【インタビュー】2巻発売記念!『お兄ちゃんはおしまい!』の制作秘話や今後の展開などのウラ話まで質問攻め!

【インタビュー】2巻発売記念!『お兄ちゃんはおしまい!』の制作秘話や今後の展開などのウラ話まで質問攻め!
     
元少女漫画大好き芸人。
少女漫画歴22年、生涯で10000冊以上、5000作品以上の少女漫画を読んでいます。
男りぼんっ子です。男目線で少女漫画の魅力を語ります。
   

田舎はるみの漫画家さんインタビュー企画、第22弾!

今回は、以前Comee mag.のオススメ紹介でも取り上げさせていただいた『お兄ちゃんはおしまい!』の作者・ねことうふ先生にインタビューをさせてもらいました!

 

 

『お兄ちゃんはおしまい!』はTS(transsexual)という性転換を題材としたジャンルの物語です。
TSジャンルの作品はここ数年でも増えてきており、注目度が高まってきているジャンルの一つです。

『お兄ちゃんはおしまい!』はTSモノをあまり読んだことがないような方でもかなり読みやすく、可愛らしくてほっこりする内容に定評がある作品です。

1月26日には単行本の2巻も発売されるとのことで、作品のウラ話をたくさん聞かせてもらいました!

今回もプレゼントキャンペーンの企画をさせていただきましたので最後までお見逃しなく◎

 

 

 

【プロフィール情報】

ねことうふ
2004年から同人誌を作り始め、2007年には『まんがタイムきららキャラット』で商業誌デビュー。
現在は商業活動と同人活動を同時に行っている。

イメージキャラクターのオオサンショウウオは過去に読者の方からリクエストされて描いたイラストが好評だったことからそのまま使用しているとのこと。

 

『お兄ちゃんはおしまい!』のウラ話!

大好きなTSモノをオリジナルで

田舎: ねことうふ先生、今日はよろしくお願いいたします! 早速ですが、1月26日に商業用コミック版『お兄ちゃんはおしまい!』の2巻が発売されますね。おめでとうございます!

ねことうふ: ありがとうございます。

田舎: 今日は『お兄ちゃんはおしまい!』について色々とお伺い出来ればと思うのですが、先生は元々は二次創作をメインでやられていたんですよね。そこからオリジナルで『お兄ちゃんはおしまい!』を描こうと思ったきっかけのようなものはありますか?

ねことうふ: 元々オリジナルは何かやりたいと常々思っていて。僕はTSモノっていうジャンルが昔から一番好きなんですが、ちょうど『君の名は。』が流行った時にその二次創作を描いてpixivとかに投稿していたんです。

田舎: あ、投稿されていましたね! 拝見しました!

ねことうふ: それがすごく評判が良くて、フォロワーさんの数もぐーんと増えまして。「これはいいタイミングだ」と思って(笑) そこでフォローしてくださった方は特に、同じジャンルの作品ならそのまま付いてきてくれるじゃないかと。そこから始めたのがきっかけですね。

田舎: タイミングもちょうどよかったんですね。先生はTSジャンルがお好きと単行本1巻のカバーの見開きにも書かれていましたよね!

ねことうふ: 中学・高校の時からずっとTSモノの漫画を集めています。昔はその手のジャンルの作品ってあんまりなかったんですけど、ここ10年ぐらいで増えてきた印象ですね。1~2巻で終わるような作品が多かったんですけど、最近は長く続く作品も増えてきて、いま密かにブームがきてるんじゃないかと思っています。

田舎: 確かにここ最近で増えてきたイメージがあります。先生が個人的に「これは神作品だ!」と思う作品ってありますか?

ねことうふ: 神作品というか、TSモノにハマるきっかけになったのは『らんま1/2』かもしれません。

田舎: あ、言われてみれば確かに『らんま1/2』もTSモノというかTS要素がありますね。

ねことうふ: ちょうど僕が子どもの頃の作品ですから、僕の世代だと「あの作品で目覚めた」という人も多いと思います。

田舎: なるほど。その頃はTSという言葉こそなかったものの、印象に残った人や何か惹かれるものを感じた方が多くいたかもしれないですね。

ねことうふ: 類似ジャンルで“男の娘モノ”も増えてきていますよね。

田舎: 増えていますね!

ねことうふ: 少女漫画だと『ミントな僕ら』ってご存知ですか?

田舎: 男女の双子のお話ですよね。僕の大好きな漫画です。

ねことうふ: 僕もあの作品もすごく好きで。

田舎: そうなんですか! あの作品も男の娘モノですよね。弟が姉を追って、女装して女子寮に入って女の子として生活を送る、っていう設定ですもんね。

ねことうふ: 少女漫画では珍しかったんじゃないでしょうか。

田舎: 僕はちょうど中学生ぐらいの時に読んでいたんですけど、”男の娘モノ”という意識は全然なかったですね。

ねことうふ: あの頃はそういう言葉もまだなかったですからね。

田舎: 「こんな設定ありえない!でも羨ましい!」と思いながらめちゃくちゃハマってました(笑)

ねことうふ: TSモノにしろ男の娘にしろ、なんというか、性別が揺らいでいるキャラクターに魅力を感じるんですよね。

TSの定石の蓄えを駆使して生まれる作品設定やストーリー展開

田舎: 『お兄ちゃんはおしまい!』の設定についてお聞きしたいんですが、引きこもりのお兄ちゃん・まひろと天才の妹・みはりが二人暮らしをしている、などの設定はどういうところから考えられたんですか?

ねことうふ: この作品はもともとTSモノの王道で行こうと思っていて。朝起きたら女の子になっていたっていうのはまさに王道ですよね。

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

ねことうふ: で、なんで女の子になったかと言うと、「実はそういう体質」だとか「呪い」だとかいろいろパターンがあるんですが、「薬を飲まされた」というのが一番わかりやすいかなと。

田舎: なるほど。

ねことうふ: あと背景やモブキャラをあんまり描きたくなくて(笑) 家の中だけで完結するお話にしたかったんです。じゃあ主人公は家から出ない自宅警備員にしよう。
なら家族に一服盛られたのかな。姉か妹か…妹のほうがイイな、そんな薬を用意できるなんて天才に違いない、という具合で。

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

田舎: 確かに天才にしか出来ないですよね(笑) みはりちゃんは飛び級で大学に通ってますよね。本来なら高校何年生ぐらいなんですか?

ねことうふ: 作中では多分描いていないんですけど、高校2年生です。

田舎: ちゃんと同い年ですもんね。

ねことうふ: そうですね。あとは、薬を飲ませる理由も必要じゃないですか。そういうところにも必然性を持たせたかったので、そこから組み立てていった感じかなぁ。

田舎: なるほど!

ねことうふ: あとはまぁ、ニート的な感じでぐうたらしてるちっちゃい女の子ってなんか可愛いじゃないですか(笑)

田舎: 可愛いですよね。ちなみに男性の時のまひろくんは何歳の設定になるのでしょうか? 

ねことうふ: これも明言はしていないんですけど、20歳前後のはずです。

田舎: そうなんですね! 女の子になってからはもう立ち位置的には妹みたいになってますよね。みはりちゃんの事をお姉ちゃんって呼んだりもして(笑)

ねことうふ: そうですね。

田舎: 精神年齢も幼くなっていますよね。

ねことうふ: もうただの子供ですよね。やっぱり精神は肉体に引っ張られると思うんです。

田舎: 1話目の最後に「お兄ちゃん改造計画」ってノートが出てきましたが、やっぱりゴールはお兄ちゃんの社会復帰になるんですか?

ねことうふ: どうなんでしょう。 一応まだそこはぼかしているんですけど、文脈的にはそうですよね(笑)

田舎: みはりちゃんがまひろくんとの関係を昔の頃に戻したいっていうような部分も少し見えましたよね。

ねことうふ: ええ、そういうのもありますね。

田舎: みはりちゃんはすごくお兄ちゃんっ子ですよね。

ねことうふ: そうですね。2巻の描き下ろしに、みはりちゃんの中学時代のシーンを少し入れていて。そこにも中学時代はお兄ちゃんのことがすごく大好きだった、という描写がちょっとあります。

田舎: 早く読みたいです! ちなみに家はいつもまひろちゃんとみはりちゃんの二人ですがご両親の設定とかもあるんですか?

ねことうふ: ありがちですが、海外で働いています。ただ、この作品に親を出すのは無粋かなと思っていて。現状、みはりちゃんが親代わりみたいなところもありますし。それに性に関する話に親が絡んでくるのはちょっと嫌じゃないですか。

田舎: 確かにそうかもしれないですね。一気に現実感が出てきたりもしますしね。

ねことうふ: 親がばっちり出てくる作品もたくさんあるんですけどね。読者としては全然アリなんですが、僕の描きたいものでは無いなという感じです。

田舎: なるほど。お話のシチュエーションはどこから思いつかれるんですか?

ねことうふ: 今まで数々のTSモノを読んで得た定石の蓄えがあるので、「今回はこのシチュエーションでこのパターンにしよう」みたいな感じですね。

田舎: その中でこの子達ならどう動くのかを考えていって、というような感じでしょうか?

ねことうふ: そのシチュエーションに持っていくため組み立てていっています。

田舎: 今のところはまだまだネタ切れはなさそうですか?

ねことうふ: どうでしょうね〜(笑) 連載の方では中学校に通い始めたので、学校でのシチュエーションっていうのはまだ色々あると思います。

田舎: 学校行事と季節のイベントのお話もできますもんね。でもすごいですよね。引きこもりをしていた子がコンビニに行けるようになり、駅まで行けるようになり、学校に通うことになったんですもんね。

ねことうふ: そうですね。ちゃんとちょっとずつ成長していくように描けたので良かったです。

田舎: ちなみにまひろくんが引きこもりになった理由をさらに掘り下げるとか、そういったシリアスな話も今後あったりしますか?

ねことうふ: 暗い話は極力やりたくないって思ってます。引きこもりの理由は3話ぐらいでちょっとほのめかしてますけど。

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

田舎: 優秀な妹に引け目を感じてしまうんですよね。だんだん自信がなくなってきて、重圧に押しつぶされてみたいな。

ねことうふ: 一応そういうことにはなっているんですが、あんまりそこをがっつり描くとしんどくなっちゃうので。1話で完結するぐらいならいいんですけど、そういう部分を引っ張って終わると、今はもうみんな嫌がっちゃうので。できるだけ明るくて癒されるような作品にしたいなと思ってます。

田舎: なるほど。時代的にもそういう流れなんですね。「みんなが幸せになる」とか「誰も不幸にならない」みたいな漫画がここ最近でもすごく増えてきた印象があります。

ねことうふ: アニメとか漫画の感想などのまとめサイトのようなものを見ると顕著ですけど、ほのぼのコメディ作品だったのに途中で急に妙なシリアスシーンがあってみんなががっかりする、みたいなのをよく見ますね。みんな疲れてるみたいで、そういうのは求めていないのかもしれませんね。

田舎: なるほど……!

ねことうふ: 僕個人としてはそういう重い話とかサスペンスや鬱展開とかも結構好きなんですけどね(笑)  ただ、この作品の読者さんからはきっとそこは求められていないと思っています。

TS好き以外の人にも好かれる作品に

田舎: 今は先生のファンの方達はどういう方が多いんですか?

ねことうふ: どういう方が多いんですかね。TS好きの人はやっぱり読んでくれていると思うんですけど、最近ではそういう趣味のなかった人達も手にとってくれてるみたいで。「何かに目覚めそう」とかコメントをもらったり(笑)

田舎: あはは(笑)

ねことうふ: この作品はニコニコ静画にも投稿しているんですけど、そこはコメントがすごく多いですね。

田舎: あ、めちゃくちゃ多いですよね!

ねことうふ: とてもありがたいです。

田舎: 男女比で見るとジャンル的にも男性の方がやっぱり多そうですよね。

ねことうふ: そうですね。男性の方が多いと思います。

田舎: やっぱりターゲットの方も意識して描かれているんですか?

ねことうふ: 最初は「TS好きの人に読んでもらえればいいかな」ぐらいでしたね。

田舎: そうなんですね。今ではもともとTSに興味のなかったような読者の方も増えてきたとのことでしたが、TSジャンルが初心者の方にも読みやすいように意識されているんですか?

ねことうふ: そうですね。コミックスとかだと別ですけど、同人誌とかで見るとTSモノってほぼ成人向け作品なんですよね。

田舎: あー確かにそんなイメージあります。

ねことうふ: こういう一般向けの作品であっても、やたら胸がはだけたりとか(笑)

田舎: お色気シーンが多めなんですね。

ねことうふ: そうですね。やっぱりそういうシーンをたくさん入れてしまいがちなんですけど、そこはあえて排除しています。そういうところで引いちゃう人も結構いると思うので。

田舎: どっちかというと、“お色気”というより“萌え”的な感じですか?

ねことうふ: 可愛い、癒し、みたいな感じですね。雑誌だと『まんがタイムきらら』系のようなイメージです。

田舎: まさにそうですよね。あくまで可愛らしいとか癒しっていうのがベースというか。

ねことうふ: 絵的に僕自身がそういうのを描くのが苦手っていうのもあるんですけど、下手に裸を描いても色っぽくならないし、あえてやらないようにしていますね。ネーム上では割と際どいことをしているシーンがあったりはしますけどね。

田舎: あ、なるほどなるほど。可愛い世界観なので女の人でも手が出しやすいですよね。お話の展開やテーマなどは先生の好きなこともたくさん詰め込まれていますか?

ねことうふ: そうですね。1巻なんかはもう好きなシチュエーションを1話ずつどんどん盛り込んでいった感じです(笑)

田舎: その中でも特にお気に入りのエピソードとかってありますか?

ねことうふ: 個人的には4話のネットゲームをする話が結構好きです。

©ねことうふ/一迅社2018

 

田舎: 辻ヒールをして遊んでいるやつですね。

ねことうふ: 男にもてはやされて、なぜかだんだん気持ちよくなってくる…TS娘にありがちな症状です。美味しいシチュエーションなんですけど、引きこもりなので男に囲まれる機会がなくて。オンラインゲームという形で描けて良かったです。

田舎: 急にちやほやされると、きっとテンション上がりますよね(笑) 先生もゲームはされるんですか?

ねことうふ: 10年以上前になるんですけど「ラグナロクオンライン」をちょっとやっていました。1年ぐらい棒に振っちゃいましたね(笑)

田舎: あはは(笑)

ねことうふ: それ以降はできていないんですけどオンラインRPGの雰囲気とかはすごくわかりますね。

田舎: その時は先生もやっぱり女の子のキャラでされていたんですか?

ねことうふ: そうですね。まひろちゃんが作中でも語っている「男キャラを使う意味がわからない」っていうのはもう僕の思っていることです(笑)

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

©ねことうふ/一迅社2018

 

田舎: それは僕もめちゃくちゃわかります!(笑) 僕もゲームをするときに主人公の性別を選べるってなった時は絶対女の子を選んじゃいます(笑) ちなみに、逆に描かれる上で苦労される部分もありますか?

ねことうふ: まひろちゃんの服を毎回変えるようにしているんですけど、これがなかなか大変です。ファッションに詳しいわけでもないので苦労してます。

田舎: どうやって勉強されてるんですか?

ねことうふ: ネットで調べたり、たまに本屋で女子中学生向けの雑誌を買ってみたりですね。

田舎: 雑誌を参考にされる方って多いですよね。年齢・時代で流行りの服装も変わりますもんね。

ねことうふ: みはりちゃんは毎回白衣なので楽でいいです(笑)

▶︎Page.2:同人活動にドラマCDの制作まで! ねことうふ先生の様々な活動については次ページで!

 

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