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女性器を舐めるのは健康に良い?

ヴァギナは、ヨーグルトや昆布茶などの健康志向食品に含まれる善玉菌、プロバイオティクスが豊富だ。つまり、ヴァギナは善玉菌の宝庫。あなたが普段から善玉菌の摂取を心掛けているなら、ヴァギナは最高の〈健康食品〉かもしれない。

by Bethy Squires
04 August 2019, 5:00am

Photo via Flickr user Adamknits

知っているひともいるだろうが、ヴァギナには数百億の細菌が存在している。この正式名称は膣内細菌叢だが、個人的には〈プッシー・ポッセ(Pussy Posse)〉と呼びたい。これは1990年代、レオナルド・ディカプリオを筆頭に、ハリウッドで遊び回っていたプレイボーイ集団の呼び名だが、ここで語りたいのは彼の武勇伝ではなく、ヴァギナで悪性の細菌の繁殖や増殖を防ぐ膣内細菌のことだ。7割の女性のヴァギナで主要な力をもつのが、ラクトバチルス属という菌。この菌が乳酸を生成し、膣内pH値を4.5以下に保っている。

ラクトバチルス属の菌は、腸内にも存在する。人間の腸内細菌はプロバイオティクスと呼ばれ、これらの菌は、食べ物の消化からアレルギー、湿疹、アルツハイマー病まで、あらゆるものに影響を及ぼすとされている。腸内細菌の重要性にまつわる研究は枚挙に暇がなく、市場には腸の働きを助けると謳う商品が溢れている。プロバイオティクスは、ヨーグルトなどの食品だけでなく、シャンプーやシェービングクリームなどにも使用されている。

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しかし私は、みんながもっと単純なライフハックを見逃しているように思えて仕方ない。ヴァギナは善玉菌の宝庫だ。普段から善玉菌の摂取を心掛けているなら、ヴァギナを舐めればいいのではないか?

「確かにそうかもしれませんが、実践するひとは少ないでしょうね」というのは、米ミネソタ州にあるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)のヘレナ・メンデス=ソアレス(Helena Mendes-Soares)医師だ。「私自身、そのテーマに取り組んだ研究はひとつも知りません」。なぜないのか、私にはわからない。

ヴァギナは善玉菌の宝庫だ。普段から善玉菌の摂取を心掛けているなら、ヴァギナを舐めればいいのではないか?

膣液が有効なプロバイオティクスとなるには、充分な量の善玉菌を含んでいる必要がある。カナダとイタリアの規定では、一食あたり10億CFU(コロニー形成単位:生きて増殖できる微生物の数)だ。さらに、これらの菌は胃酸によって溶かされることなく、生きたまま腸の下部(善玉菌が生息する場所)に到達しなければならない。

では、〈ヴァギナ一食分〉にはどれくらいの菌が含まれるのか。また、それは具体的にどのくらいの量になるのだろう。 メンデス=ソアレス医師によると、膣液1グラムに含まれるラクトバチルス属の菌は、約10万〜1億個。つまり、1回のオーラルセックスで必要なプロバイオティクスを摂取するには、10〜1万グラム(=10kg)の膣液を飲み込む必要がある。10グラムなら大したことはないが、10kgは無理そうだ。

仮に、あなたが善玉菌が豊富な膣の持ち主で、あなたのパートナーが飲み込まなければいけない量は、10グラムだけだとする。その10グラムが生きたまま腸に到達したか、どうすれば調べられるのだろう。2005年の研究では、胃液中のブドウ糖が、胃腸でラクトバチルス属の菌を守る働きをすることがわかった。膣液に含まれるブドウ糖の量は不明だが、直前に何かを摂取することで、胃液中で必要な糖を補うことはできる。さらに、ラクトバチルス属の菌はもともと耐酸性なので、ブドウ糖の助けがなくても、口から腸に到達できる可能性はある。

しかし、ここで別の問題が浮上する。他人のプロバイオティクスをそのまま摂取すると、細菌汚染のリスクがあるのだ。オーラルセックスのさい、「生殖器に存在する別の菌が伝播するかもしれません」とメンデス=ソアレス医師は指摘する。「良性と悪性、両方です」。つまり、ラクトバチルス属の菌と同時に、別の悪玉菌を摂取する可能性があるのだ。もちろん、性病の危険も考慮しなければいけない。

また、プロバイオティクスという言葉自体に引っかかりを覚えるひともいるかもしれない。感染症専門医/ポッドキャスターのマーク・クリスリップ(Mark Crislip)は、2009年のブログ記事で、プロバイオティクス業界全体に大きな疑問を呈した。彼の主な主張は、プロバイオティクスに含まれるラクトバチルス属の菌やビフィズス菌は、必ずしも人間の体内の菌と同じ種類とは限らない、というもの。しかしこの点に関しては、膣液は、プロバイオティック・ヨーグルトの〈Activia〉と同じといえる。人間の体内で発見された菌なのだから、体内の他の菌と同じ種類なのは当然だ。私たちは〈供給元〉に直行しさえすればいい。

ActiviaのCMでジェイミー・リー・カーティス(Jamie Lee Curtis)が宣伝するほど、プロバイオティクスに効果があるかはまだわからない。多くの研究が、プロバイオティクスが過敏性腸症候群や抗生物質による下痢など、胃腸の問題に有効であることを証明しているが、延命効果など、長期的な効能にまつわる科学的な証拠は、まだまだ少ない。いっぽう、ラクトバチルス属の菌のコレステロール低下作用にまつわる予備研究は、すでに実施されている。心臓疾患は米国の死因第1位なので、この研究はきっと有意義なものになるだろう。期待は大きいが、効果を実証するにはさらなる研究が必要だという。

今のところ、プロバイオティクス賛成派と反対派で意見が一致しているのは、プロバイオティクスは、定期的に摂取しさえすれば体内にとどまる、ということだ。ヴァギナもあらゆる食品と同じで、毎日の食事に取り入れることが、健康へのカギなのだ。

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ヴァギナ
健康法
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ヴァギナのニオイを考える

どんなニオイが〈普通〉なのか、専門家に聞いた。

by Bethy Squires
14 November 2019, 8:58am

Brandon Bird

「すべての幸福な家庭は似ているが、すべてのヴァギナはそれぞれのニオイがある」と言ったのはトルストイだっただろうか。

そう、ヴァギナは本来ニオイのするものだ。とある研究によると、ヴァギナのニオイを構成する〈臭気分子〉と呼べるものは全部で2100種類も存在しており、つまり、その極小の〈ニオイ物質〉が合わさって、それぞれのヴァギナ独自の、香りのブーケが生み出されている。

そのニオイ物質の原因となるのは細菌だ。

「それぞれのヴァギナのニオイは、人間が代謝するものと細菌が代謝するものが融合して発生しています」と説明するのはマヨ・クリニックのマリア・メンデス・ソアレス(Maria Mendes Soares)博士。人間は自分が食べたものでできており、ヴァギナのニオイも然り。Redditには、タマネギやニンニクを食べたときはヴァギナもそれと同じようなニオイがする、という女性からの投稿もみられる。これは誰も公にしていないだけで、まったく普通のことだ(ただ、タマネギやニンニクなどのニオイはヴァギナからの排出物ではなく、尿に混入している可能性のほうが高い)。

我々のヴァギナのふだんのニオイはどうだろう?

ヴァギナには腸や口内と同じく、何十億もの細菌が生息している。博士によれば、その〈膣内フローラ〉と呼ばれるマイクロバイオータは、ヴァギナのpHを4.5程度、すなわち弱酸性に保っており、そのため若干酸っぱいようなニオイがするという。また、身体のなかでも隠れた場所のため、カビ臭いようなニオイもする。どちらも強烈に香ることはない。ヘザー・ループ博士はWebMDのブログで、ニオイが届く範囲は30cm程度、と言及している。それが普通だ。

しかし、どんなニオイがしても普通、というわけではない。魚のようなニオイがするなら細菌性腟炎が疑われ、医者に診てもらうべきだ。あるいは腐ったようなニオイがするなら、タンポンやタンポンの破片が膣の奥深くに入ってしまっているのかもしれない。こちらも、まずは医者に診てもらおう。珍しいケースではない。

メンデス・ソアレス博士によると、膣内微生物の主要な細菌はラクトバシラス属で、プロバイオティクス(善玉菌)の一種。病原体の定着を阻害するので、腸や膣のなかには必須の菌だ。膣内微生物叢には他の細菌も含まれている場合もあるが、5人中4人のヴァギナにおいては、「ラクトバシラス属の細菌1種が90〜95%を占める」と博士は説明する。「ラクトバシラス属は、糖を発酵させ乳酸を産生します。そのおかげで、ヴァギナは常に弱酸性を保てるのです。ラクトバシラス属で発酵されるビールやヨーグルトもあります。ビール好きたちは、乳酸の味を〈やわらかく心地よい酸味〉と表現していますね」。また、乳酸で発酵されたビールは、独特のカビ臭さを特徴とする。

ここで、「ラクトバシラス属の菌がビールやヨーグルトの発酵に使用されるのであれば、ヴァギナの細菌を使ってそれらを作ることも可能なのでは?」と考えるひともいるだろう。そして当然のごとく、ヴァギナの細菌を使ったビールやヨーグルトは、すでに存在している

たとえば、2015年にはウィスコンシン大学の博士課程の学生が、自らの膣内フローラに生息していたプロバイオティクスをスターターとして使用し、ヨーグルトを発酵させた(ただ、善玉菌と悪玉菌をしっかり分離させるには、微生物学研究に適した実験設備が必要なため、家庭での同実験は推奨されない)。

また、〈The Order of Yoni〉というポーランドのビールメーカーは、ヴァギナの細菌を使用して発酵させた〈Bottled Instinct〉という酸味のあるエールを発売。この細菌は、チェコ人モデルのアレクサンドラ・ブレンドロヴァ(Alexandra Brendlova)のもので、彼女の清潔や純潔は保証されている。〈IndieGogo〉において、クラウドファンディングも行なった。

というわけで、もしビール好きの彼氏がクンニに乗り気じゃなかったら、バドワイザーのボトルで抜いてろ、くらいのことは言ってもいいはずだ。

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Image via Flickr/bec.w

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ペニスのサイズは男性の健康に影響する?

ペニスのサイズは男性の自己肯定感、健康にまつわる選択など、様々な要素に影響を及ぼす。

by Mack Lamoureux; translated by Ai Nakayama
06 March 2020, 7:00am

Photo via Pexels. 

ペニスのサイズ。それはすべての男性が気にするトピックだ。

自分のペニスはそれなりに大きいのか? それとも小さいのか? 〈それなりに〉って何だ? ポルノで観るくらいのサイズか? 待てよ、あれが〈普通の〉サイズ?!

大きなペニスは、2018年に話題になった〈巨根パワー(Big Dick Energy)〉という言葉で世間の集合的意識の中に再び浮上してきた感がある(それまでは消え去っていた、というわけではないが)。多くのひとが指摘している通り、強いパワーを行使するためにデカいペニスを有する必要はない(そもそもペニス自体が必要ない)。しかしただのペニスではなく、〈巨根〉の場合、何らかのパワーをもたらすようなのだ。

自信たっぷりに道を歩く男たちとそのペニスのサイズのあいだに相関関係はある、という仮説を証明しようとしたアカデミックな研究もある。2018年6月、ミズーリ州立大学(Missouri State University)のアリシア・ウォーカー博士は、数千ものペニスを収めた写真と数百以上のインタビューをもとに、ペニスのサイズと男の自信とのあいだの相関関係を見出す研究を行なった。

今回、ウォーカー博士を取材し、その研究について、そしてペニスサイズについて判明していることについて話を聞いた。

──研究について具体的に教えてください。
ウォーカー博士:本研究は、ペニスのサイズと自己肯定感、恋愛への積極性、コンドームの使用、自己の性的能力をどう捉えているか、などといった要素とのあいだに相関関係があるのかを探ることが目的です。それらを研究し、男性が生活を営むうえでそれらがどう影響しているか、ということです。

──この研究で実現したいことは?

このテーマについての会話、議論を活発化させたいですね。世の中には、身体醜形障害に苦しむ男性が多くいます。また、実際はそんなことないのに、自分のペニスは小さい、あるいは平均以下だと考える男性も多いです。サイズが平均以下だということが、彼らと世界との関わりかたに影響している場合も多々あるんです。

例えば、私が話したひとのなかで、10年以上、身体的な問題で医者にかかっていない、というひとがいました。医者の前で裸になりたくないから、と。また、ペニスのサイズのせいで誰も自分に関心を持ってくれないだろう、と思い込み、恋愛的なアプローチをしたことがない男性もいました。サイズについて気に病んで、自殺を図った男性もいます。

これはかなり深刻な意味を持ちます。こういう話を聞くとみんな笑って「ウケる〜!」という反応をしますが、実際はウケる話じゃないんです。かなり深刻です。なぜなら、自分や自分の身体をどう認識しているかが自分の選択に影響するんですから。すごく重要な問題です。

──社会的に、ペニスのサイズはどう認識されているのでしょう。
私たちはサイズをすごく気にします。サイズに関するジョークはいたるところで耳にするし、大きければ大きいほど崇拝されます。例えばポルノでも、重要なモチーフになっていますよね。ポルノ男優のペニスのサイズは一般人よりもずっと大きい。つい最近も、〈巨根パワー〉という言葉が話題になり、ハッシュタグがトレンド入りしたほどです。そして、巨根の男性は優れており、自信に満ち溢れている、という言説がまかり通っています。社会的に、「大きければ大きいほどいい」とされ、小さいペニスの男性は劣っているとされるんです。

──その言説に戦いを挑んでいるわけですか?
そうできたら、と思っています。

──この研究の具体的な段取りを教えてください。どういう手続きを踏むのでしょうか。
本研究は、大きくふたつのパートに分かれます。被験者にはどちらか、あるいは両方に参加してもらいます。ひとつめはインタビューのパートです。そこでは写真が撮られることはありません。私との会話のなかで、彼らの経験や感情、そしてペニスのサイズが自己認識の仕方や自分のとる行動/とらない行動に影響を与えたか、などについて答えてもらいます。

もうひとつのパートでは、写真を撮影してもらいます。目的以外の用途では使いません。ペニスのサイズを測定するときはいわゆる〈ボーンプレス(Bone-Press)〉という測定法(=定規を恥骨にしっかり当てる方法)を採用しています。全員に同じ測定法を実施してもらっています。そうやって測定したことがわかるようにペニスの写真を送ってもらえば、それが正しいとわかります。こちらで測定法が正しいことを確認したら、その写真は処分します。参加者は22歳以上の男性のみです。

──研究の進み具合はどうですか?
現在、2000人以上が参加してくれていて、作業が完了した人数はちょっと今ははっきりとはわからないんですが…。インタビューは30人終わりましたが、まだこれからのひともいます。

──インタビューには、大きいペニスのひとのほうが答えてくれやすいのでは?

実際は逆なんです。興味深いです。男性はみんな同じことをいうんですよ。「平均以上のひとのサンプルしか集まらないんじゃ?」って。実際は違います。平均以上のひとのほうが少ないです。平均かそれ以下のひとよりもずっと。

──現時点で予備調査結果として何か判明していることはありますか?
先ほど話した恋愛関係について、自殺未遂についての問題ですね。医師とも話をしました。例えば、自分のペニスが小さすぎてサイズが合わないだろうから、とコンドームを買ったこともないひとが複数人いました。ひとつのパターンですね。サイズが彼らの行動の原因になっているので、ここにサイズが影響していると考え始めていますが、残念ながら平均以上のサイズの男性の数が足りず、まだ結論を出すには至っていません。

──そもそもこのプロジェクトを始めたきっかけは?
この研究は6年前から構想していました。もともと、自分の男性のパートナーについて、「アレが大きいひとがいい」という女性の多さに気づいたことがきっかけです。それで興味を抱いたんです。彼女たちは何を求めているんだろう、と疑問に思って。実際、彼女たちの望みに共通していたのは、自己肯定感と自信をもった男性を求めていた、ということだけでした。彼女たち全員がパートナーに求めていた性質は、それだけだったんです。

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男性は女性よりも恋に落ちやすい?

恋愛において、男性は女性よりも〈急ぐ〉ことが明らかに。

by Jessica Pan
28 November 2019, 5:00am

Illustration by Ben Thomson

ストレートの女性が、〈自分は何者か〉〈自分はどこへ向かうのか〉を探るなかで、向こう見ずな恋に飛びこんでいく…。これは長らく誤解されてきたイメージだ。研究によれば、ヘテロセクシュアルの男性は、女性よりもずっと恋に落ちやすい(あるいは恋に落ちたと信じやすい)という。

それを証明したのが、172名の大学生を対象に実施されたある研究だ。「男性は、女性よりも先に恋に落ちたことを報告し、その想いを口にした。この結果は、世間一般のイメージとは異なり、女性が盲目的な恋に溺れる可能性はそこまで高くないことを示している」

この研究結果は、学生たちの先入観と大きく食い違っていた、と本論文の共著者である心理学者、マリッサ・ハリソン(Marissa Harrison)は証言する。「一般的に、女性は感情的だとされています。時に感情が暴走したり、軽はずみな行動に出る、と。今回の研究に参加した学生たちも男女ともに、女性のほうが男性より先に恋に落ち、『愛してる』と口にする、と予想していました」

ロンドン在住の心理学者、ニール・ラモント(Neil Lamont)も、男性のほうが一般的に物事を割り切って考え、他人との深い関わりを避けるというイメージがあると考えている。「でも、相手との有意義な関わりは、女性と同様、男性にとっても重要です。たしかにこれまでの社会的、文化的規範は、男性に力強さや強靭さを求めてきたかもしれませんが、実際には、男性が充実した生活を送るには、有意義で愛情に満ちた関係が欠かせません」

男性のほうが気持ちは燃え上がりやすいけれど、目移りもしやすい。

男性のほうが早く恋に落ちる理由について、マリッサは、女性には進化の過程で用心深さを身につけたもっともな理由があるからだ、と説明する。「女性は、無意識のうちに男性よりも恋愛を後回しにしているのだと思います。誤った男性を選んでしまったら、女性が被る生殖学的な損失は、男性より遥かに大きい。男性は1日数百万個もの精子をつくることができますが、女性の卵子の数には限りがありますから」

「もし女性が子育てに非協力的な、信頼できないパートナーに愛を誓い、彼の子どもを授かったら、時間的にもリソース的にも損失が大きくなります」

ロンドンの医療機関〈London Medical Centre〉の心理学者、イングリッド・コリンズ(Ingrid Collins)は、このような男性の傾向は、動物界にもみられる性質を示している、と説明する。「男性は基本的にハンターで、すぐに興奮状態になりやすい。いっぽう女性は、長期的な安定を重視する傾向にあります。そちらのほうが子育てにとって大切ですから」

ロマンチックな幻想を打ち砕くにはもう充分かもしれないが、素早く恋に落ちることは、縄張りを主張する手段にもなりうる、とニールは主張する。「男性はこの衝動のおかげで早急に契りを交わすことができ、惚れやすいがゆえに、1回で行為に至るためのプレッシャーが少なくなるのです。それに比べて女性は、もっと身体的、感情的に相手に尽くすことを重んじる傾向にあります」

相手に想いを伝えることに関しては、前述の通り、女性のほうがリスクを回避しようとするので、男性が最初に伝える場合が多い、とニールは考えている。「女性たちは、相手との関係に安心感をもてるまで、心の奥底にある感情を口に出そうとはしません。大切な相手に愛を打ち明ければ、自分の弱みをさらけ出すことになる。相手も同じように想ってくれているという保証はありませんから」

進化論的な理由だけではない。男性は、優位に立つように教えこまれているから女性より先に想いを伝えようとする、という可能性もある。「自己主張したり、主導権を握るのは〈男性の特徴〉と捉えることもできます。彼らの行動は、社会的規範を反映しているのかもしれません」

しかし、ヘテロ男性が恋を自覚したからといって、その恋が長続きするとは限らない。「セラピストとしての経験からいうと、男性のほうが気持ちは燃え上がりやすいけれど、目移りもしやすいです」とイングリッドは説明する。

マリッサの研究は、ヘテロ男性の恋が冷めやすいかどうかは調査しなかったが、男性は女性のパートナーよりも次の恋愛への切り替えが早い、と彼女は考えている。「たとえば、ひとりの男性が同時期に5人の女性とセックスしたら、5人全員が妊娠する可能性があります。いっぽう、ひとりの女性が5人の男性と同時期にセックスしても、彼女が妊娠するのはそのうちのひとりの子どもだけです」

しかしマリッサは、生存本能は浮気の理由にはなりえないし、理由にするべきでもない、と言明する。「現代において、男女が愛を誓い合ったら、彼らは前頭葉のはたらきによってその誓いを守ることができる。つまり、進化した人間にとって、衝動的な欲求はパートナーを裏切ったり捨てたりする免罪符にはならないんです」

つまり、こういうことだ。〈種の存続〉や進化論は、男性の浮気の言い訳にはならない。彼らはもはや原始人ではないし、彼らの脳は衝動を制御できるまでに進化を遂げたのだから。

とはいえ、男性は先に「愛してる」と伝えたい衝動は抑えられないらしい。

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あえて〈2番目の女〉になりたがる女性たち

交際のかたちが多様化するなかで、秘密の情事にふける〈不貞趣味〉の女性たち。魔性の女というイメージの裏に隠れた、私たちの固定観念とは。

by Abby Moss; illustrated by Kim Cowie
13 February 2020, 6:32am

ほとんどのひとにとって、パートナーの浮気は最低なものだ。実際に経験したひとも多いだろうが、パートナーの浮気の後、関係が続こうが続かまいが、裏切られたという気持ちはなかなか乗り越えられない。

しかし、誰かのパートナーを欺くタブーを、恋愛のスパイスと捉える女性もいる。特定のパートナーのいる男性を誘惑し、〈魔性の女〉と呼ばれるのを愉しむ女性たちだ。彼女たちはマッチングアプリやウェブサイトを介して相手のいる男性と知り合い、デートやセックスに誘い、パートナーを裏切って秘密のランデブーを続けるようそそのかす。このフェティッシュは〈不貞趣味〉と呼ばれており、私が取材したひとびとによれば、モノガミーの関係を築いているヘテロセクシュアルの男性を恋愛対象にしているストレートの女性に多いという。

2017年の研究によれば、浮気をするひとの数はこの10年で着実に減少し、ミレニアル世代の浮気も上の世代より少なくなっているという。これには、浮気の定義が変わったことが関係しているかもしれない。近年、オープンリレーションシップや倫理的ノンモノガミーという交際スタイルが増加しており、米国人の5人にひとりがノンモノガミーの関係を築いたことがあるという。週20万人が利用する〈3P用Tinder〉と呼ばれるアプリFeeldは、ユーザーの大半が一緒にアプリを閲覧するカップルだ。ここで重要なのは、オープンリレーションシップと浮気の違い、すなわち〈嘘〉だ。

私が初めてこのフェチについて知ったのは、ある女性が私の7年来のパートナーにFeeldでアプローチしてきたときのこと。彼女はDMで求める相手の条件を提示した。それは特定のパートナーがいて、彼女とホテルで会ってセックスしてくれる男性だ。パートナーに密会を気づかれないようにすることが必須条件だ、と彼女は説明した。さらに彼女は、自分の〈寝取られ〉を覗き見る趣味のある夫に送るために、映像を撮りたがった。

私のパートナーはその誘いを丁重に断り、DMを私に見せてくれた。私が最初に感じたのは怒りだった。同意の上なら他人のフェチを咎めるべきではないが、彼女の場合は違う。このフェチは不誠実で、誰かに精神的苦痛を与える可能性がある。当たり前だが、浮気をされる側の女性は同意していない。私はこの嗜好についてもっと詳しく調べてみることにした。このフェチには見かけ以上の何かがあるのかもしれない。それに、浮気の当事者は必ずふたりいる。ここで判断を下すのは早計だろう。

Redditのアダルト向けサブレディットには、多くの不貞趣味の女性たちがコメントを投稿している。「コソコソしたり、あのワクワク感や秘密がたまらない」とあるユーザーはいう。しかし、自らの行為への罪悪感を吐露する女性も多い。「ときどきふと我に帰る」というコメントや、「罪悪感がどっと押し寄せてくることもある」という声もあった。

私は、ニューヨークの会員制セックスクラブ〈NSFW〉でコミュニケーションディレクターを務めるメリッサ・ヴィタール(Melissa Vitale)に連絡を取った。NSFWは、必ず同意を得ることをポリシーにしているクラブだ(スローガンは「同意はセクシー」)。メリッサに、不貞趣味についてどう思うか、私のように不快に感じるのか訊いてみた。「私は、恋愛にはカルマがあると思っています」とメリッサは電話で語った。「でも、浮気は必ずパートナーの落ち度であり、いわゆる〈他の女〉の落ち度ではない、というのが私の考えです。結局のところ、責任を負うべきはパートナーがいる側なんです」

メリッサは不貞趣味を持つ女性に何度か会ったことがある。彼女自身はこの嗜好に魅力は感じないが、動機は理解できるという。「浮気とはタブーであり、禁断の関係です。魅力は浮気そのものではなく、見つかるかもしれないというスリルなんです。一種の反逆のようなものです」

メリッサは、アマンダという女性を紹介してくれた。彼女は18年にわたって様々な男性との浮気を楽しんできたが、2年前にすっぱりとやめた。今は倫理的ノンモノガミーの関係だけを築いているという。私のパートナーを誑かそうとした不貞趣味の女性のことを打ち明けると、私のような怒りに満ちた反応は嫌というほど見てきた、とアマンダは語った。

「最初は激怒するのが普通です」と彼女はメールで述べた。「『どうして他の女にそんなことができるの?』というセリフは何度も聞きました。浮気をする側が悪いことはずっとわかっていました。私も浮気の共犯者のような気でいたけれど、結局は彼らと元のパートナーの問題なんですよね」

では、彼女にとって、浮気相手でいることの魅力は何だったのだろう。なぜアマンダはパートナーのいる男性たちと何度も関係を持ってきたのだろうか。「この関係の刺激になるのは、見つかるかもしれないという不安、または浮気相手とそのパートナーの秘密を握っているという不安です。それがセックスそのもの以上に深い関係を生み出すんです」

私はゲイ、クィア、ノンバイナリーの友人にも、不貞趣味について訊いてみたが、このフェチはヘテロノーマティブな関係に限られるらしい。アマンダの場合もそうだ。彼女が約20年で関係を持ったのは、ヘテロセクシュアルでおそらくモノガミーの男性ばかりだった。

セックスコーチ/性教育者のジジ・イングル(Gigi Engle)は、著書『All the Fucking Mistakes: a Guide to Sex, Love and Life』でフェミニストセックスや女性の快感、ダブルスタンダードについて解説している。彼女に不貞趣味やその嗜好に惹かれる女性について、見解を求めた。「そもそも〈他の女〉という概念は、男性の性衝動は抑え込んだりコントロールできないとする社会通念から生まれたものです」と彼女はメールで説明した。「もちろんそんなことはありませんし、私たちは誰しも交際において自分の行動に責任を負うべきです」

セックスの話題になると、世間はいまだに女性を非難したがる。女性は、男性よりずっと性にまつわる汚名を着せられる可能性が高いのだ。Feeldの女性を真っ先に悪者扱いした私自身も、この思考に陥っていたという点で非があることに気づいた。男性も同じように自らの意志で行動したにもかかわらず、女性にすべての責任をなすりつけるのは、明らかに間違っている。パートナーを欺く行為は決して褒められたことではないが、魔性の女という時代遅れなイメージは、改めて見直す必要がある。その手段のひとつが、不貞趣味なのかもしれない。

@mossabigail

This article originally appeared on VICE UK.