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ナポリで無料食堂の列に並ぶ人々(3月23日)Photo: Ivan Romano / Getty Images

ナポリで無料食堂の列に並ぶ人々(3月23日)
Photo: Ivan Romano / Getty Images

クーリエ・アンテルナショナル(フランス)

クーリエ・アンテルナショナル(フランス)

Text by Beniamino Morante

新型コロナウイルスで深刻な状況にあるイタリアでは、全土で外出禁止令が続いている。

そんな中、違法労働が多いイタリア南部では、失業の増加にともない、社会不安が広がっているという。すでにスーパーマーケットでの代金の支払い拒否などが発生し、政府も対応を急いでいる。

イタリアの複数のメディアが伝えた。

コロナが浮き彫りにするイタリアの南北格差


もともとイタリア南部は、違法労働でぎりぎりの生活をしている人々が多い地域だ。今回の外出禁止令で、そうした人々の多くが収入を失った。

トリノの日刊紙「ラ・スタンパ」は、イタリア国立統計研究所(Istat)の推計を引用しながら、現在、雇用契約なしに働いているイタリア人は370万人いると報じた。

同紙は次のように書く。

「違法労働者の80パーセントは南部に集中している。イタリア労働総同盟の調査によれば、南部では3人に1人が違法労働者だという。その中にはレストランなどのウェイターやウェイトレス、労働者だけでなく犯罪者も含まれている。こうした人々は、今回の危機で政府が打ち出した暫定措置の対象ではなく、社会保障制度にも保護されていない」

「ラ・スタンパ」紙の記述は、現在のイタリア南部の状況を非常によく表している。

シチリア島、プッリャ州、ナポリ、パレルモなどの地方や都市では、多くの人々が契約書を取りかわさずに仕事をしている。それらの人々は政府が企業援助のために打ち出した特別措置の対象外だ。したがって、彼らはすべての収入源を一夜にして失うこととなった。その最初の影響がすでに現れ始めているのだ。


シチリア島のパレルモで起こったスーパーでの支払い拒否


ローマの日刊紙「ラ・レプッブリカ」はスーパーでの支払い拒否について、次のように報じた。

「3月26日の木曜日、パレルモのリドル(注:世界展開するディスカウントのスーパーマーケットチェーン)で、食べ物をいっぱいに積み込んだショッピングカートを押したグループがレジに現れ、支払いを拒否すると言った。以来、市内の大型スーパーマーケーットは警察が監視している」

同紙によれば、パレルモのこの窃盗未遂は、自然発生的なものではなかったようだ。

「この試みは”国民革命”(Révolution nationale)というフェイスブック上のグループのイニシアティブによるものだ。グループには数千人が参加し、すでに4月3日に次の行動が予定されている。グループのページには、”闘いの準備ができた者たちは言う。われわれの状況を人々に理解させるためには、スーパーから盗まなければならない”というメッセージが投稿されている」

「ラ・レプッブリカ」紙は、政府を懸念させるより緊迫した状況についても伝えている。

「現在、シチリア島、カンパニア州、プッリャ州では、買い物をした商品を盗まれる危険がある。毎日何件かの薬局への押し入り強盗も起こっている」

さらに同紙は、政府の内部報告書を暴露した。この報告書は「特にイタリア南部では、違法労働と組織犯罪の多さが不安要因となっており、暴動と反乱のおそれ」があるとして、警告を発している。

これらのリスクを事前に回避するために、すでに対策をとった自治体もある。たとえばシチリア島のパレルモでは、無収入となった家庭への食料の配達を始めた。


政府は緊急時の所得保証制度を検討


国レベルでもいくつかの動きがある。イタリア経済省事務次官のローラ・カステッリは「ラ・スタンパ」紙のインタビューに答え、次のように述べた。

「簡潔な方法ですべての人に収入を保証する必要があるでしょう。緊急の所得保障制度の導入を検討しています。この措置は、平常の状態に戻らない限りは続ける予定です。同時に、市民所得(注:イタリア政府のベーシックインカム制度)受給のための手続きの簡略化も検討中です」

イタリア経済省事務次官ローラ・カステッリ
Photo: Simona Granati – Corbis / Getty Images



助け合いの精神と連帯を示す市民も


特別措置が待ち望まれる中、ミラノの日刊紙「イル・コリエーレ・デラ・セラ」はパスタなどの食料を持ってスーパーのレジに現れ、支払いを拒否した男性のビデオを公開した。

ビデオの中ではもうひとりの男性が「彼はシャンパンを買わなかった。払えなかったんだ。どうすればいいかって? 警察を呼んでくれ」と言っているのが聞こえる。このビデオはナポリで撮影されたものだという。

ナポリは多くの社会問題を抱え他都市だ。

だが、一方で困難な時期にも創造性と連帯を示す人々も存在する。「ラ・レプッブリカ」によれば、この街には組織化されていない相互扶助の取り組みも根付いているという。

「代金を払うお金のない人たちがショッピングカートをいっぱいにできるよう、自分が買ったものをレジに置いて行く人々がいる」と同紙は伝えている。

新型コロナウイルス
クーリエ・アンテルナショナル(フランス)

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