△月○日 013
王国の王女からホットラインがあった。
お前絶対友達いないだろと言ったら、ペットがいるからいいとか言ってた。
あと、蒼薔薇も友達だとか言っていたが、そんなもの冒険者からすれば権力者との単なるパイプにすぎないに決まってるじゃないか。悲しいやつだ。
貴方にはお友達いるんですか? などと聞くから「アインズとは友達だ」と答えておいたが、何か負けた気がする。
俺に敗北感を抱かせるとは、やはりあの女は嫌いだ。
△月×日 014
帝国国民の間に、>しかしジル君の思惑通り人類国家連合が成される未来が全く見えない
という意見があるらしい。
何だ「ジル君」って? 皇帝を指して不敬だろう。
平時であれば親しみやすい皇帝というのも理想だが、今はまだその時期ではない。
見つけ出して首を刎ねておくように命じておいた。
しかし9巻の帯には俺の肖像画と共にハッキリと「人類の運命をにぎるイケメン」と書いてあるのだから、最終的な俺の勝利は間違い無いはずだ。そうだろう?でないとオリジナルが嘘をついたことになるからな。
必ずあの糞野郎を叩きのめしてやるのだ。
△月△日 015
ナザリックにいるロウネから荷物が届いた。
荷物の中はドライアドが育てているというリンゴ園で採れたリンゴだそうだが、毒見の後、俺自身も食べてみたところ、どこにでもある普通のリンゴだった。
だいたいあの墓地のどこにリンゴ園があると言うのか。わざわざ墓地の中でリンゴなんか作る必要無いじゃないか。
ナザリックには何でもあると自慢したいのだろうか? しかし、その意図がよくわからない。
行った事が無ければ騙されもしようが、実際にこの目で見てきた俺が騙されるはずもない。
入っていた箱には「ピニスン農園」と書いてあるが、どうせ王国かどこかで仕入れたものだろう。
△月□日 016
王国の王女からホットラインがあった。
最近、どうもこのホットラインの存在意義というものに疑問を感じるのだが、廃止を提案したものの大臣達に止められた。
廃止したい理由は「王女が面倒臭い」という個人的な感情でしかなく、大臣達の「万が一の為の連絡手段は多い方がいい」という理由には確かに利があるので仕方が無い。
しかし、最近王国で流行っているという、「人間の幼子が、睡眠の魔法と大人のような明晰な頭脳で難事件を次々に解決する物語」とやらの話を延々と聞かされる身にもなってほしい。「私の推理ですと黒幕は○笠博士と見せかけて本当は・・・」などと言われてもサッパリだ。
だいたい、見た目が子供で中身が大人なら、それは紛れも無く長命の妖精種に決まっている。
いつぞやのオーガの息子の話といい、王国では変なものが流行るものだ。
△月▽日 017
王国の王女から荷物が届いた。
牧場で育てた家畜の肉らしいが、牛や豚、羊肉に山羊肉もある。
特に山羊肉は臭みもなく美味しいそうだ。
なんでも「ジャングル」とかいう魔法通販で販売も始めるというが、そういうアイデアは王女らしいな。
量があるので将軍達や三騎士にもお裾分けしてやらねば。
彼等の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
△月□日 018
ナザリックにいるロウネから手紙が届いた。
最近は毎日、森の水辺で日光浴をエンジョイしてると書いてある。最近は曇り続きなんだが、あっちは晴れてるんだろうか。
トブの大森林までナザリックからは相当な距離があるはずだが、そんな毎日出掛けて行って、あいつちゃんと仕事してるのか?
それはそうと、先日の王国から届いた肉の件だが、皆にたいそう喜ばれた。たまにはあの嫌な女も役に立つではないか。
届けに行った使者の報告では、カーベイン将軍も〝激風〟も涙を流して喜んだそうだが、少し大袈裟じゃないか?
報告を聞いた時、たまたま傍にいた〝雷光〟が、何やら微妙な顔をしていたが、きっと彼も同じ気持ちだったのだろう。
◇月○日 019
王国の王女からホットラインがあった。
先日の肉の件は礼を言っておいたが、それはそれとして気軽にホットライン使うのは本気で止めて欲しい。
それとなく注意したが、ペットの犬が両国の友好を深めるのは悪いことではないと言ってるからとか意味不明なことを言っていた。「クライム」ってあの女のペットの犬の名前だったよな?
似た名前の側近でもいるのだろうか。
◇月×日 020
またナザリックにいるロウネから手紙が届いた。最近多いな。
心情的に仕事をしていると評価はしてあげたいが、内容は・・・まあ、当然検閲されているであろう手紙に重要なことは書けないだろうことも考慮すべきだろうし、あの化け物の巣窟に1人では、心細くもなるだろうし里心もつくだろう。その辺のことも斟酌してやりたい。
なんでも大浴場のゴーレムから入浴マナーの真髄を教わったとか書いてるが、意味はわからん。
〝雷光〟のやつは手紙を読んで、「あいつ本気で楽しんでませんか?」と言うが誤解だろう。だいたい、敵地に1人で頑張っているロウネに対して、「楽しんでる」などと言うのは失礼というものだぞと〝雷光〟にはきつく説教しておいた。
しかしまあ、「チェレンコフ湯が最高」など意味不明な文言も多く、優秀だった人材も今は昔ということかな。悲しい話だ。
2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の一部を修正加筆しました。
2016/05/01 文章の修正をしました。