2020年03月26日 05時30分 公開

「新作を書いても書いてもけなされて...」直木賞作家・角田光代が語った不遇の時代

3月21日の「サワコの朝」のゲストは、直木賞作家の角田光代さん。1990年、23歳の時に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し作家デビュー。2005年には「対岸の彼女」で直木賞を受賞。独自の視点から奥深い女性心理を細やかに描いた傑作の数々は、多くの読者を魅了。しかし、デビュー後は“新作を書いても書いてもけなされた”不遇の時代を過ごしたそうで…。平成の30年で13の文学賞を受賞した角田光代ワールドの魅力に迫りました。

本の面白さに目覚めたのは"できない子"だった幼少期
作家生活30年。数々の話題作を世に送り出してきた角田さんの作品は、多くの文学賞を受賞したほか、映画化、ドラマ化された作品も。中でも不倫相手の赤ん坊を誘拐する女性を描いた「八日目の蝉」や、横領に手を染める主婦の闇深い心理に迫った「紙の月」は大ヒット。まさに、押しも押されもせぬベストセラー作家として活躍してきました。最近は、直木賞の選考委員に就任した角田さん。しかし、その話題になると「そんな悲しそうな顔をしないで」とサワコに言われるほど俯き、「普通に好きで読むのと違って、仕事的に読むのがちょっと辛いですよね」と本音を語りました。
そんな角田さんの作品に出てくる女性には裏と表があると話すサワコは、「人間一人の二面生みたいなものまでをちゃんと齟齬なく書けるところが凄い!」と称賛。続けて「女の子ばかりの中学・高校を出ていると、自分以外の人たちの裏表みたいなものを強烈に感じたり...?」と問うと、角田さんは「私に"特別"があるんですよ。非常にネガティブで。凄く悪いものを見ようとするとこが多分にあって。それを自覚していて。だから書いちゃうんだと思います」と、角田ワールドの魅力"裏と表"の根源を語りました。

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幼少期は、3月生まれなことから同学年の子と比べ、色々なことが出来ずに苦しんだという角田さん。その頃の記憶は今でも残っているそうで、「ハサミで円を切りましょうとかも出来なかったし、トイレに行きたいと言えなくて、1人だけいつも替えのパンツが用意されていた」と回想。「喋ることができないし、話す友達もいないので本をとりあえず開いていれば何かやることがあると思ってもらえると思って本を読んでた」と、そのことがきっかけで本の面白さに目覚め、作家を志したと明かしました。

自堕落な生活から一転。大きな転機となった「空中庭園」
角田さんが、本格的に作家を目指し始めたのは小学校2年生の時。「あまりにも早く小説を書く人間になりたい、大人になったら作家になりたいと決めてしまったがために、子供だから、国語だけやってればよくて他の勉強はしなくてもいいだろうと思っちゃったんです」と切り出すと「気がついたら全くわかんなかったですね、授業が。小学校5年生の時には国語以外、何をやってるのかわからなかったです」と、作家になるべく大胆に邁進した小学校生活を明かしました。その甲斐あって(!?)現在は人気作家として活躍する角田さん。しかしながら、全く評価されない不遇の時代もあったそう。

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「評論家の方に新作を書いても書いてもけなされて。要約すればこの作者はバカだっていう。小説というものをわかってないとか、幼稚であるとか」と酷評されたと言うと「一番最低にドヨーンとした時は。3ヶ月間書くのを辞めました」と、またしても大胆な行動に出たことを明かしました。「夕方4時にお買い物に行って、夜7時に料理と晩酌を始め、夜中の3時位まで飲み続ける。飲み疲れて眠り次の朝、昼過ぎに起きて4時になったら買い物に行って...」と自堕落な生活を送り続けて3ヶ月。ついにその生活に飽きた角田さんは、再び執筆を開始。その後、発表した「空中庭園」では大きな転機を迎えることに。デビュー以来ずっとおじいちゃんの編集者に"あなたの書くものは暗い"と言われ続けた角田さんは、久世光彦さんの書評を見た時に"その意味"がわかったそう。「世の中が綺麗かもしれないってことを書いてもいいんだと考え直した。絶望や失望で終わるのはやめようと思った」と、この作品をきっかけに作風が大きく変わったことをサワコに話しました。

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「サワコの朝」はインタビューの達人・阿川佐和子が土曜の朝に素敵なゲストを迎えて送るトーク番組です。MBS/TBS系で毎週土曜あさ7時30分から放送中。ゲストの心に残る音楽と秘蔵トークをお楽しみに!

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次回、3月28日のゲストは落語家の林家木久扇&林家木久蔵親子。
暗くなりがちな世の中のムードを吹き飛ばす、笑いあふれるトークを繰り広げます。

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