ライター一瀬浩司
左金を上げる際は仕掛けがないか注意すべし。土居矢倉の組み方(2)【玉の囲い方 第78回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年07月08日
前回のコラムでは、「土居矢倉」に組む手順を見ていきました。今回は土居矢倉の組む際の注意点を見ていきましょう。それでは、土居矢倉に組むまでの手順をまずは復習していきましょう。初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲7七銀、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲7八金、▲6九玉、▲5八金、▲6六歩、▲7九角、▲6七金左、▲7八玉(第1図)。
【第1図は▲7八玉まで】
それでは、組む際の注意点を見ていきましょう。
▲6七金左は8筋が薄くなるので注意
組む際の注意点:第2図をご覧ください。
【第2図は△3一角まで】
よくありそうな矢倉の序盤戦ですね。ここで▲3七銀や、▲6七金右なら普通ですが、土居矢倉に組む▲6七金左はどうでしょうか? 実はこの形では危険なのです。すかさず△8六歩と突かれ、▲同歩△同角▲同銀△同飛▲8八歩△8七歩(第3図)と強攻されるとどうでしょう?
【第3図は△8七歩まで】
第3図から、▲7七金△8二飛▲8七歩で大丈夫なように見えますが、▲7七金には△8八歩成と踏み込まれ、▲8六金△7九と▲同玉に△6四角と飛車金両取りを掛けられてしまいます。以下▲3七銀△8六角となり、▲6一飛があるのでやや後手が無理な感じもしますが、先手も好んで指したい変化ではないでしょう。
また、第3図から▲8七同歩△同飛成▲8八歩として竜を作らせて収めようとするのは、一発△7八銀と打たれてしまいます。以下▲6八玉は△7九銀不成▲同玉△8二竜で、駒の損得なしで後手にだけ竜を作られてしまいますし、▲5九玉も△8二竜と逃げられておいて、▲4六角と逃げたときに△6七銀成▲同金△8八竜と侵入され、いずれも先手不利となります。
あまり成立することはありませんが、このように▲6七金左と上がる瞬間は、8筋が薄くなるので注意が必要となります。 第4図は平成30年2月23日、第66期王座戦2次予選、▲畠山鎮七段ー△藤井聡太五段戦(肩書は当時)です。
ちょっとした形の違いで仕掛けが成立することも
【第4図は▲4五歩まで】
いま、藤井五段(当時)が△4三金左と上がった手に対し、62分の長考で畠山七段が▲4五歩と仕掛けたところです。これも2筋の薄さに目をつけた仕掛けですね。ここで△3二玉とすれば無難とはいえますが、▲4四歩△同金▲4五歩と大きな拠点を作られてしまいます。以下△4三金引▲4六角となれば、△6五歩と仕掛けることも難しくなり、あっという間に先手の作戦勝ちになりますね。
というわけで、藤井五段(当時)は強く△4五同歩と取りました。▲3五歩△同歩▲同角△4四銀▲同角△同金▲2四歩と進み、△同歩は▲同飛で十字飛車が決まります。2筋が破られたようですが、△1五角(第5図)が用意の切り返しです。
【第5図は△1五角まで】
▲2七飛△2四角と進み、ひとまず危機は脱しました。もし、1筋の突き合いがあれば、第5図の△1五角はありませんね。ちょっとした形の違いで仕掛けが成立することもあるので、左金を上がる際には相手からの仕掛けがないか、よく注意することが大切になります。