×月○日 007
王国の王女からホットラインがあった。
飼ってる犬が可愛いとかカッコイイとか、散々ペット自慢した挙句に一方的に切られた。
何だあれ? 暇なのか? あの女、緊急用ホットラインを雑談用の何かと勘違いしてるんじゃないか?
何か釈然としない。
×月×日 008
王国の王女からまたホットラインがあった。
あの女、絶対ホットラインを雑談用のオモチャだと勘違いしてると確信した。
また散々ペット自慢に付き合わされてウンザリしたが、お陰で多少は有用な情報も得られたので良しとしよう。
何でも最近、牧場の経営を始めたらしく、軍馬を増やしているらしい。
何を突然牧場とか思いついたのかは不思議だが、あの女のやることだからメリットがあるのだろう、こちらも検討の余地がある。こうして向こうから勝手に情報が舞い込んでくるのは、ホットラインの思わぬメリットかも知れない。
×月△日 009
情報部工作係から、あの糞野郎対策の新しい兵器を開発したと報告があった。
ウキウキして試作品を見たが、馬車に魔法を遮断する金属を張り巡らせたものだった。
要するに、魔法盗聴防止の会議室を動けるようにしたものだな。
相当な重量だが、 《フローティング・ボード/浮遊板》の魔法で浮かべることによって軽い力で引っ張ることができ、隙間無く分厚い金属で覆ってあるので矢や投石も防げるという説明だった。
確かにこれなら中の兵士は守られるだろう。
しかし、一通り説明を聞いた後で、「これは誰が引っ張るんだ? 馬も御者もいい的だよな?」と質問したら黙ってしまった。
あいつら全員クビにすべきか?
×月◇日 010
かねて検討させておいた牧場運営計画案の報告会議があった。
やはり軍馬を増やすのは費用対効果を考えても軍の増強に効果が高いそうで、あの女の先見の明は利用価値がある。
雑談相手にされるのは癪に障るが。
いきなり軍馬ではパクりが露骨(帝国のメンツというものがあるからな)なので、最初は食料にもなる山羊や羊あたりを提案したのだが、〝激風〟とカーベイン将軍が泣いて強硬に反対するので牛にしておいた。
なにも泣かなくてもいいのに。
×月▽日 011
ナザリックにいるロウネから久しぶりに便りがあった。
ナザリックには森があって風が吹いて雨が降るとか、ドライアドがリンゴ栽培してるとか、墓場の中で何を言ってるのか意味不明だ。あそこは墳墓だぞ?
なんでも「休日」というものが頻繁あり、その前日にはバーで飲み明かすのだとか。
祭りの一種なのだろうか?にしても墓場の中のバーなんて悪趣味な・・・。
ナザリック生活をエンジョイしてると書いていたが、完全に洗脳されて狂ってしまったのかも知れない。
優秀な人材が壊れていくのは悲しいものだ。
×月□日 012
情報部工作係から、あの糞野郎対策の新兵器を改良したと報告があった。
改良試作品を見たが、馬車を引く軍馬に浮遊魔法を掛けた装甲を被せるというものだった。
突っ込み所が多すぎるが、改良の努力は努力としてそこは黙っておく度量は見せるべきだろう。
しかし、以前から思ってた疑問についてはどうしても我慢できず、「で、中の人間はどうやって攻撃するんだ?」と聞いたら黙ってしまった。
あいつら全員クビにしておいた。
2016/03/20 各話にナンバリングを追加しました。
2016/04/16 文章の加筆・修正等を行いました。
2016/05/01 文章の修正を行いました。