ニュースレター 2018 11月
便秘、解消法はいろいろ言われますが、決め手がないのも事実。効果がなかったら、便秘薬を飲むしかありません。しかし、この便秘薬が曲者。どう曲者なのかは、追ってご説明します。また、便秘をすると精神的に不安定になったり、不眠になったりします。どうしてでしょう。
3回に分けて、便秘について説明していきます。
いろいろな病気に便秘を伴う場合、便秘が解消されないと、病気は良くなりません。便秘について3000年以上にわたって考え実践し続けてきた東洋医学の視点から見つめてみましょう。
腸内と体との関係
便通を考える上で、基本となるのは脾臓です。これは、西洋医学でいう脾臓とは全く異なる概念です。
肝臓・脾臓・腎臓などの言葉は、東洋医学では意味が全く違います。なぜ?
脾臓とは…食物を摂り、消化し、栄養分のみを選別して吸収し、その栄養分は各細胞に配られ、活動のためのエネルギーに変化して、最終的に栄養分そのものが消えて無くなる…というルートを動かす機能のこと
です。いらないものは大小便として排泄するルートも脾臓が担っています。西洋医学でいう消化器に、+αの部分がありますね。この+αの部分は、運化機能と呼ばれます。大便をうまく肛門に向けて動かす力も、この運化機能の一部です。
ところが、それ以上に重要なのが、脾臓が「土」と符合するということです。実は、これが脾臓の本質です。
雑木林に代表されるように、健康的な土は、多種多様な草木を育てます。樹木の葉に守られ、豪雨は土に打ちつけることなく、また、深く張った樹木の根は、土が流れるのを防ぎます。さらに、草木・動物の死骸が生み出す有機物と、それを分解する微生物によって、土はスポンジのような保水性と通気性を持っています。腸内環境と符合することにお気づきでしょうか?腸内にも野菜・肉があって、体を肥やしますね。これにはビフィズス菌などの微生物が非常に重要です。
この保水性は、制水機能と呼ばれるものです。制水機能は、体液(血液・リンパ液・唾液・涙・大小便)を適度に体にとどめ、適度に排出して、体内環境を一定に保ちます。制水ができなくなると、大雨で土砂崩れが起こるように、下痢や出血などが起こります。
制水機能によって一定に保たれた体液は、体をグルグル回ります。これが運化機能です。これには、土の温かみが必要です。温かい土でなければ、水が蒸発し、水蒸気となって大気をめぐるという循環(運化機能)も起こりません。凍った土ではスポンジになりませんから、保水性もありません。
「温かいスポンジのような土」があってこそ、制水も運化も機能する、ということです。
また、脾臓(土)は、清(清水)と濁(泥塵)とに分け、湧き水を上に持ち上げる力(昇清作用)があります。濁(大便)が下に降りないと、清は上に昇れません。すると脳や心臓に清気が届かず、不眠や精神不安定を起こしやすくなります。鬱で便秘を伴う場合は、自然に通じがつくように治療することも重要なのは、そういう理由があります。
ちなみに、一般的な便秘薬は、 ほとんどが冷やす薬です。冷やすと、消化吸収が悪くなり、腸が収縮して便が通じます。邪熱が勝った便秘にはこれに勝る薬はありませんが、それ以外のものに処方すると、「冷えた土」となり、とりあえず排便は行われますが、脾臓を非常に弱らせます。そうすると、血が生産されにくくなり、薬を飲まなければ、便は余計に固くなります。また、運化機能も弱くなるので、蠕動運動も鈍くなります。
薬などなくとも、制水・運化の2つの機能が正常であれば、大便は適度な硬さをもって、スルスルと気持ちよく排泄されることでしょう。便秘を治すには、これを邪魔する要素を特定し、治療すればいいというわけです。
1.ストレスによるもの
(1)肝鬱(気滞)
ストレスがあると、肝臓の条達(のびやかに流通させる機能)がうまくいかなくなります。この状態を肝鬱と言います。結果として、滞りを生じます。これを気滞と言います。気滞は、脾臓の持つ運化機能を滞らせ、便秘になります。
腸から肛門に向けての運化が滞るので、大便が動かず、長く腸内にとどまります。腸内から全身への運化も滞りますが、便は長く腸内にあり、少しずつ吸収が行われるので、下痢になるわけでもなく、カチカチになるわけでもありません。普段、便通に問題ない人でも、旅行で便秘になることがあります。これは心理的緊張(ストレス)が便秘につながる実例です。
うまく出た後は、スッキリします。気滞が取れたからです。スッキリしないのは気滞が取れていない証拠です。運動すると通じがつくのは、このタイプの便秘です。普段からイライラしやすいのも特徴です。
肝鬱を緩め、気滞を取り去る治療(瀉法)を行います。
百会・行間・曲泉・肝兪 など。
次回は胃・脾臓の弱りからくる便秘について説明していきます。
院 長