速さは、ひとつじゃない。BACK NUMBER
<連続インタビュー vol.5>
岩渕真奈「判断のスピード」
posted2020/03/10 18:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Kiichi Matsumoto
「常に先を予測する“速さ”って、サッカーではとても大事な要素だと思います。私は動き出しの数mの瞬発力は自分の武器だと思っていて、海外の選手たちと比べても戦えるとは思っていますけど、そういった判断の速さがないとフィジカル面の長所も活かせないので」
なでしこジャパンの中核を担うエース・岩渕真奈は、そう言って実に冷静に、サッカーという競技に必要な「スピード」について分析してくれた。
16歳ではじめて日本代表に選ばれた岩渕は2011年からW杯に3大会連続で出場。その豊富な経験から、現在はチームの牽引役を求められている。昨年12月に行われた東アジアE-1選手権では自身初めて日本代表でのキャプテンマークを巻き、チームを優勝に導くと自身も得点王に輝いた。
その一方で、昨季最大のイベントであった6~7月のW杯ではベスト16で敗退。所属チームのINAC神戸でも無冠に終わり、悔しい想いも経験した。
「昨季はチームとしては、代表でもクラブでも物足りない結果になってしまいました。ただその反面、個人としては故障も減って、代表では一番点も獲れましたし、ようやく少し手応えを感じられたシーズンでした」
中堅、そしてリーダーとなった岩渕。
チームでは悔しい結果に終わったというものの、個人でここまでの成長を見せられたのはなぜなのだろうか。
「一言で言えば、責任感ですかね。追い詰められた状況になった時に、『絶対に自分が何とかしないと』と思う気持ちは、以前より強くなったのかもしれません」
世界の頂点を知るかつての主力たちが少しずつ一線を退いていく中で、若手から中堅、そしてリーダーへと岩渕の立場も変わっていった。そんな経緯を経て、結果を出すことへの「覚悟」が、これまで以上に固まっていったということだろう。