ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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その10

△月×日 050

 ロウネから待望の「日刊・ナザリックを作る」の続刊が届いた。

 今回は61号~80号で、地下第7層と、いよいよ最終の第8層だ。

 早急に完成させるため、予定していた竜王国援軍派遣検討会議は延期する。〝雷光〟が「もう中止しちゃっていいんじゃないですか?」と言っていたが、大事な包囲網の一角なのだから捨て置くわけにもいない。ちょっと延期するだけだ。

 まだ援軍の要請をする元気があるんだから少しくらい大丈夫だろう。多分。

 

 ところで、以前作ったアインズフィギュアで最近気になることがある。

 あれ、明らかに髪の毛が伸びてるのだがどういう仕掛けなのだろう? ていうか、アイツ髪生えてたっけ? そんなギミック組み込んだ覚えが無いのだが・・・。

 

 主席魔法使いに調べさせたが、魔法的なギミックではないとの報告で、なぜか神殿に持っていくべきだと力説していたが、魔法的なものでないなら神殿に持っていっても神官達が困るだけだろう。とりあえず害は無いようなので放っておくことにする。

 

 

 

△月△日 051

 思わぬ所で思わぬ事実が判明した。

 帝スポでチラリと読んだ記憶のある「帝都を徘徊する銀に輝く蟲」とやらの正体が、実はお忍びで帝都観光に来ていた魔導国の貴族だったらしい。

 問題は、魔導国の貴族が帝国に断りも無く帝都を訪問していた、という点だが、フールーダの誘いで遊びに来ていたらしく、「元」とはいえ帝国主席魔法使いが招待していたとなると文句もつけにくい。

 フールーダの裏切り者め余計な真似を・・・いや、何か企てているのか? 監視の強化は必要だな。

 

 当の貴族からは、非常に丁寧な詫び状(貴族らしい知性を感じさせる文面だ)が届いており、事を荒立ててこちらのカードにするのは難しいかも知れない。

 しかし、詫び状には「恐怖公」という署名があるが、えらく大層な名前だ。

 まあ、大抵「○○公」などというのは世襲で、「恐怖」などと付いてても文面からすると案外優男かも知れん。かく言う俺にしたところで「鮮血帝」などと呼ばれるが、別に血が好きなわけでもないのだから。

 まあ、詫び状には「その内挨拶に伺う」とあるから、会えば判ることだろう。

 

 

 

△月◇日 052

「日刊・ナザリックを作る」第7層が完成したが、ここは火山が噴火し溶岩流の川が流れる灼熱の世界だ。

 あらゆる場所に罠が張り巡らされており、また、高熱による恒常的なダメージも馬鹿にならないので熱対策が必要だが、アイテム類は第6層で取り上げられるのでアイテムや装備では対処ができない。汚いなさすがアインズきたない。

 ここは魔法による火耐性向上能力が絶対に必要となる。

 

 しかし、階層自体の構造は単純であり、火耐性への対処さえ出来れば後は力によるゴリ押しの勝負が可能となる。

「テレスドン」「デッドン」「バラゴン」などの地底怪獣や、「グドン」「ツインテール」などの古代怪獣、「バードン」「ボルカドン」「ヴォルケノンザウルス」などの火山怪獣が主な敵だが、どれも人間にとっては強敵だ。

「火○湖の大怪獣」なんてのもいるが、これは興味を引いて「火山湖の大○獣」でググらせたい中の人の設置した罠だな。気の迷いでDVD買わせたら俺の勝ちだとか言っていた。俺だけ損してたまるものか、とも。

 

 中の人のメッセージを伝えておこう。「みんなでポチって俺と一緒に地団太踏もうや」

 

 

 

◇月○日 053

 いよいよ最終第8層が完成し、その全貌が明らかになった。

 これはまさに難攻不落の大要塞と言える全容だ。

 

 聳え立つ異様で巨大構造物を中心に、堀と城壁が張り巡らされて迷路状になっており、特に北・東・西の3方は傾斜もあって攻め手には不利だ。

 中央構造物は外見から5層構造で、天辺の屋根に飾られた2匹のリヴァイアサンの彫像が印象的だ。

 弱点は南からだが、ここには真○丸と呼ばれる小規模の要塞があり、「エクレア」というナザリックでも有数の名将が守っているらしい。

 こいつの通った後には「塵一つ残らない」というから、相当の猛将だと推定できる。

 名前からすると女のようだから、あの時玉座の近くにいた王妃らしき白い女悪魔か、銀髪の愛妾のどちらかかも知れない。

 

 ちなみに構造の知識はwikiに頼ったが、このような苦し紛れのネタを突っ込んできた所に色々と察する優しさがあれば、そこは口を慎むべきだ。

 最重要拠点である中央の構造物の中までは再現されてないが、この中に、あの時の玉座の間もあるのだろう。

 そこはロウネが実際に住んでいるのだから、彼の知識をすり合わせれば補完も可能か。

 

 あの糞野郎を討ち果たす日が近づいている。

 

 

 

◇月×日 054

 魔導国の恐怖公より、先日の侘びということで荷物が届いた。

 開けてみると角笛が入っており、主席魔法使いに調べさせたところ、かなり高度なマジックアイテムだと言う。

 同封の手紙によると「恐怖公の角笛」といい、カルネ村の「エンリ」とかいう将軍の使った「ゴブリンの角笛」を改良したものだそうだ。

 かの「ゴブリンの角笛」で呼び出せるのは、多少高レベルとはいえ単なるゴブリンに過ぎないが、「恐怖公の角笛」では公の選りすぐりの精鋭軍団を呼び出せるのだと言う。

「使いきりアイテムなので万一の時に呼び出して身を守らせると良い」と書いてあるが、いったいどのような精強な護衛が出てくるのか楽しみだ。

 ゴブリンの強化版なのだから、出てくるのはオーガかトロルか・・・やはりあのデスナイトのような大迫力のモンスターが出てくるのだろうか。

 しかし、敵に塩を送るとは、間抜けなのか誠実な人柄なのか・・・寝返り工作の対象として一考に価するかも知れん。

 

 




2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の加筆修正を行いました。
2016/05/02 文章の修正を行いました。

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