速さは、ひとつじゃない。BACK NUMBER
<連続インタビュー vol.4>
山田哲人「スピード勝負」
posted2020/03/06 18:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Takuya Sugiyama
「自分の一番の武器はスピードだと思っています。特に短期決戦の時は、僕の場合は『キレをつくる』ことが重要。ジャンプ系の動きを入れたり、ショートダッシュを入れたりして、ひとつひとつの動きの速さを上げていく。僕はランニングシューズのソールはあまり薄すぎない方が好きなんです。地面と近すぎると嫌で、靴の推進力を活かして走る感じですね」
山田哲人は自身最大の特徴である“速さ”について、そう語っていた。
そんな速さを活かして、近年は球界の「顔」とも言える活躍を続けてきた山田だが、昨季は本人としても忸怩たる思いを抱えるシーズンだったという。
「個人はトリプルスリーという目標を掲げていたんですけど、達成出来なくて、チームも最下位という結果に終わったので……。チームとしても個人としても、『悔しかったな』というのが一番に出てきます」
万能打者の象徴である打率3割、30本塁打、30盗塁を同時に達成するトリプルスリー。その偉業をこれまで山田は2015年、'16年、'18年と3度も達成してきた。
史上初の金字塔を打ち立てた山田に対し、他球団からのマークは年々、厳しくなった。どの球団も山田に対しては、万全の対策で臨んでくるようになったのだ。
加えて昨季はそこにヤクルトというチームそのものの不振も重なった。球団史上最多タイとなる16連敗を喫するなど、ペナントレースで最下位に沈んだ。
勝負強さを見せたプレミア12。
ただ、苦しいシーズンではあったが、得たものも無かったわけではない。
「昨季の収穫は、経験値くらいですかね。プレミア12では世界一になれたので、それは普段とは異なる経験だったと思います」
そう本人が言う通り、11月に開催された野球の国別世界一決定戦であるプレミア12では、決勝で韓国相手に値千金の3ランを放ち、チームを世界一に導くなど相変わらずの勝負強さを見せつけた。