ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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その5

▽月×日 026

 最近王国の王女からホットラインが無い。

 別に寂しいわけではない。

 誤解の無いようにしてもらいたい。

 あの女の寄越す情報は役に立つことも多いから、これは仕事のようなものだ。

 帝国の利益となることだから、仕方なく相手をしているのであって、決して他心など無い。

 皇帝としての勤めであって、言い訳では無く、他国の情報を得られないことに困っているだけだ。

 それもこれも役に立たない情報部が悪いのだ。

 

 情報部は全員減俸にしとくか。

 

 

 

▽月△日 027

 今日、突然あの糞野郎が訪ねて来た。

 お忍びだと言うが、中庭に突然転移してきたのは目を瞑るにしても、護衛だと言う王妃?と予想していた女悪魔と、デスナイト30体にスケルトンの群れが後からワラワラ追いかけて来て、お陰で帝都は大混乱だ。

 お忍びも糞もあるか。死傷者が出なかっただけでも奇跡だろう。

 

 何の用かと聞いたら、ロウネの出た「オールナイト・ナザリック」が好評だったので、そういえば友人だったことを思い出して遊びに来たと言う。

 

 忘れてたのか。

 

 何かに負けた気もするが、永遠に忘れておいて欲しい気もするので複雑だ。黄金の嘲笑が聞こえた気がしたが気のせいだ。

 とにかく今日は忙しいということにして、また今度ということでお引取り願うことにした。

 

 二度とくんな。

 

 

 

▽月◇日 028

 久しぶりにお忍びで城下へ視察に出向いたが、そこで見つけた「帝国スポーツ新聞」とか言う興味深い読み物を見つけた。

 

 一緒にいた〝雷光〟が言うには、「帝スポは三流ゴシップ紙なんで鵜呑みにしたらダメだ」と釘を刺されたが、こういう所に意外な真実があるのかも知れないではないか。

 我々の敵は常識外の化け物なのだから、常識は大事だが、常識に囚われていては真実を見逃すぞと〝雷光〟には説教しておいた。

 

 確かに「バハルス皇帝王国王女と熱愛発覚!ヵ?」などというデタラメ記事(詳しく読む価値すら無い!)もあったが、「魔導国、王国に急接近?」という記事は一考に価する。なんでも王国の要人がナザリックに行ったとか行かないとか。

 情報部からの報告では動きは無いようだが・・・。

 

 連載記事の「ナザリック美人突撃インタビュー」のコーナーは、何か1つ聞く度に記者が殺されるナンセンス滑稽劇仕立てになっていて、ちょっと面白かったな。

 

 

 

▽月▽日 029

 最近王国からホットラインが無い。

 王女は別にどうでもいいが、王国の情報が入手できないのは問題だ。

 悩んだ末に、こちらからホットラインをしてみたら、ランポッサのジジィが出た。

 くたばり損ないのジジィには用なんぞ無いので、さっさと「お嬢さんをお願いします」と言ったら、えらい剣幕で「娘に何の用だ」と根掘り葉掘り聞かれて困ってしまった。

 こちらから用なんぞあるわけがないし、娘とはどんな関係だと言われても、そんなもの皇帝と敵国の王女に決まっているではないか。

 ジジィめボケたのか?

 挙句の果てに「娘は友人に招待されて旅行に行ってる」と言う。

 だったら最初からそう言えばいいのに、老人は話が長くて困ったものだ。

 

 あの国もそう長くないだろう。

 

 




2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の加筆修正を行いました。

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