スピン経済の歩き方:楽天の「送料無料」は大丈夫なのか ロジックが微妙 (1/5)

» 2020年02月04日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

 いくら会社名が「楽天」だからって、その考えはさすがに楽天的すぎやしないか。

 3月18日から導入される「楽天市場」の「3980円以上注文したら送料無料」という共通ルール。送料を負担する出店者からの反発を受けて楽天は、送料の設定が分かりにくい「弱み」が克服されて顧客満足度が向上するので、流通総額が十数%もアップするというのだ。

 売り上げがアップすれば、出店者は配送コストを回収できる。楽天側も手数料などで収入が増えるので、自社配送網を拡大するための投資ができる。使い勝手がよくなれば、さらにユーザーが増えるのでAmazonを追い抜かすことも夢ではない。要するに、送料無料ラインを統一というのは、出店者、楽天、ユーザーがみんなハッピーになる、「三方よし」なので心配するなというワケだ。

「強気の姿勢」を崩さない、楽天の三木谷社長

 もちろん、そこは超一流企業なので、そこまでバラ色の未来を唱えるにはちゃんとした根拠がある。南米最大級のECモール「メルカドリブレ」だ。

 このアルゼンチン発祥のIT企業は、メキシコやブラジルなど中南米の国々で次々とシェアを獲得し、今や「南米のアマゾン」というややこしい異名をとっているほど順調に成長しているのだが、そのドライバーとなっているのが「送料無料ラインの統一」に他ならない、と楽天は主張している。

 もともとメルカドリブレも楽天市場同様、出店者によって送料がバラバラだった。しかし、送料無料ラインを統一したところ、横ばいで推移していた流通総額が急上昇。ということは、同じモール型で、同じく送料無料ラインがバラバラの楽天も同じことをやれば、流通総額が劇的に拡大することは間違いない、というのである。

 ただ、このロジックはかなりビミョーだ。

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