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いや~ 今日も一段と暑くなりそうだね。
昔から 絹産業の盛んな福島。
その県下有数の呉服屋 喜多一にこの日待望の跡取り 古山裕一が生まれました。
(まさ)もう無理かなって諦めかけてたのに…。
旦那さん まだ戻ってこないわね。
昔から そういう人なんで。
(三郎)うお~! 生まれだべ~!ちなみに この人が裕一の父 古山三郎。
喜多一の4代目。
3人兄弟の末っ子でしたが兄2人が亡くなり急きょ 店を継いだそうです。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(善治)旦那今日は生ぎのいいのが入ってますよ。
お~ それより あれ 何だ?
(三郎)おい おめえら 手伝え!(桑田)はあ?
いいがら いいがら!桑田 及川 運んでくれ。
(及川)はい!落とすなよ!
壊したら 一大事だからな!(大河原)何? 旦那さん… あれ…。
まさ! まさ!
起きちゃうからそんな大きな声出さないで。
お~ めんこいな~。まさ よぐ頑張った。
どこ行ってたの?あっ そうだ…。
おい こっち こっち!はい はい はい! ただいま!
ゆっくり ゆっくり…。早く 早く!
段差あっぞ。落とすなよ。はい ただいま。
(まさ)何? それ。
レジスターっつうもんだ。こいづは すげえんだ。
客がいくら買ったかを全部記録できる。
こんな日に… これを買いに?
そうだ。 まだ 日本に数台しかねえ。
こいづのためにもっと働かなきゃなんねえ。
これで商売 頑張っぞ!
いてっ! いててて いててて…。あっ… 大丈夫ですか?
たまげたね~。
子宝に恵まれず諦めかけていた時にできた子ども 裕一。
おかげで ご両親の愛情をたっぷり受け…。
いや いささか 受け過ぎたのかちょっぴり心もとない子どもに育ったようです。
(笑い声)
♪~
(笑い声)
とにかく 運動は からっきし。
(裕一)あっ。(笑い声)
武道も苦手。 そして 何より…。
に… に…に… 庭の… す す…。
緊張すると 言葉がうまく出ません。
す… 隅で… 先ほどから…。
自分の内面が うまく外に出せない感じ。
外の世界との間に壁がある感じ。
自分と彼らとの距離は 遠くに感じました。
(笑い声)
(史郎)花! おなごか おめえ。(笑い声)
(太郎)おめえんちすげえ でっけえ呉服屋らしいな。
町一番の金持ちだって自慢してっぺ。ハハハハ!
な… な… 何もしてねえよ。
「な… な… 何も…」。(笑い声)
でも おめえに文句があるやつ いっぞ。
(とみ)うぢの店の方が金持ちだわ。
それに あんたんどごは父っちゃんの代になって落ち目だっぺ。
そこでだ どっちが金持ちかけんかで決着つけっぺ。
乃木大将が審判すっから。
や… やんないよ 僕は。
あんたの そのどもり父っちゃんのせいなんだべ?
父っちゃんが 商売下手だからそんなんになったんだべ。
うぢの父ちゃんが言っでだ。
おっ! やる気になったか?
お お お… おなごだからって手… 手 抜がねえからな。
んっ…。ん~…。
ん~… やっ!
(鉄男)おめえの負けでいいな?やめろ その笑い。
悔しいことを笑ってごまかすな。
この づぐだれが。
「づぐだれ」というのは「意気地なし」という意味です。
(鉄男)俺はおめえみてえな づぐだれが大っ嫌えだ。
街で見かけたら ぶっ飛ばす。
(善治)それは心配ですね 旦那。
ほら 言葉のあれもあっぺ。 だからよ…。
男子たるものたくましく育ってほしいっすよね。
俺の若え頃みてえにな。おっ 旦那さんも 相当?
もぢろん。向かってくる野郎は バッタバッタと。
バッタバッタ バッタバッタ…。(茂兵衛)三郎君 久しぶりだ。
はい。
声 ちっちぇえ…。
この人は 権藤茂兵衛さん。
お母さんのお兄さんです。
県内でも有数の資産家で 銀行を中心にいろんな商売をしています。
…で どうなんだ? 経営の方は。
まあ… まあまあで。
毎日 何十人も経営者を見てるが駄目なやつは みんな一緒だな。
兄さん わざわざ そんなこと言いに?
俺 暇じゃねえ。じゃあ 何?
(レコード)「良雄なるか よう見えたぞ。そなた来るを待つや久しゅう思うていたぞ」。「はっ いつもながら 麗しきを拝し内蔵助 身にとり…」。
桃中軒空左衛門です ハハハ。
蓄音機に レジスターか… くだらん。
東北で2台目ですよ。 見てて下さい。
うん?
あれ?
ハハ… アハハ…。あれ? ハハハ…。(レジスターを打つ音)
邪魔した。
あれれ? おい…。
(三郎)義兄さん 来る予定だったか?今日。
日銀にでも寄った帰りじゃない?
あらかじめ 来っ時は言ってもらわねえど。
ごめんなさい。 伝えておきます。
(ため息)
おめえ その顔…。
・(まさ)あと もう少し…。(けん玉をする音)
甘えたい裕一でしたが お母さんは2歳下の弟 浩二に付きっきり。
ちなみに 弟が生まれたお祝いは蓄音機でした。
・(三郎)裕一 入るぞ。
うん。
よっと…。
何?うん? あっ そうだ…。
あれだ 勉強。 勉強してっか?
まあ それなりには。
そうか。
こんな時 言葉に詰まるのはお父さんも一緒でした。
まあ あれだ… 人生いろいろある。
なかなか 思いどおりにはなんねえ。
だから 何でもいい 夢中になるもん探せ。なっ?
それがあれば 生きていけっから。
お… お父さんは?えっ?
お… お父さんは 何?
今は おめえの話だよ。
あるか? 何か。
山。はっ?
川。山? 川って… あれか?
流れてる川か?
うん。 あれ見てっと ほっとする。
何で おめえ そんな…。もっと楽しいこと…。
しゃべんなくて済むがら。
そうか…。
そ… そうだ!新しいレコード買ったんだ。
舶来品だ。 聴くか?
いい。
♪~
そして この日初めて お父さんは西洋音楽のレコードをかけました。
♪~(「威風堂々」)
・♪~
♪~
裕一。
♪~
その音色は 裕一の心に深く響き渡ったのです。