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【社説】

感染防止にこそ全力を 北の飛翔体発射

 北朝鮮が飛翔体(ひしょうたい)の発射を繰り返している。軍事力誇示が狙いだろうが、新型コロナウイルスの脅威は北朝鮮も例外ではない。挑発行動を中止し、住民のため、まず感染防止に全力を挙げるべきだ。

 北朝鮮が飛翔体を発射したのは四週連続、計九発になる。三月二十九日に発射したものについて同国のメディアは、「超大型多連装ロケット砲」とし、試射は成功だったと伝えた。

 北朝鮮は同月二日と九日、二十一日にも飛翔体を発射した。命中精度が高い米国の戦術地対地ミサイル(ATACMS)に類似したタイプもあった。

 探知しにくい低高度で飛行しており、技術が相当向上していることをうかがわせる。

 発射現場には、朝鮮労働党の金正恩(キムジョンウン)委員長ら幹部が同席していた。米国との非核化交渉を有利に進めるための「切り札」として、期待をかけているのだろう。

 いずれも日本の排他的経済水域(EEZ)外に落下したとみられているが、短距離であっても弾道ミサイルであれば、国連安全保障理事会決議違反に当たる。

 一方、異常なペースの発射は、新型コロナウイルスと関連があるとの懸念も広がっている。

 北朝鮮は自国内で感染者が出ていないと発表し、世界保健機関(WHO)にも通報している。

 しかし、在韓米軍のエイブラムス司令官は、北朝鮮軍が約三十日間活動を停止していたと明らかにし、軍内部に感染者が出たことが影響していると推測した。

 飛翔体の発射は、軍内部の動揺を抑え、士気を高めるのが目的なのではないか。

 北朝鮮はもともと医療体制が貧弱であり、感染が広がれば、大きな人的被害が出るのは明らかだ。北朝鮮のメディアは、全土で二千人以上を「医学的監視対象者」として隔離していると報じており、感染に神経をとがらせている。

 主な貿易相手国である中国との国境も厳重に封鎖しており、物資不足や物価の高騰も伝えられる。

 事態を重く見た国連児童基金(ユニセフ)が、マスクや防護服を支援した。ロシアも要請を受けてウイルスの検査キットを送ったものの、北朝鮮はなぜか検査結果を発表していない。

 トランプ米大統領も親書を通じ、防疫に協力すると伝えた。対話の糸口になる可能性もある。

 北朝鮮は国際社会からのさまざまな支援の申し出に対し、誠意を持って応じるべきだ。

 

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