人、人、人……。ギリシャ・ローマ時代から芸術家をとらえて止まない「人」というテーマ。
本展では人物画作品のみ、新作5点を含む50作品を一堂に展示しています。
どの人物が、より心に残るでしょうか?
写実絵画は1枚の作品を仕上げるのに数か月という長い時間を要します。絵と向き合い、モデルと向き合い、作家が込めようとしたメッセージを、どうぞ1枚1枚の作品から感じ取っていただければ幸いです。
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2013年 第1回ホキ美術館大賞 館長賞受賞作
この作品は「柔脆な共存」というシリーズの一つです。柔らかく脆いものと人物を組み合わせたシリーズで、「光」「人物」「枯れゆく桜の木」「流木」「骨や貝」等、背景から手前へと世の中の輪廻や死生を描いた作品です。 |
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人の顔、特に女性の顔ほどやっかいなものはない。英語のパーソナリティの語源といわれるラテン語のペルソナは、もともと仮面を意味するという。口を閉ざしたモデルの顔は仮面かもしれない。そしてその顔はとてもじょう舌である。物語を語っているかもしれないし、彼女の日記かもしれない。いや、単に退屈さを訴えているのか?ひょっとして泣いているのだとすれば、これは信じてはならぬ、などと堂々巡りしてしまう。一杯飲みながら仮面の裏の謎の楼閣に迷い込み、耽溺してしまうのは楽しみですらある。 私は今まで静物画を主体に描いてきた。モチーフはパンであり、レモンであり、レースや銀器……等々。彼らは大人しく寡黙であり、私が話しかけない限り喋ってくれない。一つひとつ丁寧になでてゆくにつれ、いい香りがしたり、口の中が酢っぱくなったり、手の込んだ匠の技が見えてくる。細部を克明に一筆一筆描いてゆくと、質感の中に私の存在が溺れこんでゆく。けれども私の気持ちが離れるとモチーフたちはその輝きを失い、ろう細工のような無表情に戻ってしまうのだが、静物画は慣れ親しんだ世界だ。 今回久し振りに人物画に挑戦したのだが、寡黙な対象からじょう舌な対象への変化は衝撃であり、正直に言えばやりづらかった。初めてでないにしても異国の地で闘うような気持ちであった。この先、この人物画が私にどのような影響を与えるか、考えてゆきたい。 |
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2014年 新作 |
2010年 |
2009年 |
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