新型コロナウイルスに感染する医療スタッフが欧米で相次いでいる。日本でも今後、深刻な問題になりかねない。重症化した感染者を救うためにも懸命に治療に取り組む人たちも守らねばならない。
感染が急速に拡大したイタリアでは三月下旬段階で、六千人超の医療従事者が感染し、医師や歯科医師ら四十人以上が死亡した。
欧米では治療で疲弊した医師らが感染し、重症化して亡くなる例が後を絶たない。
患者数が医療機関の受け入れ能力を超え十分な治療を施せなくなる医療崩壊は避けねばならない。日本政府の専門家会議は一日、爆発的な感染が起こる前に医療崩壊は起こり得るとあらためて警鐘を鳴らした。特に、東京や愛知など五都府県に早急な対応を求めた。
医療スタッフが感染すると医療現場の人材が減り医療崩壊を加速させる悪循環に陥る。医療態勢を守るためにも医療スタッフの安全は確保せねばならない。
欧米の医療現場からは防護服やマスク、手袋などの不足が指摘されている。医療スタッフが自分の身も守れないのでは、治療に専念できるわけがない。日本政府は医療機関への優先的なマスク供給などを実施するが、防護に必要な物資はより迅速に提供すべきだ。
耳鼻咽喉科など延期や中止ができる手術は減らし、感染リスクを下げる方針を決めた医療機関もある。自宅で受診できるオンライン診療の拡大も医療スタッフの感染リスクを下げられる。取り組みを広げたい。
患者が急増した場合は一般の医療機関でも受け入れが始まる。だが、そこで働く人は感染症の対応に慣れているわけではない。感染者の受け入れは大きな不安を抱える。政府は対処法など専門家のアドバイスを受けられる態勢も整えてほしい。
軽症者は宿泊施設や自宅での療養に切り替える対応も医療現場の負担軽減になる。自宅では家族に感染させないため、家族には宿泊施設に移ってもらうなどの対応も考える必要がある。
政府は公的機関の持つ研修施設など宿泊できる施設を確保すべきだ。自治体は患者の重症度に応じて受け入れ医療機関を振り分ける対応への準備を進めてほしい。
離職中の看護師人材などを活用する必要性も指摘されている。子育てや介護による離職なら、保育所や介護サービスの確保も欠かせない。医療を支えるために社会のあらゆる資源を投入すべきだ。
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