新型コロナウイルス感染症の拡大で政府は対策本部を設置した。小池百合子東京都知事も外出自粛要請を出した。患者の急増を抑え必要な人に医療を確保する。それには首都圏の対応が重要になる。
政府対策本部の設置は、先に成立した新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく措置だ。
設置でただちに緊急事態宣言を出すわけではないが、国民生活に大きな影響が生じれば宣言が可能となる。宣言は私権制限を可能にするだけに政府は専門家の意見を聞き慎重に判断すべきだ。
本部設置の理由のひとつは、都内の感染拡大だ。感染経路の分からないケースが増えている。政府の専門家会議は十九日、都市部の感染拡大に警鐘を鳴らしていた。急激な拡大で感染を防げなくなる事態を警戒しなければならない。
避けなければならないのは、急増する患者数が提供できる医療態勢を超えてしまう事態だ。イタリアで問題となっている。重症化する場合、急速に悪化すると指摘されている。必要な医療を受けられないと救える命を救えなくなる。
厚生労働省は三月上旬時点の試算で、何も対策を取らなかった場合に東京都では流行ピーク時一日当たり外来患者は約四万五千人、入院患者は二万人を超えると推計している。
まず必要なのは医療提供の態勢強化である。感染症の専門医療機関は全国に約二千床あり、政府は緊急時には五千床以上を確保する方針だ。だが、一定の地域に患者が集中すれば足りなくなる。一般病院も外来診療や入院治療に取り組むよう態勢を整えてほしい。
大阪府が検討しているように軽症者は宿泊施設に滞在してもらうなどの割り振りも必要だろう。
高齢者が多く入院する慢性期疾患対応の医療機関は集団感染が心配だ。医療スタッフが感染して職場から離れると施設の維持も難しくなる。人繰りなど医療機関同士の連携にも知恵を出したい。
救える命を救うために、個人でできることがある。不要不急の外出を避けたり、自宅での仕事に切り替えるなど感染リスクを少しでも下げる努力をしたい。
首都圏は毎日多くの人が移動する。感染防止対策は、東京都だけでなく近隣の自治体とも連携して取り組む必要がある。
四月からは入学や入社で若い人たちが地方から首都圏に集まり、往来が増える。東京の感染防止対策は全国への拡大防止にも役立つはずだ。
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