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【社説】

五輪延期と経済 影響精査し対応 迅速に

 新型コロナウイルス拡大による五輪延期が、国内経済にさらなる打撃を与えようとしている。官民共に膨大な調整を余儀なくされ損失は計り知れない。雇用などへの波及前に迅速な対応を求めたい。

 政府と国際オリンピック委員会(IOC)の合意だと五輪は一年程度延期となる。これを受け日本側はさまざまな変更作業に着手するが、その間の経済的な損失は甚大だと指摘せざるを得ない。

 インフラ面では、新競技施設について少なくとも一年分の維持費が発生する。既存施設を借りるケースでも、複雑なスケジュール調整が必要で、違約金などの問題が出る。ボランティアへの対応のほか、スポンサー企業や警備会社との契約も修正を迫られる。

 五輪後に住宅となる選手村の居住希望者との契約も影響が避けられない。周辺地域のインフラ整備の計画変更も無視できない。

 五輪施設関連については、まず国が前面に出て調整作業を進め、開催までの具体的な行程表を早急に提示すべきだ。現場の不安は日増しに高まるはずで、混乱が起きる前に対応策をまとめ、実行に移してもらいたい。

 一方、運輸関連企業や宿泊施設、旅行業者など、すそ野が広い観光業界への影響も深刻だ。新型コロナの影響で売り上げが激減する中、五輪延期はとりわけ中小にとって致命傷になりかねない。

 すでに中小のホテルやバス会社、飲食店などで倒産や解雇は始まっている。非正規労働者を中心に不安は頂点に達しているはずだ。五輪前に連鎖倒産や大規模なリストラが加速しないよう、これまで以上にきめ細かで効果的な資金支援が必要だろう。

 空前規模の計画変更に伴い五輪予算全体は確実に膨らむ。追加負担の在り方についても、直ちに国と自治体が協議してしっかり再調整しなければならない。

 五輪費用についてはこれまでも国や東京都、IOCなどの見解が分かれ決着にかなりの時間を要した。ただ国や自治体の負担増は国民負担に直結する。世界的な感染症拡大という想定外の事態であるにしても、安易な決定だけは許されない。

 ウイルスとの死闘に打ち勝ち、盛大な五輪を開催することを多くの人は望んでいるはずだ。そこに至るためには、国際協調の下で可能な限りの対策を実行する必要がある。国内の暮らしの安定が五輪実現の前提であることを忘れてはならない。

 

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