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世の中は　第一次世界大戦の軍需品輸出によって好景気となっていました。
大正デモクラシーの流れに乗って自由で開放的な文化が花開きその新しい空気は地方の町まで広がり始めていました。
♪～（「威風堂々」）
（三郎）朝から　やめろ。飯がまずい。
（裕一）あっ　ごめん。
♪～
♪「泣いて　生まれて　響く命」
♪「きっと嬉しくて　笑っているんだ」
♪「僕らはきっと　出逢うでしょう」
♪「手を引き　背を押し　出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って　ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を　超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで　響くはエール」
お代わり。（まさ）はい。
裕一　運動会　いつだ？
えっと…。
安心しろ。　おめえ　俺の息子だ。
まあ…　去年までは　その～あれだったけど今年は　速ぐ走れる。俺も　１０歳超えたら　急に速ぐなった。
そんな話　初めて聞きましたけど。
「三郎は　運動は　からっきしだった」って亡くなったお義母様がおっしゃってましたけど。
（三郎）おめえ　何言ってんだ。
そういえば運動会今年は兄さんも来るって。
♪～
運動会が近づくと　思い知らされます。
世の中の人間は主役と　それ以外に分かれると。
この野郎！あっ！
くそっ！　んっ！　ふざけんな！
この野郎！ああっ！
んっ！
乃木大将…。
くそっ　覚えてろよ！
子どもの世界の主役はいつだって強い男です。
何が面白いのかね？
この子は　佐藤久志。　県会議員の息子で転校してきたばかりでした。
けんかなんて　どっちも痛いだけでしょ？不合理だよ。
で…　でも…　やっぱし　男は強い方が。
フッ。　今は　デモクラシーの時代ですよ。子どもだな。
この一風変わった子が終生の友になるとはこの時　夢にも思っていませんでした。
（新田）いいか　死ぬ気でやれ。いくぞ～。　よ～い…。
始め！（笛の音）
（児童たち）オ～！
あっ…。
おい　何やってんだ！まだ始まってもいねえ。
（太郎）こいつが駄目なんです。いっつも　すぐ崩れる。
（史郎）この　づぐだれが！
古山　立て！
立て！
そんなことだから　どもってんだ。
いてえのか？
さ…　さっき…　人が…。
人のせいにすんな。気合いが足りねえから　いてえんだ。
気合いと　痛さは　関係…。
口答えすんな。　歯　食いしばれ。
（藤堂）よしましょうよ　先生。何だ？
（藤堂）言葉の詰まりは本人の気合いの問題じゃない。
新入りは引っ込んでろ。
まあ　いいわ。
とにかく気合い入れろ。　分がったな？
君　名前は？
こ…　こ　こ　こ…。落ち着きなさい。
深呼吸して。（深呼吸する音）
僕と君　同じ顔してるか？
同じ顔か？
ち…　違うと思います。
そうだ。　歩く速さも違う。はい。
話し方も違う。
違いを気にするな。
はい。うん。
ところで　君は　何が得意だ？
えっ？　な…　何も…　何もないです。
何もないか。　まっ　そのうち見つかるさ。
何か　自分の周りに新しい風が吹いた気がしました。
この学校は　のんびりしてっからね。ああ…。
ところで　この学校にはハーモニカ部があると聞いたんですが。
ええ　ありますよ。
（善治）かけっこね～。
まあ　毎回　びりっげづなら嫌にもなるわな。　うん。
（善治）そういや　いいこと聞きましたよ。えっ？
あれ　コツがあるらしいです。
どんな？手　振るんです。
はあ？手。
（大河原）これは　あの～一流の職人の手によるもんでして。
いや　これは　もう　よそではとてもじゃないけど…　うん。
お高いわ～。　またにしとぎます。
あっ　いやいや　そこはちゃんと勉強させて頂いて…。
またね。あ～　そうですか…。
はい　お帰りだよ。
あ～　どうも　どうも。ありがとうございました。
どうも。ありがとうございました。
（ため息）（桑田）売れませんね～。
いぐら好景気だからっつっていい絹　そろえ過ぎなんだよ。
どんぶり勘定だからな～　旦那さんは。
はあ…　先代とは　えらい違いだな。
速ぐ。もっとか？
おっ　お帰り！坊ちゃん　明日　頑張ってね。
じゃあ　旦那　おら　この辺で。ああ。
うう～！
すまねえ。おう。
魚治さん　いい人だね。
ああ。　魚は　いまひとつだが　話は面白え。
ただ…　親父に比べて　息子はな…。
魚治さん　子ども　いんの？
知らねえのか？乃木大将ってあだ名の　あれだ。
悔しいことを笑ってごまかすな。
この　づぐだれが！
よ～し　いいこと聞いた。今日は　特訓すっぞ！
あの　気のいいおじさんと乃木大将が親子…。
少し　意外な感じがしました。
（三郎）おい　何してんだ？
♪～（レコード）
速ぐ走るには　手を動かすんだ。
浩二に負けてんじゃねえか！もっと速ぐ！
どうした？いや…　何も。
よし…　ほら　こうだ！
そうだ！　速え！　速え～！
当時の運動会は町を挙げてのイベントでした。
よ～い…。（太鼓の音）
（声援）
イエ～イ　取った～！
いげ～！　おい　いげ～！　いげ　おら！
いげ～！　いげ！
いげ…　いげ～。
よ～い…。（太鼓の音）
（声援）
よ～し　いげ！　ほら　頑張れ！
（声援）
（教頭）乃木大将の一人舞台ですな。えっ？
村野鉄男ですよ。　学校一の悪童です。
♪～
おい…。
続いでの競技は　４年生による徒競走です。
そろそろ　裕一が…。
そうよ。　はい　応援しましょう。おお…。
よ～い…。
（笛の音）
（声援）
西洋では　競技と競技の間に音楽とか演奏するんだ。
「ハーモニカ部　ここにあり」って驚かしてやろう。
興味持ってもらって部員増えっといいですね。
だな！だな！
（笛の音）
（声援）
いげ　いげ！
（太鼓の音）
よ～い…。
（笛の音）
（声援）
裕一！ぎばっと速ぐ！　ぎばっと！　頑張れ！裕一！　頑張れ　裕一！頑張れ～！　頑張れ～！
うっ…。裕一！？
立て！
こけた　こけた！（笑い声）
（まさ）裕一！立て！立てる？
頑張れ　裕一！
あっ…。
（笑い声）
あと　ちっとだ。裕一！
（笑い声）
その時でした。
♪～
頑張れ！頑張れ！
頑張れ　裕一！頑張れ！
裕一！
裕一！　頑張れ！頑張れ！
頑張れ　裕一！　裕一　頑張れ！頑張れ！
もうちっとだ！　もうちっとだ　頑張れ！
♪～（声援）
（拍手と歓声）
よく頑張ったな！
頑張った！よく頑張った！
（拍手）
それは　生まれて初めて聞く自分へ向けられたエールでした。
裕一！