ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【閑話】悲劇のヒロイン ネタ武器

「あ、あれ?シズさん?……えっと、その……。め、珍しいですね。」

 

「…………あ。マーレ様。」

 

 本に目を落としていたシズは視線を上げ、その翠眼を驚いた顔をしているマーレ・ベロ・フィオーレへゆっくり動かす。マーレの記憶の中で、シズ・デルタが第十階層にある巨大図書室(アッシュールバニパル)にやってくるのはギミックの検査を行うときくらいで、こうして座って本を読んでいる姿はあまり見たことがない。横には大量の軍事関連の書籍が積まれており、シズが手にしている本のジャンルだけが異質だった。

 

「……。」

 

「…………。」

 

「……。」

 

「…………。」

 

「……。」

 

「…………。」

 

「そ、その!ご本、面白いですか?」

 

 しばらくお互いを凝視しあい、沈黙に耐えかねたマーレが根負けして話題を振る。どうやらシズが読んでいるのは遥か昔に存在した女性の偉人伝のようだった。

 

「…………すごく。悲しい話です。」

 

「へ、へぇ!僕も読んでみようかなぁ。どんなお話なんですか?」

 

「…………神様を信じて。戦った女性。でも最期には魔女として火刑に処されるお話……です。」

 

「わぁ、司書長さんが勧めてくれたんですか?」

 

「…………いいえ。アインズ様のご命令でミリタリーの基礎書籍を集めていました。これは…………たまたま手に取ったもの……です。」

 

 あらすじを聞いたマーレからすれば、偽りの神を妄信していた人間の伝記としか思えず、興味も惹かれないものであったが、シズの無表情に浮かぶ憂いの感情を察し、何も言うことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「…………ということでメイド服さえ着ていれば火炙りにされない。安心。」

 

「いや、シズ先輩!何がどうしてそうなったのか、1から説明してくれません!?」

 

「…………男装が火炙りの遠因だと。流石にマーレ様の前では言えなかった。」

 

「小声で何を言っているんですか!?って、わたしにメイド服なんて似合いませんから!この前骨身に沁みましたから!だから服を脱がさないで下さい!ああああ!」

 

 

 

 

 ●

 

 

 

 

「これまた懐かしいものが出てきたなぁ……。」

 

 場所は宝物殿。アインズはさり気なく分類されていた【ネタ武器】と記された宝箱の数々を開けて、苦笑しながら中に入っていた武具・防具を手に取った。

 

 アインズ・ウール・ゴウンの猛者達も人間だ。悪ふざけや駄洒落で造ったMMORPG定番とも言える、くだらないネタ武具が多数存在する。

 

 【ひのきの棒】【鍋のふた】【太刀(さかな)】【穴あき包丁】【パイプ倚子】【凍結の太刀(冷凍マグロ)】【バールのようなもの】【はりせん】【ピコピコハンマー】【エレキギター】【傘型仕込み刀】とナザリックの宝物殿に眠るものだけでも枚挙に暇が無い。

 

 ペロロンチーノさんの造った【溶けかけたスティックアイス棒】【恵方巻き】などは、運営から注意勧告を受けアカウント停止の危機になりかけ、姉であるぶくぶく茶釜さんから泣くまで説教されていたほどだ。

 

 ……ネタ武器とはいえ、全てナザリックに名を連ねる至高の御方々の作品、どれも半端なデータ量ではない。例えば【凍結の太刀(冷凍マグロ)】など、凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)・改を遙かに上回る冷気ダメージと斬撃力を誇る。何故刃も無いのに斬撃ダメージを与えるのかは知らないが〝そうあれ〟と造られたのだから仕方がない。

 

「俺もみんなと悪ふざけでつくったなぁ。どんなのを造ったっけ……。」

 

 ユグドラシルの思い出に浸りながら、仲間たちとの幸せだった過去を回想する。それは絶対支配者の数少ない安寧の時間。長くは許されない、それ故に貴重な時。

 

「…………。」

 

 そして残念なことに、貴重な時とは長く続かないのが常である。

 

「し、シズか!?そうか、宝物殿のギミック点検の日であったか!あははははは!」

 

「…………アインズ様のご思考をお邪魔した無礼を御赦し下さい。」

 

「気にすることはないぞ!ナザリックのため、よく多忙な任務を遂行してくれている。」

 

「…………当然のことで御座います。」

 

(そういえば階層守護者全員には褒美を与えたけれど、プレイアデス全員には渡していないな。セバスはツアレの件があるから急ぐことはないが、働きには褒美を以って答えねばな。)

 

 アインズがそんな考えをしていると、シズの視線が一つの投擲武器(ネタ)に走っているのが見えた。

 

「シズ、この武器が気になるか?」

 

 正直データ量も少なく、確か第六階層大森林を作るときブループラネットさんが試作した品だ。余りにも場違いだったため除外し捨てようとしていたが、アインズが勿体ないので投擲武器に改造したものだと思い出した。

 

「…………いえ。とんでもございません。」

 

「ふむ、そうか。」

 

 シズの冷静な声に、アインズもその場で適当な褒美を渡そうとした自分を戒める。シズの瞳が少し輝いて見えたのはきっと宝物殿の宝が光となり反射したせいだろう。

 

(ブループラネットさんは花言葉が素敵だと言ってたな。なんだったっけ?)

 

 アインズは手のひらに乗せた植木鉢の植物を見ながら、ひとり思考に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

「あーーー!シズ先輩!あぶな……って針の方がねじ曲がった。流石です……。」

 

「…………問題ない。うん。うん?」

 

「も~~、シズ先輩は気に入ったものにイチエンシールを張らないと死ぬのですか?」

 

「…………これ。どこかで見覚えがある。どこだろう?」

 

「サボテンがですか?そんなに珍しく無いとは思いますが。」

 

 シズは小さな植木鉢に花咲く丸いサボテンを見ながら、消された記憶の残滓を探り、首をかしげていた。

 

 

 

 


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