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岐阜

氷点下、巣立ち見守った親心 多治見の子育てツバメ、越冬記録

巣立った後、親鳥(右)に同伴してえさの取り方を学んでいる若鳥=2019年12月31日、多治見市平和町で(土岐川観察館提供)

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ツバメの写真を展示した富田さん=多治見市平和町の土岐川観察館で

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 今冬、多治見市内のマンション駐車場で季節外れの子育てをしたツバメ。県内で真冬に初めて確認されたこのツバメの営巣を、市土岐川観察館アドバイザー富田増男さん(72)が四カ月間にわたって撮影した写真や映像の展示が一日、同市平和町の観察館で始まった。三十日まで。

 富田さんは、最初にツバメが見つかった昨年十二月五日から、親鳥とみられるつがいが巣に戻ったのが分かった三月十八日まで毎日観察を続け、二千枚余りの写真を撮影した。そのうちの約七十枚を展示し、親鳥がヒナにえさをあげる様子の映像なども流している。

 富田さんによると、ツバメのヒナは通常、巣立ってから二週間ほど親に同伴してえさの取り方を学んだ後に親鳥と離れて暮らすようになる。しかし今回巣立った五羽のうち四羽は二週間以内に姿を消したものの、最後の一羽は独り立ちまで一カ月かかった。

 子どもを見送った二羽の親鳥は、二月二十五日にいったんは姿が見られなくなった。越冬のため巣を離れたかと思われたが、三月十三日につがいの片方とみられる個体が、同十八日には二羽とも巣にいるのが確認された。独り立ちまで時間がかかったことや、つがいが巣に戻った理由はいずれもよく分かっていない。

 巣の下に落ちていたふんを調べたところ、硬い殻を持つ体長一~二センチほどの甲虫十二種類を食べていた。歯がない鳥が硬い虫を食べるのが確認されたのは珍しいという。これらの甲虫が土岐川に生息しているかどうかも、これまで未確認だった。

 暖冬とはいえ、二月上旬には氷点下五・二度まで気温が下がった日もあった多治見市。気温が五度くらいになると活動が鈍るという研究があるが、富田さんは「なぜツバメが多治見で越冬しようと思ったのかわからないが、生き物の強さ、適応力を感じた」と語る。「これまで分かっていたことと違うツバメの生態が多く見られた。親子で展示を見てもらい、生き物を観察する面白さを感じてもらえれば」と願う。月曜休館。入場無料。(問)同館=0572(21)2151

◆記者のつぶやき 

 早朝から観察に出かけ、ふんから小さな虫のかけらを見つけ出す富田さんの熱意に圧倒されました。自粛で寂しい春ですが、厳しい冬を越えたツバメたちが飛び回る姿に勇気をもらったような気がします。

 (真子弘之助)

 

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