38 太陽中風、脈浮緊、発熱、悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之、
【私見】
37条で、脇痛があっても、浮にして幅ありならば、麻黄湯で行きなさい、という内容を踏まえています。身体に疼痛が、たとえ脇にあったとしても、 (浮細ではなく) 浮脈なので小柴胡湯は考えなくてもいいですよ、という意図があります。
37条で、脇痛があっても、浮にして幅ありならば、麻黄湯で行きなさい、という内容を踏まえています。身体に疼痛が、たとえ脇にあったとしても、 (浮細ではなく) 浮脈なので小柴胡湯は考えなくてもいいですよ、という意図があります。
さて、太陽中風とは、太陽病で中風寄りだということですが、これは誤写としか思えません。2条の中風の定義に「汗出」とあるのですから、本条文にある「不汗出」と相容れません。また、39条にも「傷寒、脈浮緩」とありますが、矛盾しています。もしかしたら、と思うのですが、38条冒頭の「太陽中風」と、39条冒頭の「傷寒」は、書き写すときに逆にしてしまったのではないか、38が「傷寒、脈浮緊、発熱、悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之、」で、39が「太陽中風、脈浮緩、身不疼、但重、乍有軽時、無少陰証者、大青龍湯主之、」ならば、つじつまがあいます。よって、それに従い展開します。
38 傷寒、脈浮緊、発熱、悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之、
傷寒とは、3条「太陽病、或已発熱、或未発熱、必悪寒、体痛、嘔逆、脈陰陽倶緊者、名曰傷寒、」です。その上に、本条文の証候が加わります。嘔逆以外は、38条は同じことを言っており、そこに煩躁が加わっています。大青龍湯証に嘔逆があってもいいということです。
発熱しているということは、衛気がドンドン補充されているということです。
悪寒があり、悪風がないので、傷寒ということが言えます。
頭項強痛に加えて身体疼痛があります。寒邪は疏泄しないので痛みがでますが、その痛みが強烈だということでしょう。寒邪が強いからです。
煩躁があります。これは邪熱です。寒邪で邪熱が発散できなくなっているので、いわば魔法瓶状態です。もともと内熱傾向で、営衛が充実している人が、強制的な強い患者に当たった場合の証です。
もうすこし深く掘り下げましょう。内熱傾向で営衛(正気)が充実していると言いましたが、正気が充実しているなら、内熱など籠らないはずです。これは陰陽が狂っている側面があるからです。ふつうは、「正気が優勢:邪気が劣勢」という陰陽関係があって、正気が強ければ強いほど、邪気は弱くなります。
この優劣という陰陽の振り子が振れなくなる、すなわち優劣という陰陽が機能しなくなると、「正気:邪気」という陰陽に変化します。つまり、正気が正気らしくなればなるほど、邪気も邪気らしくなる。この状況下では、命門の火が強い人は、その分、邪熱も強くなります。これを相火妄動と言います。
この段階で治療するなら、境界…少陽枢 (誤った肝気) …を治療します。すると陰陽が正しく機能しようとするからです。鍼で行くなら百会です。膻中・関元・神道・命門なども、反応を注視し、百会に勝れば行きます。反応が分からないならば行ってはなりません。
この異常事態を主導するのは、肝気がどこに向かっているか、疏泄するかによります。肝気が正しい方向に向かえば、正しい生活習慣となり、邪気をためません。逆に肝気が誤った方向に進めば、誤った生活習慣となり、元気であればあるほど、体に悪いことをしてしまい、邪気が旺盛になります。疏泄太過や、肝気偏旺とは、平たく言うとこういうことです。
そのような側面を持つ人が、冷えに当たると大青龍湯証になるのです。もともと内熱をもっていて、正気も旺盛な人が、寒邪にやられる。かなり厳しい寒邪でしょうし、相当な不摂生をしたのです。
調子に乗って不摂生をやっていた体質の強い人が、急にしんどくなった。これは「気をつけろよ」と自然からたしなめられているのです。そして反省し、肝気は正しい方向に導かれるのです。カゼといえども、我々の心と体をフィードバックしてくれているのです。
〇
もちろん、大青龍湯証になってしまえば、大青龍湯で治療すべきです。予防の方法も考えるべきだ、ということを言っているのです。
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もちろん、大青龍湯証になってしまえば、大青龍湯で治療すべきです。予防の方法も考えるべきだ、ということを言っているのです。
若脈微弱、汗出、悪風者、不可服、服之、則厥逆、筋惕、肉瞤、此為逆、
【私見】
脈微弱、汗出、悪風ということは、桂枝湯証です。こんな証に大青龍湯をもっていったら大変なことになるよ、という注意書きです。
脈微弱、汗出、悪風ということは、桂枝湯証です。こんな証に大青龍湯をもっていったら大変なことになるよ、という注意書きです。
実は、この条文は大原則を示しています。桂枝湯証に麻黄湯を与えたら大変なことになるぞ、ということです。麻黄湯証に桂枝湯を与えても、さしたる悪化はしませんが、「逆」をやると取り返しのつかないようなことになりかねません。44条で再度説明します。
大青龍湯方
麻黄六両 桂枝二両 甘草二両 杏仁四十枚 生姜三両 大棗十枚 石膏如鶏子大
右七味、以水九升、先煮麻黄、減二升、去上沫、内諸薬、煮取三升、去滓、温服一升、取微似汗、一服汗者、停後服、
【私見】
少し汗がジワッと出たら、それでスッキリするはずだから、すぐ服用を止めなさい。基本ですね。
大青龍湯を鍼灸で行くなら、合谷でしょう。純粋な大青龍湯証なら、少し太い目の鍼で刺したら脈が緩むと思います。そう純粋なものが少ないというだけのことです。純粋な証にしてから合谷に行けば、効くと思います。合谷で上巨虚や内庭の反応が消えなければなりません。
少し汗がジワッと出たら、それでスッキリするはずだから、すぐ服用を止めなさい。基本ですね。
大青龍湯を鍼灸で行くなら、合谷でしょう。純粋な大青龍湯証なら、少し太い目の鍼で刺したら脈が緩むと思います。そう純粋なものが少ないというだけのことです。純粋な証にしてから合谷に行けば、効くと思います。合谷で上巨虚や内庭の反応が消えなければなりません。