、現実は現実として受け入れなければならないだろう。そうでなければ何も始まらないではないか。実際、俺も悩んだが、ロクシーに「何ウジウジしてんだハゲ!」と、鳩尾に一発蹴りを入れられて気が付いた。ハゲてないけど。

 全ては人類種存続の為、今はやつらに歯が立たなくても、未来に望みを繋ぐ為に属国という苦渋の道を選んだのだ。将来、アンデッド共を打ち倒す英雄の登場に望みを託し、あわよくば魔導国内部に火種を育てる手段を選んだのだ。ハゲは関係ない。

 

 そのような思惑は思惑として、現状では大きな混乱も無く、我がバハルス帝国は魔導国の傘下に組み込まれて行った。

 魔導国側の事情は不明だが、とりあえず仮の措置として旧・バハルス帝国の領土は「バハルス領域」と改名され、俺の肩書きも「バハルス帝国皇帝」から「バハルス領域守護者カッコカリ」と改められた。長いし変な名前だが仕方が無い。

 帝国軍は一部の近衛を除いて解体され、代わって治安維持には魔導国の首都エ・ランテル同様、デスナイトの部隊が当ることとなり、行政についてはこれまで同様に俺を中心として当るが、これにも数人のエルダーリッチの行政官が加わることとなった。要はお目付け役だな。

 何でも魔導王が忙しいということで、現在の俺の肩書きも含めて全ては正式の決定ではないということだが、とりあえず暫定であっても旧・帝国の大幅な自治権が認められたことは喜ぶべきだろう。軍権を剥奪されることは想定内だ。

 ちなみに、解体された軍を追われた元・騎士達は、そのまま魔導国主催の冒険者として活動する者や、アンデッドによって開拓されたエ・ランテル周辺の土地への移住者や、旧・帝国内の未開拓地域への開拓者(これにも護衛と労働力としてのアンデッドが割り当てられるので旧来より遥かに安全だ)などに振り分けられた。

 

 ・・・・・・何? 原作でそこまで判明してないって? いいんだよ、細けぇことは。そいいうことにしないと話が進まないだろうが。あんまり細かいことに拘ってるとハゲるぞ? 経験者の忠告は神妙に聞くべきだ。

 

 まあ、それはそれとして、帝国を巡る激動もとりあえず小康状態になったこともあるし、いつの日か、この混乱の時代を懐かしく読み返すことができるといい、そう願って以前のように『続・ジルクニフ日記』を記すことにした。

 危うく作者のやつにタイトルを『じるじるじるくにふ』にされる所だったが、これまで通り俺の直衛として仕えてくれている三騎士に命じて、何とか腕ずくで阻止することに成功したのは幸いだった。何考えてんだアイツ。全く油断も隙もあったもんじゃない。

 

 

 

○月×日 002

 今日は少し遅く目が覚めた。

 正直言って「バハルス領域守護者カッコカリ」の朝は遅い。これまでと違い、軍に関する仕事が丸々減った分、それほど早く起き出して仕事に掛かる必要自体が無くなったというのが実情だ。

 寂しさもあるが、自由に使える時間が増えたと前向きに捉えることにしている。

 

 軍事や治安維持についての陳情・提案については、一応、我々旧帝国の役人が受付け、それを魔導国から派遣された担当のエルダーリッチ(エルダーリッチ達のローブは白と赤が複数人づついるが、一人だけ黒いローブのエルダーリッチがいるのだ)に伝え、さらにエルダーリッチが直接魔導国の担当に連絡することで指示を仰ぐという形式になっている。

 ドラウディロン女王には悪いが、竜王国援軍の話も魔導国に丸投げだ。別に粘った甲斐があったなどとは思ってないぞ?

 その決定のプロセスに我々旧・帝国勢の意思の入り込む余地は殆ど無く、僅かに魔導国からの指示でデスナイトと共に治安維持の任についている旧・近衛の騎士に細かく伝える必要がある場合のみだ。

 要するに通訳のようなもので、これについてもエルダーリッチから直接騎士達に伝えることも多いので出番は少ない。竜王国の援軍にしても、魔導国ならビーストマンのトラウマになってるらしいソウルイーターを数匹派遣すれば即解決するだろうしな。

 

 まあ、占領地域の体制としてはあくまでも暫定とはいえ、これでも相当ぬるいと言える措置だけに、果たして信頼されているのか、それとも少々反乱を起こした所で容易く鎮圧できるという自信の表れか・・・・・・常識的に考えるなら後者だろうが、エルダーリッチ達の言動を見ていると前者のように思えてくる所が少し恐ろしい。何と言うか・・・・・・妙にフレンドリーなんだよな・・・・・・ボディータッチ多いし。

 

 ともあれ、減ったとはいえ仕事がゼロになった訳ではない。

 内政にしたところで、食料と税収の安定確保の為に、未開発地域の開拓・開発計画や、物資の大量安定輸送の為の街道整備計画など、アンデッドという安定した労働力を生かした大規模な開発を実行する計画案を立てねばならない。

 

 そう、ある意味これはチャンスなのだ。今は将来の為に敵の力を利用して旧・帝国領の力を蓄える時期であると見るべきだ。

 A・ンザイ先生も言っていた。「諦めたらそこで試合終了ですよ」と。決して諦めない気持ちから未来は開けるのだ。ところでA・ンザイ先生って誰だろう?

 

 あと、そこのお前、諦めなくてもコールドゲームて言うな。

 

 

 

○月△日 003

 今日は久々にゆっくりと「バハスポ」を読む時間があった。そう、旧名を帝スポと呼ばれていた新聞だ。

 これまで帝国を襲った急激な変化と混乱の日々の中で、ゆっくり新聞を読む時間など無かったのだから、このような時間もたまには許してもらいたい。

 またサボってるとか言うな。当然ちゃんと仕事をこなした上での余暇の時間だ。初回、前回と仕事してるぞアピールはしておいたのだから問題無いはずだ。

 

 ちなみにバハルス帝国が解体されて消滅した為、旧・帝国スポーツ社はバハルス帝国に代わる新たな名称である「バハルス領域」に因んだ「バハルススポーツ新聞社」へと社名を変更したのだそうだ。

 慣れ親しんだ帝スポの名称が消えるのは寂しいが、「帝国」の名称を残しては、一般的な占領政策の観点から旧国名を放置してもらえるとも思えず、無用なトラブルが起こる前に率先しての名称変更は賢明な、致し方ない判断だっただろう。

 

 目立った記事としては、魔導王に誘われてエ・ランテルへと去った八代目武王こと、巨王ゴ・ギンに代わる九代目武王を決めるトーナメントが開催されるらしく、参加者を募っていると言う。

 武王か・・・・・・思えば武王の敗北が、魔導国へ下る決断の決め手だった。今となっては何もかも皆懐かしい・・・・・・。

 しかし、もう過ぎたことだ。願わくば今回のトーナメントで魔導国に対抗し得る人材の手掛かりだけでもいい、発掘できるなら良いのだが、残念ながら帝国からの参加希望者は現時点ではゼロのようだ。

 まあ、それはそうだろうな。現時点でそんな優秀な人材が帝国領内にいたならば、とっくに俺の耳にも届いていただろうから。

 今のところ魔導国からスケルトン死国ほか数名と、王国からマスクド・ランポッサ三世の参加が決定していると・・・・・・まだやる気かあのジジイ・・・・・・。

 

 あと、気になった記事として、北方の都市連合に近い地域において魔導国からの離脱を求める国民投票の呼び掛けの動k・・・・・・ておい、時事ネタはやめろ。「このくらい平気へーき♪」じゃない。

 どうせガセネタだろうが、そんな動きが本当なら魔導国を刺激することになるので非常にマズい。軍事権が無いので何もできないが、ここは下手に大事にならないよう、こちらから率先して穏便に調査・対応を魔導国側にお願いするしか無いか。今は兎に角、目立たないことが重要だ。

 

 あとは・・・・・・特に変わった記事は無いようだが・・・・・・バハルス領域守護者カッコカリ氏の禿疑惑? ・・・・・・くっ、くだらない。完全にガセネタだ。見ての通り、こんなにもフサフサなのに、な、何を根拠に疑惑などと・・・・・・所詮はゴシップ紙ということだな!

 

 ゴホン! ・・・・・・ああ、そうそう、紙名は変わっても、ナザリック殺人事件の最終回は無事に掲載されていた。

 いやー、最後のどんでん返しが凄かったなあ。連続殺人犯がこいつだったとは驚いた。事件の裏にそんな事実が隠されていたとは・・・・・・これはあの糞野郎でも見抜けないんじゃないか?

 ん? 詳しく教えろ? 馬鹿だな、探偵小説のトリックや犯人教えるなんてこと、できるわけないだろ常識的に考えて。

 

 

 

○月◇日 004

 今日は午前中で仕事を終え、昼からは皇城の私室で三騎士達と久し振りに寛いでいた所に、魔導国から派遣されているエルダーリッチの行政官達がゾロゾロと連れ立ってやってきた。

 最初は何かマズイことでも起きたのかと緊張が走ったが、幸いにもそういうことではなく、何やら我々に相談があるのだと言う話だった。

 

 エルダーリッチの言うところによると、現在、魔導王陛下の統治方針はアンデッドや異形種だけでなく人間種、亜人種も含めた全生命種の、ナザリック統治下に於ける平和共存という方針であり、この方針に沿った運営を心掛けてはいるが、やはり、正直なところ種の違う者の考え方や感性の違いに戸惑いもあるのだと言う。

 そこで種を超えた平和的な友好関係の構築に何か良い手はないかと知恵を絞った結果、音楽やダンスなら問題無いのではないか、という結論に至り、ちょっと我々に見てもらった上で、好評なら闘技場辺りを借りての大規模な親睦公演なども視野に入れたいのだそうだ。

 

 そういう話であれば断る理由は何も無い。

 どうやら彼らにとってアインズの言葉は絶対であり、現状アインズの方針が共存であるならば、彼ら配下はその言葉通りに全力を尽くすというのが魔導国のアンデッド達の特性であるようだ。どうもこの辺は野良のアンデッドとは一線を画す特質なのかも知れないな。

 ただ、それもアインズの胸先三寸。ヤツの方針が敵対に変われば、その瞬間から我々人類は滅亡へと一直線ということの裏返しでもある。絶対に油断などできない。

 

 それはさておき、早速見てもらいたいという要請に応じ、三騎士も連れ立ってエルダーリッチに案内された中庭には、既にスケルトンが10体ほど整列していた。エルダーリッチの1体が合図を送ると、先頭のスケルトンが何やら足元に置いたマジックアイテムらしき箱を操作する。

「人○い○長が♪大○鼓♪」「ホ○○○ロック♪(○ネ○○ロック♪)」

 いきなり大音響で曲が流れ出し、リズムに合わせてスケルトン達が踊りだした。

 

 いやいやいや、ちょっと待って。いきなりそれはマズイ。よりによって放送禁止歌って、誰に喧嘩売ってんだ作者おい。

 慌てて止めさせたが、頼むから少しは手加減しろ。何なんだそのチョイス。

 〝激風〟はオロオロしてるし〝重爆〟はもうジリジリと逃げる体勢に入ってるじゃないか。〝雷光〟お前、ウケすぎ。腹抱えて笑ってるんじゃない。

 

 ダメを出されたエルダーリッチ達は少し残念そうだったが、音楽やダンスという方向性自体は良いというアドバイスに気を良くしたらしく、今後もう少し検討を加えて再度挑戦するから、また見て欲しいということだった。

 そのチャレンジ精神は買うが、出来たら次は胃に優しい選曲にして欲しいもんだ。

 

 

 

○月▽日 005

 少し遅いいつもの朝、目覚めるとベッドの端にデスナイトが立っていた。

 過去には戦場で寝起きした経験もあるし、死を覚悟したことも1度ならずあるが、居城のベッドで目が覚めたのと同時に死を覚悟した経験は、さしもの俺も初めての体験だ。走馬灯って目を開いてても見えるんだな。なんだか一気に抜けた気がする色々と。

 

 しかし、デスナイトは俺が目覚めたことに気付いても特に慌てた様子も、いきなり俺を亡き者にしようというような、物騒な行動に出るでもなく、静かに佇んでいるだけだ。

 ベッドの中で固まったまま、深呼吸で無理矢理気持ちを落ち着けてよく見ると、デスナイトはフリルの付いたメイド服らしきエプロンドレスを着ている。

 なんだこれ? デスメイド? 何の嫌がらせだ? ヘルムの代わりにホワイトブリムだし、側頭部から生えた角にリボンまで巻いて。

 

 どうやら危険は無いようなので、そのまま普通に起きて着替え(なんか手伝おうとしてるデスナイトを止めて)を済ませ、部屋を出て誰か事情を知っていそうな者を探すことにする。

 途中で三騎士の内、〝激風〟と〝重爆〟に出会ったので事情を話して尋ねたが、何も知らなかったようで、〝激風〟は普通に引いてたし、〝重爆〟も特に心当たりは無いと言っていた。〝雷光〟にも聞きたかったが、今の居場所は2人共知らないと言う。

 仕方なく執務室の方に向かうと、エルダーリッチの行政官が2人ほど篭って書類と格闘していたが、入ってきた俺を見るなり機嫌の良さそうな声(見た目じゃわからんが、多分)で話しかけてきた。

「どうですかな? 新しいメイドは? お役に立てましたでしょうか」

 

 お前らが犯人か。

 

 いや、確かに最近は魔導国への編入の混乱で皇城で働くメイドの数が減ってしまって、何かと困ることもある、みたいな話はした記憶がある。しかし、だからと言って何でそこでデスナイト?

 胃がキリキリ痛んだが、言うべき苦情は言わせてもらうことにして、皇城のメイドであれば見た目や品位も重視されることを力説させてもらった。

 

 これにはエルダーリッチの行政官も、「確かに、ナザリックでも至高の方々のお住まいになる場では、使用人であれど品格を問われますからな。これは我々が迂闊でありました」と納得してくれたようだった。

「しかし、そうなると人間の居城で働けるに足る見た目を持つ者・・・・・・ナザリックからの派遣は難しいでしょうし、エ・ランテルの方から借りるにしても・・・・・・戦闘要員以外の人員の数は・・・・・・」などと真剣に悩んでくれているようだ。何だ、意外と話せるじゃないかエルダーリッチ。

 

「デスナイトなら余っているし、うってつけだと思ったのですがねえ。ペシュメル殿に相談した時は、それは良い考えだと大いに賛成してくれたのですが・・・・・・」

 丁度そこに〝雷光〟が上機嫌で入って来たので、口を開く前に顔面に一発お見舞いしておいた。お前もグルか。

 〝雷光〟は「まさか本気でやるとは・・・・・・」などとブツクサ言い訳してたが、抜けた本数分殴られなかっただけでも感謝して欲しいものだ。

 

 次は容赦なく毟ってやる。

 

 

 


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