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 今の経営委員会の体制で運営を続けることは不適切である。少なくとも委員会幹部が明確に責任をとらない限り、放送の自主自律という原則について疑問符がぬぐえないだろう。

 かんぽ生保による不正販売の報道をめぐり、NHKの経営委が当時の会長を厳重注意するまでの経緯がわかってきた。2018年秋に開かれた会合の資料を、経営委が公表した。

 日本郵政グループから申し入れを受けた経営委は、当時の上田良一会長を出席させ、その場で番組を批判していた。「作り方に問題があるのでは」「一方的になりすぎた気がする」などの発言があったという。

 放送法は、番組作りについて「何人からも干渉され、又(また)は規律されることがない」と定め、経営委員が個別の番組編集について、その規定に抵触することを禁じている。

 国会の同意を得て首相が任命する経営委員と、実際に番組を作る執行部との間に厳格な一線を引くことに重い意味があり、NHKという公共の報道機関の根幹を成すルールである。

 しかし会合での発言内容について、当時、委員長代行だった森下俊三・現委員長は、あくまで「意見・感想」にすぎず、番組への干渉には当たらない、と主張している。

 それがNHKの最高意思決定機関としての認識であることに慄然(りつぜん)とする。報道に不満をもつ取材対象から申し入れを受け、番組作りに苦言を呈した行為をどう正当化できるのか。

 しかも朝日新聞の取材によると、森下氏自身が会合で、番組の取材を「極めて稚拙」と評するなど、批判的な議論をリードしたとされる。放送法に基づく基本原則を理解できていない委員長が、このまま職責を適正に果たせるとは考えにくい。

 問題が発覚してから半年あまり、経営委の説明は変転してきた。「透明性の観点から考えれば、議事録で公表すべきだったと反省している」というが、いまだに発言者名などの詳細は明らかにしていない。

 今後については、番組についての発言が疑念を招かないようにするとしつつも、「状況によっては意見を述べ合うこともある」と含みも残した。経営委は今なお問題の核心に向き合っているとは言いがたい。

 NHKは4月からネット同時配信を本格的に始めるが、変わらぬ使命は、報道機関としてあらゆる権力を監視し、視聴者の知る権利を保障することだ。

 外部からの一切の圧力に抗し、自主自律の原則を守る決意がなければ、NHKは存立の基盤を失う。経営委は見失った重責を改めて考え直すときだ。

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