新型コロナウイルスの感染がさらに拡大しても、国会は休会としない。自民、立憲民主両党が一致した。国会の役割を考えれば当然だ。いかなる状況下でも、行政監視の役割を怠ってはならない。
きのう行われた参院の決算委員会。安倍晋三首相と閣僚らがマスク着用で答弁する姿は今が非常時であることを国民に印象づけた。こうした状況に国会はどう臨むべきか。議会制民主主義の真価が問われる局面である。
自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長がきのう、国会を休会にせず、感染防止策を講じた上で審議を続ける方針を確認した。
感染拡大防止策や国民の暮らしを守る緊急経済対策と関連予算、特別措置法に基づく緊急事態宣言発令の是非など国会で議論すべき案件は山積している。休会を回避し、審議を続けることは当然だ。
その上で注文がある。この際、非常時にも耐えうる国会審議の在り方を検討してほしいのだ。
重い身体障害があるれいわ新選組の舩後靖彦参院議員は、感染拡大を受けて、本会議や委員会への出席を一時見合わせた。舩後氏は人工呼吸器を装着しており、生命に関わる感染の可能性をできる限り排除するためである。
しかし、企業などで一般化しているインターネットを使った会議システムを活用すれば、国会審議や採決への遠隔参加は可能だ。これまでは難しかった妊娠や出産、育児に関わる議員の審議参加にも活用できる。これを機に遠隔参加の可能性を探ったらどうか。
憲法には議員の本会議出席を前提にした規定がある。これが国会審議への遠隔参加ができない根拠となってきたが、憲法制定当時、インターネット技術が想定されていなかったのも事実だ。
最も重要なことはいかなる形でも審議や採決に参加することだ。たとえ国会に参集できなくても、国民の代表として意思表示する機会が奪われてはならない。
安倍首相が実現を目指す改憲四項目には、法律と同じ効力を持つ政令制定権を内閣に与える緊急事態条項の創設が含まれる。
全国民の代表で構成する国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関だ。緊急事態発生時に限らず、国会での議論を経ず、行政の裁量に委ねることは、国会の自殺行為にほかならない。
いかなる状況でも、行政監視や国政の調査という国会の役割を果たす。非常時だからこそ、その意味の重さを確認しておきたい。
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