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【社説】

現金給付 全世帯を対象に素早く

 新型コロナウイルスへの経済対策として政府が現金給付を実施する構えだ。給付対象を絞る案が出ているが、大きな効果は望めるのだろうか。暮らし支援に向け迅速で思い切った対策を求めたい。

 政府は現金給付を来月まとめる緊急経済対策の軸として打ち出す方針だ。給付金額は未定だが、二〇〇九年にリーマン・ショックを受け実施した、国民一人当たり一万二千円を上回る規模になるとみていいだろう。

 ここで焦点となるのは給付対象だ。政府内では、新型コロナの影響で収入が減った世帯に対し現金を配る案が浮上している。だがこの手法による経済効果については疑問を持たざるを得ない。

 対象を絞る場合、その線引きに相当な時間がかかることは確実だ。自己申告制との案もあるようだが、新型コロナによる所得減をどう証明するのか。業界によっても被害実態は千差万別で絞り込みは難しい。

 実際の給付が始まった後、社会に不公平感が高まり、混乱が生じる恐れも否定できない。ここはスピードを最優先し、分かりやすく全世帯給付とするのが最も効果が上がる方法ではないか。

 政府内に意見の相違が生じたことは見過ごせない。麻生太郎財務相はリーマン時を念頭に、配った現金の多くが貯蓄に回るとの懸念を示した。

 懸念について理解はできる。ただ経済活動の急激な停滞で収入が減り蓄えを取り崩して生活をしている世帯も激増しているはずだ。そういった世帯では給付金を直ちに生活費に充てざるを得ないのが現実だ。ある程度貯蓄に回ることを覚悟し、今の暮らしを救うための対策として実行してほしい。

 給付を実施する際には、金融機関の口座に振り込まれるケースが多いはずだ。ただ口座自体を持てない世帯があることも忘れてはならない。最も生活費が必要な世帯に給付が行き渡らないのでは対策の意味はないだろう。

 現金給付に限らず対策全体にスピード感がないことも指摘したい。今のままでは実施が五月以降という可能性さえある。

 政府は、各自治体の福祉協議会を通じた緊急小口資金貸付制度などで持ちこたえてほしいとの姿勢だ。だが、この制度はあくまで貸し付けで返済が伴う上、申し込みの急増で手続きに時間がかかる場合があるなど課題も多い。対策には一刻の猶予もないことを政府は強く意識してほしい。 

 

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