TPP・日欧・日米 大型3協定新年度入り 4月 関税さらに下げ 乳製品は輸入枠拡大
2020年03月30日
日米貿易協定と環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が4月1日、新たな年度に入り、関税率がさらに下がる。牛肉は26%台から25・8%となり、豚肉の関税も下がる。小麦や乳製品の輸入枠は年間数量が拡大。市場開放が進む中、米国との追加交渉やTPP加盟を目指すタイなど新たな交渉の動向も焦点になる。
協定の関税や輸入枠は毎年4月に切り替わる。TPPと日欧EPAは3年目、日米貿易協定は2年目に入る。
牛肉と豚肉は、3協定加盟国からの輸入量が大部分を占める。牛肉は、関税削減ルールを踏まえて19年度は税率が異なっていたが、20年度は25・8%でそろう。TPPのセーフガード(緊急輸入制限措置、SG)の発動基準は上がる。
豚肉は、高価格帯にかける従価税が1・7%に下がる。差額関税制度では、高価格と低価格を合わせて課税額を抑える「コンビネーション輸入」が主流。1キロ当たり524円の分岐点価格に調整した場合の最小課税額は約9円。27年度には無税になる。
小麦はTPPのオーストラリア、カナダ向けと、日米協定の米国向けの輸入枠がそれぞれ拡大。マークアップ(輸入差益)も削減される。
EUが強みを持つソフト系チーズは輸入枠が600トン拡大し、枠内税率も削減。33年度には3万1000トンで、枠内税率は撤廃される。
4月以降、新たな交渉が動く可能性もある。日米貿易協定は、4月末までに追加交渉に向けた予備協議を終える方針を共同声明に示している。日米両政府は事務レベルで「複数回協議している」(茂木敏充外相)が、日程調整程度にとどまっているもようだ。
タイは、4月にTPPへの加盟方針を正式に表明する意向。8月の交渉入りの可能性がある。EUから離脱した英国との自由貿易協定(FTA)交渉が始まった場合、日欧EPAで輸入枠を設けた品目の扱いが焦点だ。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、新たな交渉が動くかは不透明だ。「終息後の各国の動きを見据えて、日本側も準備しておかなければならない」(政府関係者)との声もある。
協定の関税や輸入枠は毎年4月に切り替わる。TPPと日欧EPAは3年目、日米貿易協定は2年目に入る。
牛肉と豚肉は、3協定加盟国からの輸入量が大部分を占める。牛肉は、関税削減ルールを踏まえて19年度は税率が異なっていたが、20年度は25・8%でそろう。TPPのセーフガード(緊急輸入制限措置、SG)の発動基準は上がる。
豚肉は、高価格帯にかける従価税が1・7%に下がる。差額関税制度では、高価格と低価格を合わせて課税額を抑える「コンビネーション輸入」が主流。1キロ当たり524円の分岐点価格に調整した場合の最小課税額は約9円。27年度には無税になる。
小麦はTPPのオーストラリア、カナダ向けと、日米協定の米国向けの輸入枠がそれぞれ拡大。マークアップ(輸入差益)も削減される。
EUが強みを持つソフト系チーズは輸入枠が600トン拡大し、枠内税率も削減。33年度には3万1000トンで、枠内税率は撤廃される。
4月以降、新たな交渉が動く可能性もある。日米貿易協定は、4月末までに追加交渉に向けた予備協議を終える方針を共同声明に示している。日米両政府は事務レベルで「複数回協議している」(茂木敏充外相)が、日程調整程度にとどまっているもようだ。
タイは、4月にTPPへの加盟方針を正式に表明する意向。8月の交渉入りの可能性がある。EUから離脱した英国との自由貿易協定(FTA)交渉が始まった場合、日欧EPAで輸入枠を設けた品目の扱いが焦点だ。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、新たな交渉が動くかは不透明だ。「終息後の各国の動きを見据えて、日本側も準備しておかなければならない」(政府関係者)との声もある。
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6カ月連続で前年増 消費減り需給不透明 米の2月末民間在庫量
米の民間在庫が高水準で推移している。農水省が公表した2月末の民間在庫量は前年同月から5%(11万トン)増の270万トンとなり、前年同月を6カ月連続で上回った。米の消費低迷が響いている。
3月は、新型コロナウイルスの影響で小売店での買いだめが発生して家庭消費が増える一方、外出の自粛などにより外食需要は大きく減っている。米需給の先行きは不透明だ。
19年産の生産量は前年より減る一方で、民間在庫量は9月の出回り開始以降、前年同月を上回り続けている。JA全農、経済連などの出荷段階の在庫量は223万トンで、前年より4%(7万トン)増えた。卸段階の在庫量は47万トンで、過去5年で最多となった。前年比では9%(4万トン)増となっている。
3月は新型コロナの影響が大きく現れそうだ。外出自粛などによって家庭用や弁当などの中食需要が増える一方、外食需要は大きく落ち込んでいる。
新型コロナの問題が発生する以前から続いている消費低迷の影響も大きい。あるJA関係者は「3月単月で見れば、出荷量は前年から10~20%増えた。だが、出来秋からの出荷総量を見ると、前年同期とほぼ同じだ」と話す。
買いだめによる需要の先食いの反動で、今後の需要の減少を懸念する米卸も多い。
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2020年04月01日
農機 減らぬ交通事故死 8割「単独」、操作ミス 警察庁まとめ
警察庁がまとめた農機の交通事故発生状況で、2019年までの5年間の死亡事故数が、毎年約30件と減っていないことが分かった。農家数が減少傾向の中、死亡事故の割合は高まっている。死亡事故原因の8割は道路から田畑や用水路に転落するなどの単独事故で、操作ミスが事故を招いている。重傷事故は過半数を追突事故が占める。同庁は、確実なハンドル操作や、作業時以外の左右ブレーキ連結確認など、注意を呼び掛けている。
同庁が農耕作業用自動車の交通事故発生状況としてまとめた。小型と大型の農耕特殊自動車で起きた死亡事故と重傷事故を分析。農水省がまとめる農作業死亡事故発生状況は農作業中や交通事故を含むが、今回の調査は交通事故に絞ったもの。
19年の農機による交通事故は59件。重傷事故は29件で、死亡事故は30件あった。14年に比べ、全体の件数は16%(11件)減ったが、死亡事故は横ばいが続く。直近5年間を集計すると、死亡事故156件のうち124件(79・5%)は単独事故で、このうち57・1%が田畑などに転落する「路外逸脱」。運転操作を誤ったり、危険の発見が遅れたりして道路の外へ転落し、胸を圧迫されるなどで亡くなるケースが多いとみられる。
単独事故の発生時間は午前10時から午後6時までと時間帯に関係なく起きており、必ずしも暗い夜道で起きているわけではなかった。対策として農作業安全確認運動を展開する日本農業機械化協会は、道路脇の草刈りや危険個所の目印設置などが重要だとしている。
重傷事故は過去5年で206件起き、52・4%が追突事故。追突は午後4時から8時に集中する傾向で、昼間に起きた40件の事故でも11件はトンネル内だった。農耕車の追突事故が多い原因として同庁は「後続車から発見されにくいためだと考えられる」としている。
過去5年間の累計で重傷・死亡事故が多かった都道府県は、新潟が33件で最も多く、鹿児島(23件)、長野(17件)と続く。
同庁は安全キャブフレームの装着とシートベルトの着用を呼び掛けている。単独事故を防ぐには確実な運転操作や作業時以外は左右のブレーキ連結、追突事故の防止にはランプ類や低速車マークの取り付けを心掛けてほしいとしている。
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2020年04月03日
水谷八重子さん(女優) 疎開時の味 “甘い”思い出
今思い起こしますと、戦争で非常に辛い思いをされた方々には申し訳ないのですが、私にとって戦時中はとても甘い思い出の時期なんです。というのも、うちは父(歌舞伎俳優の14代目守田勘彌)も母(女優の初代水谷八重子)も舞台で忙しく、家族みんなで過ごすということができませんでした。
一家で熱海に疎開した時だけなんです、ちゃんと両親と一緒にいられたのは。ちょうど物心がついたくらいの頃で、短い期間ですが、いろいろ覚えています。
夏にはトウガン
食卓に上がったものは、季節がはっきりとしていました。
夏になるとトウガン。トウガンメインの、冷たい透き通ったおつゆみたいな家庭料理をいただきました。よく冷えていて、暑さを和らげてくれました。これが出ると、夏が来たなと感じたものです。
冬といえばアンコウ。父が大好きでした。私は子どものくせになぜか肝が好きで。お鍋から肝を見つけて取ると、母から「まだお父さまが召し上がっていないのに」と叱られました。
後になって普通とは季節感が違うことを知ったのですが、うちでは夏に、茶わん蒸しを冷やして食べていました。大きくなって友だちから、冬の熱い食べ物だと聞いてびっくり。誰に聞いてもそうだと言うんです。今、コンビニに行きますと、冷えた茶わん蒸しが売っていますでしょう。家でレンジでチンして食べるんですよね。でも私は冷たいまま食べています。熱海の夏を思い出しながら。
食事でよく出てきたのが、すいとんです。辛い思いをした方にとっては思い出したくない食べ物だそうですが、私は今でも時々食べたくなります。おそばやさんに行ってそばがきを見ると、ついすいとんを思い出したりします。
同じように、配給のサツマイモの「農林1号」も、急に食べたくなります。細くて長く、中身は真っ白でした。とても柔らかく、ゼリーみたいな食感。お芋の味があまりしなくて、お菓子の延長みたいな感じで食べていました。もう作られてはいないんでしょうね。
大好きなヨメナ
消えたといえば、ヨメナ(キク科の植物)もそうです。いつの頃からか見掛けなくなりました。母が大好きで、おひたしで食べていました。熱海時代、あぜ道でヨメナを摘むのが、私に課せられた仕事。葉っぱの幹に毛が生えている「鬼ヨメナ」と呼ばれているのがあって、そちらは食べないんです。
私の仕事はもう一つあって、一升瓶に入れた玄米を棒でついて精米しました。
友だちと山に行っては、グミを取って食べ、野イチゴをヘビイチゴと間違えないように気を使いながら摘んで食べていました。
大人たちはどこの家でも、庭で野菜を作っていました。うちは山の上の方でとても日当たりが良かったから、できたトマトは本当に大きかったですねえ。
トマトって上の方が、まるでギャザーのように寄っていますでしょう。あそこが臭いんですよね。私はまだ青いトマトのそこを触ってしまって、手に付いた匂いがなかなか取れず、それで大嫌いになってしまったんです。そんな私に、両親と祖母は口酸っぱく「トマトを食べろ」と。祖母は貴重なお砂糖を掛けてまで食べさせようとしました。大切な栄養源だったのでしょう。
何不自由なく食べたいものを食べられる今、なぜか食で思い出すのは戦争中のこと。熱海で過ごした家族との大切な思い出です。(聞き手=菊地武顕)
みずたに・やえこ 1939年東京都生まれ。55年、水谷良重の名で歌舞伎座新派公演で初舞台。その初日にレコード「ハッシャ・バイ」を発売し、ジャズ歌手としてもデビューした。95年に2代目水谷八重子を襲名し劇団新派をけん引する。5月13日、東京・ヤマハホールで「A●LIVE81? 命あるかぎり」開催予定。
編注=●はハートのマーク
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2020年03月28日
栗園10年地域元気に 「岸根ぐり」PR住民が結集 山口県岩国市美和町大根川集落
山口県岩国市美和町大根川集落の住民14人で管理・運営する「大根川観光栗園」が、開園10年の節目を迎えた。地域ブランド「岸根ぐり」の認知度を上げ、栗拾いによる観光客の呼び込みで地域を元気づけようと開園した。昨年の来園者数は約1500人で、開園当初の10倍を記録。今年も秋の開園に向け、広大な敷地に腐葉土をまいて土づくりをするなど準備に汗を流す。
集落は市中心部から車で約40分の静かな山あいにある。2014年に県の「やまぐちブランド」に認定された「岸根ぐり」の産地だ。品種「岸根」は、1粒の重さが30グラム以上と栗では最大級の大きさで、60グラム超の果実もある。大きさと味の良さから高級栗ブランドとして人気は高いが、生産者の高齢化と収量の減少が課題となっていた。
地域活性化とブランド振興のため、住民が結集し、観光園を10年に開園した。約1ヘクタールに「岸根」200本の他、早生種「銀寄」30本を栽培する。
同園は品質の高い栗の安定供給へ試行錯誤する。安定した収穫量を維持するため、草刈り、施肥、剪定(せんてい)、害虫防除は特に徹底する。昨年初めて、敷地の半分に土づくりのため腐葉土を施した。通気性や保湿性が良く、土が柔らかくなる効果があり、今年は全面に腐葉土を入れた。果実の品質に効果が出るまでには2年ほどかかるが、土づくりは基本として続ける。
観光園の運営だけでなく、集落ぐるみで栽培を盛り上げる。栽培未経験者にはJA山口県岩国統括本部の「くり入門塾」で、剪定の基礎を身に付けてもらうなど、後継者育成にも力を入れる。
同園の藤本忠義園長は「わが子のように丹精して作った栗をもっと多くの人に広めて、収穫する楽しさを知ってもらいたい。秋には栗園を訪れてほしい」とPRする。
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2020年04月02日
手作りマスク役立てて 福祉法人に361枚 JAしまね出雲女性部
島根県のJAしまね出雲女性部は、社会福祉法人JAいずも福祉会に手製のマスク361枚を贈った。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、施設の職員用マスクが不足していると聞き、女性部で支援を決定。マスクは、法人が運営する高齢者福祉施設「みどりの郷」4施設と障害者就労支援施設「ぽてとはうす」で活用してもらう。
ウイルスに感染すると重症化するリスクが高い高齢者の施設でマスク不足と聞き、役員会で全36支部の支部長らに作成を呼び掛けた。法人は5施設に計190人が勤務し利用者は1日平均228人。接触が多い業務のためマスク着用は必須だ。
贈ったマスクは、3重構造でノーズワイヤー入り。ガーゼを当てて使い洗濯して再利用できる。材料が不足する中、JAしまね出雲地区本部が運営する生活購買店舗や地元の呉服店などで仕入れた「さらし」を裁断して使い、伸縮性の高い布を切ってゴムひもにするなど工夫。今回は早くマスクを届けようと役員中心の約50人が各地区で作成。出雲女性部は全体で約4800人が在籍し、状況を見て多くの部員で第2弾を実施する計画だ。
贈呈式では、高野智子女性部長らが法人の岡田達文理事長らにマスクを手渡した。岡田理事長は「有効に活用させていただきます」と礼を述べた。高野部長は「元気で安心して暮らせるよう、マスクを活用してもらいたい」と願った。
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2020年03月31日
農政の新着記事
不正流出防止 和牛遺伝資源守る 流通管理を一元化 鳥取県20年度
鳥取県は、和牛の受精卵や精液など遺伝資源や、子牛の出生から出荷の情報を一元管理するシステムの整備に乗り出す。これまで複数団体が個別にデータや紙媒体で情報を取り扱っていたが、インターネット上の共有クラウドで情報を管理する。全国から人気の県基幹種雄牛を抱える同県は、遺伝資源の流通管理の強化で県外への不正流出を防ぎ、地域ブランドを守る方針だ。
県は「鳥取和牛遺伝情報管理・活用システム導入事業」を立ち上げ、①凍結精液と受精卵の管理②子牛情報の一元化──で実施する。単年度事業として20年度当初予算で3156万円を盛り込んだ。
凍結精液と受精卵の管理は、国の事業から2分の1の補助を得て、県家畜改良協会が事業主体となりシステムを整備する。畜産試験場や人工授精所が別々に管理する精液譲渡や授精証明書などをネット上のクラウドで情報共有し、「証明書記載事項などの正確度を高める」(県畜産課)。精液証明書はバーコードを付け、種雄牛や所有者など情報を管理する。
子牛情報は、県畜産推進機構がシステムを整備。「紙媒体で情報を保管する団体もある」(同)ためクラウド上でデータ管理を徹底する。JAやJA全農とっとりなどが所有する子牛の出生・登録、せり出荷などの情報をまとめる。全国和牛登録協会など外部との連携にもデータを役立て、「システム管理で省力化にもつながる」とみる。
県基幹種雄牛の精液を県外から持ち込まれた雌牛に人工授精し、県外で子牛を生産した問題も起きた。県は、遺伝資源の不正流出防止策を強化して、2月から、「白鵬85の3」など県の優良種雄牛の精液や受精卵の利用を制限する「使用許諾契約」を生産者と結んでいる。4月から配布する精液などに契約内容が適用される予定だ。
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2020年04月04日
[新型コロナ] 農相 講堂で“広々会見”
農水省は3日から、江藤拓農相の閣議後会見の開催場所を省内の会見室から講堂に変更した。新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、人と人とが密接するのを避けるため、広いスペースが取れる講堂で開催することにした。
同日の会見場では、一定の間隔を開けて座席を設置した。講堂での会見は今後も継続する。
会場変更の理由について、江藤農相は「記者の健康確保」と述べた。
同省では、玄関にサーモグラフィーを設置、入館者の体温を調べるなどの対策も講じている。大臣室の入室者には体温チェックに加え、マスク着用も義務付けている。
江藤農相は「業務に支障を来すことは厳に避ける」とした上で、「省内で罹患(りかん)者を出さないことを目標に対応を徹底している」と述べた。
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2020年04月04日
農機 減らぬ交通事故死 8割「単独」、操作ミス 警察庁まとめ
警察庁がまとめた農機の交通事故発生状況で、2019年までの5年間の死亡事故数が、毎年約30件と減っていないことが分かった。農家数が減少傾向の中、死亡事故の割合は高まっている。死亡事故原因の8割は道路から田畑や用水路に転落するなどの単独事故で、操作ミスが事故を招いている。重傷事故は過半数を追突事故が占める。同庁は、確実なハンドル操作や、作業時以外の左右ブレーキ連結確認など、注意を呼び掛けている。
同庁が農耕作業用自動車の交通事故発生状況としてまとめた。小型と大型の農耕特殊自動車で起きた死亡事故と重傷事故を分析。農水省がまとめる農作業死亡事故発生状況は農作業中や交通事故を含むが、今回の調査は交通事故に絞ったもの。
19年の農機による交通事故は59件。重傷事故は29件で、死亡事故は30件あった。14年に比べ、全体の件数は16%(11件)減ったが、死亡事故は横ばいが続く。直近5年間を集計すると、死亡事故156件のうち124件(79・5%)は単独事故で、このうち57・1%が田畑などに転落する「路外逸脱」。運転操作を誤ったり、危険の発見が遅れたりして道路の外へ転落し、胸を圧迫されるなどで亡くなるケースが多いとみられる。
単独事故の発生時間は午前10時から午後6時までと時間帯に関係なく起きており、必ずしも暗い夜道で起きているわけではなかった。対策として農作業安全確認運動を展開する日本農業機械化協会は、道路脇の草刈りや危険個所の目印設置などが重要だとしている。
重傷事故は過去5年で206件起き、52・4%が追突事故。追突は午後4時から8時に集中する傾向で、昼間に起きた40件の事故でも11件はトンネル内だった。農耕車の追突事故が多い原因として同庁は「後続車から発見されにくいためだと考えられる」としている。
過去5年間の累計で重傷・死亡事故が多かった都道府県は、新潟が33件で最も多く、鹿児島(23件)、長野(17件)と続く。
同庁は安全キャブフレームの装着とシートベルトの着用を呼び掛けている。単独事故を防ぐには確実な運転操作や作業時以外は左右のブレーキ連結、追突事故の防止にはランプ類や低速車マークの取り付けを心掛けてほしいとしている。
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2020年04月03日
米国貿易障壁報告書 対日追加交渉に意欲 米、豚肉を問題視
米通商代表部(USTR)は31日、2020年版の外国貿易障壁報告書を公表した。1月に発効した日米貿易協定の成果を誇示した一方、除外された米などを念頭に「全ての農産品をカバーしていない」と指摘。日本の輸入制度などを改めて問題視した。日米共同声明に盛り込まれたサービス分野を含めた追加交渉に意欲を示した。
USTRは報告書を毎年公表している。米国産品の輸出や外国市場への展開で障壁となる貿易や投資のルールを国ごとに列挙する。公表は日米貿易協定の発効後初めて。報告書では「米国産農産品の90%超が無税か、優遇関税になる」と農業分野での成果を強調した。一方、米などが関税削減・撤廃から除外されたことに言及した。
また、「広範囲に輸出障壁を取り除くため引き続き日本に関与していく」と共同声明に基づく追加交渉に意欲を見せた。
日米間では今月中に「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易、投資」などの中から交渉範囲を決める方針を示している。両政府は協議を「複数回、行っている」(茂木敏充外相)としているが、本格的な協議には至っていないもようだ。
重要品目では、非関税障壁の輸入管理制度を中心に懸念を示した。米はミニマムアクセス(最低輸入機会=MA)で輸入された米国産米が日本国内の消費者に浸透していないなどと指摘。「世界貿易機関(WTO)ルールに照らして制度を監視する」と従来からの記述を踏襲した。
豚肉は、これまでと同様に差額関税制度を貿易歪曲的な措置だと批判。日米協定の発効を受け「(関税は)削減されるが、撤廃はされない」と指摘し、制度を問題視する姿勢を崩していない。
トランプ政権は対日貿易赤字の削減に強い意欲を示してきた。赤字の8割を占める自動車では、日本の車両認証制度や販売慣行が、米国のメーカーの排除や不利益につながっているとした。
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2020年04月02日
加工原料乳生産者補給金 343万トン、88事業者に 制度検証も視野 20年度農水省
農水省は1日、2020年度の加工原料乳生産者補給金を88事業者を対象に交付すると発表した。各事業者の年間販売計画を踏まえ、交付対象は約343万トンに設定。……
2020年04月02日
食品ロス 削減へ県民総参加 富山県が推進計画
富山県は1日、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」を減らすため、食品ロス削減推進計画を全国に先駆けて策定した。JAなどの生産者団体や流通事業者、行政、消費者など“県民総参加”で取り組むことを明記。JAには規格外品の活用などを期待する。2030年までに、県民1人当たりの1日の食品ロス量を55グラムに減らしていく。
県によると、家庭ごみと事業ごみの総量を県民数で割った1日当たりの食品ロス発生量は、16年度で約110グラム。同計画では30年までに半減させるとした。
JAには、規格外の農産物や余剰在庫の活用を期待する。フードバンクや子ども食堂などへの提供など、具体的な取り組みは20年度に検討する。
他にも、納品期限や販売期限に関する商慣習の見直しを行政や事業者、消費者が一体となって取り組む。消費者には、家庭内で食材の使い切りや、販売期限が近い商品の購入などへの協力も呼び掛ける。
県では17年に、JAグループや流通事業者、消費者団体などでつくる「富山県食品ロス・食品廃棄物削減推進県民会議(県民会議)」を設立。削減推進のための連携体制などを整備してきた。県農林水産部農産食品課は「食品ロス対策は個々の取り組みだけでは解決が難しい。県民総参加で連携して取り組んでいきたい」と話す。
県民会議に参加したJA富山中央会の山本康雄専務は「食育活動などによるJAグループの貢献も会議で確認された。今後も率先して取り組んでいきたい」と意気込む。今後、JAグループ富山では酒かすを飼料に生かすエコフィードなどにも取り組む予定だ。
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2020年04月02日
遺伝資源保護で衆院委 畜産2法案を可決 違法物阻止へ制度 アフリカ豚熱付帯決議
衆院農林水産委員会は31日、家畜遺伝資源の不正流通を防ぐことを目的にした新法の家畜遺伝資源の不正競争防止法案と家畜改良増殖法改正案を審議、採決し、全会一致で可決した。畜産に影響を与えるアフリカ豚熱の侵入を防ぐため、輸入禁止畜産物の所持者の入国を阻止する制度を早急に検討することなどを盛り込んだ付帯決議も全会一致で採択した。
付帯決議では、国が主導的に精液・受精卵の流通を管理する仕組みの構築を推進することも要望。……
2020年04月01日
食品ロス削減 着実に“一歩” 業者、消費者、農家「できること」から
食品ロス削減に向けて、農家や小売り、飲食店、消費者、協同組合、自治体などそれぞれが取り組む“小さな一歩”が鍵を握る。31日に閣議決定された政府の基本方針でも、それぞれが役割を果たし、連携する重要性が示された。専門家は「各自の実践と連携が食品ロス削減につながる」と呼び掛ける。(本田恵梨)
基本方針を閣議決定 規格外の活用容量適正化も
政府は31日、食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減に向けて、具体的推進方法や農業者、食品業者、消費者などそれぞれの役割などをまとめた基本方針を閣議決定した。農林漁業者や食品関連事業者、消費者の役割と行動を明確化した。国の基本計画に基づいて、都道府県と市町村が推進計画を立てる。
基本方針策定は、昨年10月施行の食品ロス削減推進法に盛り込まれていた。消費者庁や農水省、環境省などと有識者でつくる食品ロス削減推進会議が議論して案を提示した。基本方針では農林漁業者や食品業者に対し、①規格外や未利用の農林水産物の活用②食品製造時に生じる端材や型崩れ品の有効活用③保存容器包装の工夫による賞味期限の延長④消費実態に合わせた容量の適正化──などを求めている。
商品棚「手前から」 期限切れ対策コープこうべ
「すぐに食べるなら、手前から取ってね!」。神戸市の生活協同組合コープこうべは、手前に並ぶ販売期限が迫った商品を選んでもらうよう店舗で呼び掛ける「てまえどり」作戦を展開する。ポスターを全159店舗に掲示する。もともとは、古い食品から買うことが必要だと感じていた組合員有志が、手作りのPOP(店内広告)を店舗に持ち込むなどしていた。
この店舗単位で自主的に始まった活動が、コープ全体に広がった。神戸市と2018年10月の1カ月間、市内の34店舗で販売期限が近い商品の購入を促す「てまえどり」キャンペーンを試行的に実施。棚の手前に並べた販売期限が近い商品を選んでもらおうと、店内にポスターを掲示して呼び掛ける他、買い物籠にも同様のステッカーを貼った。値引きのタイミングや発注の見直しなども併せて行い、廃棄量を前年同月に比べ1割以上減らした店舗もある。
19年10月からは、コープこうべ単独で市外にも取り組みを広げ、「てまえどり」のポスター掲示などを全店舗で行う。買い物に訪れた神戸市の山本信子さん(71)は「ポスターを見るまでは特に意識して選んでいなかったが、良い取り組みだと共感した。今は、きょう食べる分は手前から取るようにしている」と話す。
コープこうべ環境推進の井野健太郎環境担当係長は「事業者の都合を押し付けるのではなく、組合員と共に取り組むことが大事。協同組合の基本である助け合いの力を生かして取り組んでいきたい」と意気込む。
食べ残し持ち帰り ごみなしレシピ 天気で製造量調整 自治体やJA
420自治体が参加する食品ロス削減を進める「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」によると、各地で創意工夫が広がっている。同一商品で前回納品したものより古い商品は納品できない日付順納品、賞味期限が残り3分の1を切ると店舗から撤去されるといった“商習慣”と呼ばれるルール見直しや、外食産業の食べ残しの持ち帰りサービス、小盛りや小分けメニューの活用など、できることは多い。家庭での食材の使い切りや生ごみ削減も重要な対策だ。
富山市の食生活改善推進委員、舘川敬子さん(66)は、使い切れるレシピ開発や生ごみを出さない料理を地域に広めている。舘川さんは、富山県が取り組む余った食材を持ち寄っておいしい料理にしてパーティーなどで楽しむ「サルベージ・パーティー」を推進するサポーターの一人。「新型コロナウイルスの感染が終息したら、サルベージ・パーティーを開きたい。地域の身近な人と楽しんで、食品ロスを削減したい」と話す。
同県では国の基本方針決定に並行し、JAなど生産、流通、消費者、行政、有識者などと食品廃棄物削減に向けた県民会議を開いてきた。4月上旬にも推進計画を決定し、地域ぐるみで対策をする。
福岡県JAむなかたの「米粉パン工房姫の穂」では、天気予報を踏まえて製造量を調整する。雨天だと来客数が減ってしまうためだ。完売する量をいつも見通して製造し、売れ残りを5%以内に収めているという。同店は「食品ロス対策だけでなく、経営的にメリットは大きい」と話す。
「当事者意識」が運動の鍵
全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会の会長で環境カウンセラーの崎田裕子氏の話
基本計画では、それぞれ役割を果たす必要性と、消費者や事業者などが協力、連携する重要性の両方がうたわれている。例えば外食時の食べ残しの持ち帰りでも、消費者の理解がなければ広がらない。農家やJAが規格外の農作物を有効活用しようとしても、単独では流通や経費、販路の問題もある。自治体が各自をつなぐ役割を果たし、地域ぐるみで食品ロス削減を進めていくことが鍵を握る。食を生み出す生産現場の農家やJAにも当事者意識を持って関わってほしい。
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2020年04月01日
全国の農地情報 デジタル地図へ集約 農水省22年度から一部運用
生産者 申請一度で
農水省は、全国の農地情報のインターネット上での一元管理に乗り出す。行政機関や農業団体がばらばらに管理してきた農地情報を集約し、同省の地図データと組み合わせて「デジタル地図」を作成。2022年度から一部機能の運用を始める。生産者は補助金などの申請にかかる労力が大幅に減る他、将来的には農業機械の自動運転の活用などにもつなげる。
「デジタル地図」は、各機関が持つ情報をひも付けして一元管理する。……
2020年03月31日
TPP・日欧・日米 大型3協定新年度入り 4月 関税さらに下げ 乳製品は輸入枠拡大
日米貿易協定と環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が4月1日、新たな年度に入り、関税率がさらに下がる。牛肉は26%台から25・8%となり、豚肉の関税も下がる。小麦や乳製品の輸入枠は年間数量が拡大。市場開放が進む中、米国との追加交渉やTPP加盟を目指すタイなど新たな交渉の動向も焦点になる。
協定の関税や輸入枠は毎年4月に切り替わる。TPPと日欧EPAは3年目、日米貿易協定は2年目に入る。
牛肉と豚肉は、3協定加盟国からの輸入量が大部分を占める。牛肉は、関税削減ルールを踏まえて19年度は税率が異なっていたが、20年度は25・8%でそろう。TPPのセーフガード(緊急輸入制限措置、SG)の発動基準は上がる。
豚肉は、高価格帯にかける従価税が1・7%に下がる。差額関税制度では、高価格と低価格を合わせて課税額を抑える「コンビネーション輸入」が主流。1キロ当たり524円の分岐点価格に調整した場合の最小課税額は約9円。27年度には無税になる。
小麦はTPPのオーストラリア、カナダ向けと、日米協定の米国向けの輸入枠がそれぞれ拡大。マークアップ(輸入差益)も削減される。
EUが強みを持つソフト系チーズは輸入枠が600トン拡大し、枠内税率も削減。33年度には3万1000トンで、枠内税率は撤廃される。
4月以降、新たな交渉が動く可能性もある。日米貿易協定は、4月末までに追加交渉に向けた予備協議を終える方針を共同声明に示している。日米両政府は事務レベルで「複数回協議している」(茂木敏充外相)が、日程調整程度にとどまっているもようだ。
タイは、4月にTPPへの加盟方針を正式に表明する意向。8月の交渉入りの可能性がある。EUから離脱した英国との自由貿易協定(FTA)交渉が始まった場合、日欧EPAで輸入枠を設けた品目の扱いが焦点だ。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、新たな交渉が動くかは不透明だ。「終息後の各国の動きを見据えて、日本側も準備しておかなければならない」(政府関係者)との声もある。
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2020年03月30日