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【社説】

中国とコロナ 自画自賛が過ぎないか

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけたとする中国が、対策成功や世界への貢献を訴える宣伝を強めている。感染源特定や初動対応の不手際の総括も不十分であり、自画自賛が過ぎないか。

 国営新華社通信は三月初旬、まん延防止への貢献について「世界は中国に感謝すべきだ」と主張する、中国の投資家がSNSに投稿した文章を転載して配信した。

 新型コロナウイルスによる最初の感染者が湖北省で確認され、感染が世界に広がったことについて中国の説得力ある反論はない。実際に、同省や武漢市による情報隠蔽(いんぺい)があったとして、中国政府が省や市の党トップを処分している。

 「中国も被害者だ」との主張もある。無論、その一面はあるとしても、責任逃れの発言に映る。

 早期に適切な対応ができず、結果的に「パンデミック(世界的大流行)」にまで至らしめた非は否定できない。「感謝すべきだ」と言われて素直に納得できる国はあるまい。

 中国外交部報道官は三月中旬、米軍がウイルスを武漢に持ち込んだとの見解をツイッターに投稿した。中国政府は「狂った言論」とする駐米中国大使の批判を公表したが、ポンペオ米国務長官は二十五日のテレビ電話方式の先進七カ国外相会合でも、中国の「偽情報キャンペーン」を批判した。

 確証を示さないまま他国に責任を押しつけるような姿勢は、自国の価値を傷つけるだけである。

 国内でも対策が適切であったという宣伝ばかりに熱心なようだ。

 共産党中央宣伝部の指導で編集され、二月下旬に出版が発表された書籍「大国戦『疫』」は、「習近平党総書記の指導した防疫戦争の全貌を紹介する」と宣伝された。だが、「もう勝利を口にするのか」などの批判がネットで殺到し、さすがに販売は見合わせた。

 中国は感染拡大に歯止めをかけたとの認識を示し、企業の操業再開にも着手している。イタリアやイランなどに防疫対策チームを派遣し、中国を支援した国と地方レベルの相互支援を進めていることは、一定の評価をしたい。

 だが、例えば、マスク生産国である中国が、他国への支援を自国の影響力拡大に利用するような行動は「マスク外交」と批判されても仕方がない。

 「自画自賛」に血道をあげるべき立場でも時期でもなかろう。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ような態度は慎むべきである。

 

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