元看護助手 再審無罪　地裁「自白任意性ない」　滋賀・患者死亡

　滋賀県東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年、男性患者＝当時（７２）＝の人工呼吸器を外し殺害したとして殺人罪で懲役十二年が確定、服役した元看護助手西山美香さん（４０）の再審公判で、大津地裁は三十一日、「患者が何者かに殺されたという事件性を認める証拠はない」として無罪判決を言い渡した。判決後、記者会見した西山さんは「私を教訓に裁判所も変わらなければならない」と訴えた。

　大津地検の山上真由美次席検事は「有罪であるとの新たな立証はしなかった事案であることも踏まえ、慎重に内容を検討して適切に対応したい」とのコメントを出した。控訴期限（十四日間）までに上訴権を放棄して無罪判決が確定する可能性がある。

　大西直樹裁判長は判決理由で、患者の死因について「致死性の不整脈や、たんの吸引が行われなかったことによる低酸素状態に陥った疑いがある」と認定。自然死の可能性が高いとした。

　殺害を認めた西山さんの自白については「呼吸器のアラームが鳴り続けていたかどうかという重要な点の供述が目まぐるしく変遷していた」とし、信用性を否定した。

　さらに担当刑事が軽度の知的障害がある西山さんの特性や恋愛感情を利用し「強い影響力を独占して供述をコントロールしていた」と指摘。不当な捜査で虚偽の自白を誘導した可能性が高いとして、自白の任意性を否定し、証拠から排除した。

　判決後、弁護団は、検察側に控訴権を放棄するよう求める声明を発表。「事件を作り上げ、殺人犯の汚名を着せたことに、警察、検察、裁判所は猛省し、謝罪すべきだ」と批判した。

　西山さんは〇四年、滋賀県警の聴取に「呼吸器のチューブを外した」と自白し逮捕、起訴された。〇五年の大津地裁判決は自白の信用性などを認め、死因を「酸素供給が途絶したことによる心停止」と認定。懲役十二年の判決を言い渡し、〇七年に最高裁で確定した。

　第二次再審請求審で大阪高裁は一七年、患者が不整脈で自然死した可能性があるとして再審開始を決定。昨年三月に最高裁も支持した。