2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、ともに過去最高を更新した。厚生労働省が30日発表したまとめで分かった。17年に比べて女性は0.05歳、男性は0.16歳延びた。過去最高の更新は女性が6年連続、男性は7年連続。長寿社会の深まりにより、社会保障など幅広い分野の改革が求められている。
厚労省は「日本人の三大死因であるがんや心疾患、脳血管疾患などの死亡率の低下が平均寿命を延ばしている。健康意識の高まりで、さらに寿命が延びる可能性がある」と分析した。
平均寿命は死亡率が今後も変わらないと仮定し、その年に生まれた0歳児があと何年生きられるかを表す数値。将来の社会保障、経済政策の方向を決める指標になる。
18年生まれの日本人が75歳まで生きる割合は女性が88.1%、男性が75.6%。90歳まで生きる割合は女性が50.5%、男性が26.5%。半数が生存していると推定される「寿命中位数」は女性で90.11歳、男性は84.23歳だった。
がん、心疾患、脳血管疾患で死亡する確率は女性で45.52%、男性で50.06%。仮にこれらの病気で亡くなる人がゼロになれば、女性は5.55歳、男性は6.7歳、平均寿命が延びるという。
平均寿命が延び続ける一方、18年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子の推計数)は1.42にとどまり、同年に生まれた子どもの数は91万8397人で過去最低を記録した。今月に総務省が発表した人口動態調査でも日本人の人口は10年連続で減少している。
また、自立して生活できる年齢を指す「健康寿命」は16年時点で女性は74.79歳、男性は72.14歳。平均寿命とは大きな開きがあり、高齢者が健康で暮らせる長寿社会を実現するための課題は多い。
社会保障制度に詳しい法政大の小黒一正教授は「社会保障の改革が急務だ。現状のままでは医療費や介護費の国庫負担が増えるだけでなく、1人当たりの年金受給額も実質的に下がる。高齢者に貧困が広がるだろう」と指摘。その上で「社会保障の支え手を増やす必要がある。高齢でも働ける労働市場の整備や、貯蓄や投資など老後を見据えた資産形成の促進が大切だ」としている。
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