こんにちは、ゆう@保有物件の空室が増えてきたので、カップ麺と使い古しのネクタイを営業さんにあげてきました。
にほんブログ村
スルガ案件を自分で客付するべる買い付けがいくつも入りましたが、スルガ銀行の融資はボクのそれまで扱ってきた収益物件とはまったく別物でした。
どう別物だったかと言うと、ボクの地元の不動産会社では物件の取得のための諸経費まで普通に融資をしてくれる金融機関が多く、オフィシャルオーバーローンがスタンダードでした。金利は1〜2%の間で属性次第でした。それを当たり前と思っていました。
一方、スルガ銀行は物件価格の90%までの融資、諸経費は自己資金による対応、というもの。1億の物件なら2,000万円弱の自己資金が必要になります。・・・ルール上は。
ボクも不動産会社で数十人を束ねる管理職にいた人間、不動産業界の裏側を十分に知っていたつもりでいました。しかし、Nの会社で行われていた業務はボクの常識の1歩2歩先を行っていました。
まず、物件価格の2割近い自己資金をなんとかしなくてはそもそも物件を買うことすら出来ないので、というか4.5%の高金利の融資を引くのに2割も自己資金を入れる人がいるはずがない(!)という暗黙の了解があるので、ここをクリアする必要があります。
具体的には銀行向けの契約書を作って「物件価格の約2割の手付金を支払った」ということにします。
しかし、物件価格の約2割もの手付金を支払いました、というのはあまりに不自然なので、その証拠として手付金を支払った履歴を提出します。この「手付金を支払った履歴」を”作る”わけです。また、それだけの自己資金をもともと持っていたことにするために、銀行口座についても”作る”わけです。
この作り方はボクが地方の不動産会社でやったことがあるのはアナログな方法で、契約書の数字の部分を別に作ってそれを元の契約書の数字の部分の上に貼って、コピーして作っていました。これは不動産業会ではよく行われていることで、銀行側も暗黙の了解とされていることでした。
Nの会社ではこれをデジタルな方法でやっていました。契約書そのものではなく契約書のスキャンした画像を切り取って、貼り付けて、全く新しい契約書を作り上げていました。そのクオリティが完璧すぎて全く疑う余地がないレベルです。
この技術は銀行口座についても使われていて、通帳やオンライン口座など画像になりさえすれば自由自在に口座情報を作り上げることができます。
これらの技術をNはもちろんのこと、事務スタッフに至るまで全員が当然のこととして業務が行われていました。契約書をコピーしてアナログに作るのはまだ可愛げがありましたが、ここまで来ると全く可愛げがありません。正直、かなり驚きました。
しかし、これが”収益物件売買の最前線の現場”でした。
そしてボクはこの技術を使って1件目のスルガ案件の決済を無事迎えることになりました。物件価格は19,800万円、利回り11%の物件だったので仲介手数料は片手で600万円以上、両手の案件だったので1件の契約で1,200万円以上の売り上げになりました。
Nの会社では報酬は折半だったので、1件の契約を決めただけで600万円の報酬になったわけです。
この報酬を手にすることで六本木に来て数ヶ月であっという間に1,000万円を超える報酬を手にすることになり、”収益物件売買の最前線の現場”に完全に足を踏み入れて後戻りできなくなっていったわけです。
そして「エビ」という言葉もすぐに普通に使うようになりました。「エビ」とはエビデンス、自己資金の証明となる口座情報のことで、”収益物件売買の最前線の現場”では頻繁に飛び交うワードでした。
このような手法で融資を引く行為は完全な犯罪行為で、銀行を騙す詐欺行為となります。しかしボクが一番驚いたのは、通常被害者となる立場のスルガ銀行の融資担当者がこの手法を知っていたこと。それどころか、当初、慣れない作業で細かい数字のミスがあって”あり得ない数字の口座情報”を融資担当者に送ってしまったこともありましたが、それに対して丁寧に修正依頼をしてきたこと。
カルチャーショックなんてものではありませんでした。
ただ、六本木に来たばかりの頃はまだスルガ銀行の融資担当者もあからさまではなく、”密室感”を出していました。
これが後にオープンな雰囲気で、しかも広く行われるようになっていきます。そうなると末期症状なんですよね。
とにかく、最初にこの”収益物件売買の最前線の現場”に直面したときには、どこまでが良くてどこからが悪いのかの線引きが不明確で非常に困惑しました。しかも、かなりデリケートな手法、決して外に出してはいけないレベルのノウハウなのに、Nの会社では大っぴらに話されていて、しかも組織化されていないのでチェック体制もまったくない状態でした。これは組織の管理をしていた立場だったボクには信じられないことでした。
Nはサラリーマンでも零細企業で数年勤務していたくらいで組織の運営の経験がないので、組織を作るノウハウが分からなかったんでしょうね。
また、そもそもNの会社とそれぞれの会社の代表との業務委託契約なので、雇用契約のように組織化に馴染みづらいのもありました。
このあたりも後に破綻する要因の一つになります。