「レジ袋 来年7月から有料化義務付けへ」(くらし☆解説)
2019年11月08日 (金)
今井 純子 解説委員
来年7月1日から、原則、国内のすべての店でレジ袋の有料化が義務付けられる方針が、先週、政府の検討会で固まりました。今井解説委員。
【有料化の義務付け。いよいよ具体的に決まったのですね】
そうですね。そもそも、日本は、国民一人当たりのプラスチックの容器や包装のごみの量が世界2位。レジ袋も、国民一人、一日一枚は使っているといわれる、使い捨てプラスチック大国です。プラスチックごみによる海の汚染が世界的に大きな問題となり、また、それを燃やすことで地球温暖化につながることが懸念されている中、日本は取り組みが遅れているという批判があがっていました。
プラスチック製のレジ袋については、世界の多くの国が使用を禁止したり、有料化を義務付けたりしています。このため、政府は、東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人観光客がくる前になんとかしたいと、7月1日から有料化を義務付けることになりました。レジ袋をきっかけに、使い捨てプラスチックに頼るライフスタイルの変革につなげたいという狙いがあります。
【私は、レジ袋を家の中のごみ袋に使っているのですが、結局、買って同じように使うことになるだけのような気がしますが】
それでもごみ袋を買うようになると、一枚一枚大切に使うようになる。そういう効果は期待できるかもしれません。
【確かに、使う枚数は減るかもしれませんね。有料化義務付けは、すべての店が対象ですか?】
はい。個人の小さい店を含めて、原則、すべての店が対象になります。スーパーやコンビニをはじめ、ドラッグストア、デパート。それに、みやげ物屋や外食の持ち帰りも、対象です。
【テーマパークに行くとおみやげをあげる人の分、袋をもらっていました。が、全部、有料になるのですか。一枚いくらになるのですか?】
それは、今後、店ごとに決めることになりました。自主的にレジ袋の有料化を進めてきたスーパーの多くは、1枚2円から5円ですので、そのあたりがメドになるのではないかとみられます。
ただ、有料化の義務付けの「対象外の店」そして、「例外の袋」はあります。
まず、対象外の店。
▼ 一つ目は、例えば、クリーニング店です。今回、レジ袋の有料化義務付けは、容器包装リサイクル法という法律の省令改正で対応します。もともと、この法律の対象は、「商品」を包む容器包装です。クリーニング店は「商品」ではなく、「サービス」を提供していますので、それに伴うレジ袋は、法律の対象外になるのです。商店街のくじ引きの「景品」を入れる袋も同じ考えで対象外です。ただ、国は、こうした店に対しても、自主的に有料化を進めるよう呼びかけることにしています。
▼ もう一つは、こちら。
【屋台ですか?】
はい。地域のお祭りや学校のバザーなどの屋台で、まとめて買うと、袋に入れてくれますよね。地域の住民や学校の保護者が屋台を出している場合、「業」ではありませんので、有料化の対象外になります。ただ、本業のやきそば屋が屋台を出している場合は、袋も有料になります。フリーマーケットで個人から商品を買う場合も同じです。売り主が「業」として繰り返し店を出しているのでない限り対象外です。
【次に、有料化の「例外の袋」。どのようなものですか?】
▼ まず、野菜や肉・魚を買ったときに、レジ袋に入れる前に商品を入れる内袋。これは、衛生上必要だという考えから、有料化の例外になりました。
▼ また、例えば、金魚を買った時に入れてくれる袋。こちらは、商品と一体で売られているので、例外という考えです。
そして、賛否両論あったのが、こちら。
▼ 植物などを原料とするバイオマスプラスチックを25%以上配合した袋と、海洋生分解性プラスチックの袋。
▼ さらに、普通のプラスチック製でも、厚さが0.05ミリ以上ある分厚いレジ袋も有料化の例外となりました。スポーツショップなどでもらうこうした袋です。
【なぜ、例外になったのですか?】
▼ バイオマスのプラスチックは、トウモロコシやサトウキビなどが原料で、光合成の際に二酸化炭素を吸収しているため、ごみとして燃やして二酸化炭素がでても、地球温暖化にはつながらない。また、海洋生分解性のプラスチックは、海の中で微生物によって分解されるため、生態系などに悪い影響を及ぼす心配がない。というのが理由です。
▼ これに対しては、一部でも化石燃料を使っていれば燃やすと地球温暖化につながるし、分解されるまでに時間がかかると生態系に影響がでる心配がある。そもそも、無料で配ると、使い捨てのライフスタイルを変えようという、政策の趣旨に反するという意見はありましたが、結局、例外となりました。
【一方、こちらの分厚い袋。プラスチックをより多く使っているのに、なぜ例外なのですか?】
表向きには、頑丈なので、一回で使い捨てはしないはずだ、という理由です。確かに、こどもが体操服を学校に持って行く時に使ったりしていますが、多くはすぐに捨ててしまいます。実際には、こうした袋を作っている国内の零細のレジ袋メーカーに配慮したためとみられています。
【例外があると、結局、店が、レジ袋を無料のこうした袋や紙袋に変えるだけになりませんか?】
その心配はあります。ただ、バイオマスや紙の袋は、店側にとっては、コストが割高です。また、環境問題に取り組む姿勢をアピールしたいという企業も増えています。そこで、例えば、
▼ イオン。すでにスーパーの食品売り場では、バイオマスの袋を有料で販売していますが、来年4月を目途に、ドラッグストアやコンビニなどグループ8000店に対象を広げて、有料化に踏み切る方針です。
▼ また、ファーストリテイリングも、レジ袋を順次、紙袋に切り替えた上で、来年1月から、消費税抜きで一枚10円。税込みだと11円の有料化に踏み切る方針です。デパートの中からも、客から、無料の紙袋をほしいと次々言われると、コスト上困るとして、紙袋の有料化を検討する動きもでています。
【有料化義務付けの対象外でも、有料化の動きがあるのですね。そうなると、買い物する側としては、常にマイバッグを持ち歩かないといけないですね】
これは、習慣の問題だと思います。そして、習慣づけるためにも、用途に応じて使いやすいマイバッグの開発を急いでほしいと思います。
県をあげてレジ袋の有料化に取り組んできた富山県では、スーパーではレジ袋辞退率が95%に達している。一方、ふらっと立ち寄ることが多い「コンビニ」では辞退率が上がらないのが課題になっていると言います。そこで、なんとかしようと、この夏、Yシャツのポケットに入れて持ち歩ける、小さなマイバッグを作って配りました。広げると、おにぎりと飲み物くらいは入る大きさで好評だったそうです。
【これは、コンビニ用にはいいですね。ぜひ、弁当や外食の汁物用のマイバッグとか、洋服を直に入れられるマイバッグも、考えてほしいです】
そうですね。そして、そうしたマイバッグを持ち歩く習慣を身につける。次は、マイ水筒とか、マイはしを持ち歩いて、必要のないペットボトルや使い捨てのフォーク、ストローは使わないようにする。
レジ袋をきっかけに、使い捨て文化の見直しにつながるよう、社会全体で考え、行動しなければいけない時にきていると思います。
(今井 純子 解説委員)