テレワークを利用した
リストラが加速する

「体にね、通勤が染み付いちゃって」と、ある50代のサラリーマン。「それにね、今まで家庭をないがしろにしてきたもんだから、家で仕事をしたくても煙たがられるんだよ。ぼくの居場所は会社にしかないんだよ」と苦笑いを浮かべる。

 アフターファイブも居場所に困る。「接待も駄目。いつもみたいに部下を誘って飲みに行くのも駄目って会社に口酸っぱく言われちゃった。居酒屋でお仲間を探そうと思う」と語り、なんとも哀愁が漂う。

 頼まれてもいないのに、わざわざ出社してくるおじさん社員は、至る所に出没している。ちなみにJTは、上司の許可がなければ出社できないよう運用を改め始めたという。

 終身雇用制の下で会社に対して忠誠心を持って人生をささげた世代は、テレワークになじめなかったり、デジタル音痴だったりする。彼らを「働かないおじさん社員」「使えないおじさん社員」とひとくくりにはできない。

 とはいえ、今回テレワークを体験した多くのビジネスパーソンは気付いているだろう。オフィスに来なくてもできる仕事はたくさんあり、オフィスに来るだけで仕事をしていない人がたくさんいる、ということに。

 ある経団連幹部は「コロナ危機をきっかけにテレワークを利用したリストラが加速する」と断言する。経団連かいわいや、経営者・幹部の間で、これがよく話題に上るようになっているのだ。

 テレワークはITツールを使って仕事が進む。勤怠管理だけでなく、働きぶりもより精緻にデジタルデータで明らかにできる。アナログな「追い出し部屋」などから進化した、「新型リストラ」が始まる。

 本特集#2(3月30日公開)では、この新型リストラの正体に迫る。

Key Visual by Noriyo Shinoda