スカーレット感想あらすじ

スカーレット147話あらすじ感想(3/25)武志を助けたいと言える環境

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スカーレット147話
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    愛、語り合うんやで

    ここで直子は、こう言いだします。

    「あかまつ」行こう!

    「えっ?」

    「もう気ィ利かんなぁ! 行くでほら!」

    直子は強引に喜美子を誘い、真奈に電話をかけて「9時に帰ります言うて、それまでゆっくりしときぃ!」と指示をします。

    仕切り屋やなぁ。いらちやなぁ。川原三姉妹で一番父親に似ている、そんな直子ならではのナイスアシストだとは思います。

    直子は信楽を離れていて、なんかふら〜っと帰ってくる変なおばちゃんのようで、彼女の役割がちゃんとあるのです。

    喜美子は困惑し、「なんでいかなあかんのよ」と言います。薬を飲んだか武志に確認し、お茶かコーヒーでも出そうとしている。

    喜美子の場合、真奈に嫉妬どころか、鈍感なのか器がデカいのか、なんだか状況がよくわかっていません。

    嫉妬というのは、なまじ自信がないとしたりするものですから、喜美子は嫉妬しない。器がデカすぎて気がつけば周囲をぶち壊すタイプと言いますか。初恋のライバル・あき子の時も、どちらかというと相手の方が嫉妬していましたからね。

    直子はそんな鈍感な姉に苛立ちながら、上着を着せて、強引に連れ出します。

    「行くで、お姉ちゃん!」

    ようやったぞ、直子ぉ!

    「愛、語り合うんやで!」

    「何が愛や、こんなんされて語り合えるかっ!」

    そう言い残す直子と、突っ込む武志。ええ味出しとります。

    真奈は電話を借ります。

    「ほな電話します。お借りします」

    どこにいるか、いつ帰るか。9時になってもええか。帰る時連絡する。大丈夫。そう要点を親に伝えます。

    「ほな座ってそこ。ええからそこ」

    そう座らせて、武志はスケッチブックを持ってきます。

    「似顔絵描いたろ。あ、描いてもええ?」

    ここでそう断るところに武志の優しさを感じますよね。

    俺が描くんや、ええやろ。そういう押し付けがましさはない。それでよいと思います。

    【壁ドン】みたいな、強引に迫ることがイケメンしぐさ。そういう話は令和にいらん。平成に置いてきてええんちゃうか。許可は取らんとな。

    「会えるうちに描いとかんとな。結構うまいねんで、俺」

    許可を得て、鉛筆を走らせる武志。彼の親が描く似顔絵がなんだかシンプルでしたが、彼は美大卒です。

    ただ描くのではなくて、思いを残すこと。喜美子の少女時代から、向き合ってきたそんな世界があります。

    真奈は語り始めます。

    「うちな、お母さんに言うたんよ」

    「何を?」

    「好きな人いること……」

    そんなん言うん?
    戸惑う武志に、初めてだと真奈は言います。

    言うもんちゃう。いちいち言わへん。普通は言わへん。普通やないから、言うたんよ。

    「普通やない?」

    「特別や。特別な人や」

    「ははっ、アホか」

    「アホちゃうわ」

    「そんな顔すなて」

    「ふざけるなやもう」

    ここで武志は、抱きしめるわけでもない。愛を語るわけでもない。「アホ」の万能用法をしてしまう。

    照れていて、胸いっぱいで、どうしようもない。そんな気持ちを「アホ」に込めるしかない。

    感動的なBGMも、沈む夕日もない。あふれそうな思いだけがそこにはあります。

     

    大事だからこそ、距離を置くこと

    「あかまつ」では、喜美子と直子がカウンターにいます。

    直子はドライブのことを語るのです。

    車ん中でな、後ろの席に二人座ってんな。もっとひっついて座ったらええのに、離れてんやな。

    隙間空いてんねん、これくらい。

    だってな、武志は右、顔窓に寄せて、真奈ちゃんは左の窓から外見てる。

    言うたった。

    もっとひっつけって。もっと肩寄せ合えや。膝枕したってええで。そう言うた。

    空いたまんま。楽しそうに話すんやで。ほやけど、離れたまんまや。

    イチャイチャベタベタするより、離れている二人を見て、ああ、ほんまに好きなんやな。

    武志は真奈ちゃんのこと、大事に大事に思てんのやなて……。

    直子はしみじみと、そう語ります。

    本作は、いろんなものに「それでええんか? いかんでしょ」と突きつけるものを感じさせます。

    これは川原家にいる二人の場面でもそうで、キスはおろか、ハグすらしないわけです。

    なんかこう……昨年のあれやこれやとか、【壁ドン】とか、【顎クイ】とか、そういう何かに異議申し立てをしているようなものすら感じてまう。

    女性向けメディアの安易な萌えだけの話やないよ。見たくもないのに出てくる漫画広告な。

    アクシデント的に曲がり角でぶつかったとか。狭い場所に閉じ込められたとか。満員電車で隣にくっついたとか。

    意思の確認がないのに身体的に濃厚接触することを、恋愛のトリガーにする表現。

    男向けでも、女向けでも多すぎんか?

    それで顔を嬉しそうに、恥ずかしそうに赤らめて。そういうものをずーっと見とったら、なんかあかんすり込みされるでしょ。

    好意もないのに押し込められただけで、くっつけるような何やかやがあったら、場合によってはただの暴力やろ。犯罪やんか。それに異議を申し立てても「同意しとったで」と言われたらどうすんのよ。

    性的合意の重要性をいくら広めても、伝わらなかったらそれまでやし、メディアが後押しするような現状は、とてつもなく恥ずかしいドツボやと思う。正直、アホちゃうかと思う。良識を疑う。

    ※性的同意は大事やで!

    そういう不快感のある現象を【萌え】だの【ほっこりきゅんきゅん】だの投稿して、ネットニュースで盛り上げ、それを手癖にして、それでええんか?

    もう言うまでもないわな。『花燃ゆ』あたりで、そういうんはあかんと学ばんとな。あれからもう5年も経過するんやで。

    直子のこの、しんみりとしたおばちゃんの境地。胸に響いたわ……。

    直子は若い頃元気いっぱいで、そういうハプニング的なことにときめきを重ねて、愛を燃やしていた熱い女でした。

    今もやな。
    そういう大阪の女やさかい……そういう女が、しんみりとした若い世代の愛に、何かを悟る。人生は先輩だけではなくて、後輩からも学べる。ええ瞬間だと思いました。

    「ありがとう」

    しみじみと、そう喜美子は返す。

    この日本酒を飲む姉妹も、カッコええもんがある。直子は情熱の女らしい、片手で持ってもう片方で支える持ち方ですが。喜美子は片手で持ち、背中で語るスタイルでして。

    喜美子はガサツだ、おっさんくさい、声が低い。そう言われてはいますが、意図的にそうしているところはあると思います。ほんでそれが、往年の菅原文太さんを彷彿とさせるカッコよさで。スレンダーで、声が低くて、ともかくカッコええ。

    朝ドラヒロインとして、紛れもなく新境地に突っ込んだわ。

    次作が男性主人公と言われております。せやけど、本作でもう【朝ドラ英雄伝】は通過済みちゃうか。

    厳しい幼少期をふまえ、喜美子は往年のヒロインと比較されるけれども、明確に新しい人物像やで!

    1991年に『羊たちの沈黙』のクラリス・スターリングが、ジョディ・フォスターによって【フェミニスト・ヒーロー】と呼ばれて、2020年を迎えました。

    20年近く経て、朝ドラもやっと【フェミニスト・ヒーロー】に到達したと思えます。

    ※クラリス最高や!

    もちろん、世界は進んでおり、20年間でいろいろあったわな……。

    『ドラゴンタトゥーの女』のリスベットは、ゴスルックでバイクを乗り回し、ハッキングをして、悪党をぶん殴る。

    『アナと雪の女王2』のエルサは、シュッとした衣装を着て、拳を握りしめて前を見据える。

    『ゲーム・オブ・スローンズ』のデナーリスは、「王座や!」と叫び、街を焼く。

    MCUにせよ、『キャプテン・マーベル』最高や!

    ハーレイクインもチャーリーズエンジェルズも「女同士最高や! 男なんていらんかったんや!」と、死闘を繰り広げると。

    ※ジョーカーいらん、時代は刻一刻と動いとんねん!

    喜美子はそこに追いついた気がする。そのあたりは総評あたりでも、じっくり考えてゆきます。

     

    この一瞬を封じ込める

    そのころ武志は、真奈の似顔絵を描き上げていました。

    真奈はやっとここで、武志の隣に座り、似顔絵を渡されます。

    「ええの?」

    「うん」

    「ありがとう」

    「おう」

    短いやりとりに、何かがギュッと詰まっています。

    このとき、武志が見た真奈の顔。大事にしたい、そんな真奈の顔。ずっと残る、凝縮されたような気持ち。

    最終週、この二人の結末はどうなるのかという予想はあります。結末が大事なのではなくて、今を切り取った、この時間が綺麗で輝いている。色あせない。

    二人の時間が、何かに閉じ込められて輝いています。

     

    思いが届くこと、人を救うこと

    あと数日間。毎朝、ギュッと閉じ込められた思いと瞬間に、言葉を失いそうになる日々が続いています。

    そして、本作の真髄が実現しました。

    ハチさんこと松下洸平さんが陶芸大使になったことも素晴らしい。それだけではありません!

    ◆「スカーレット」を滋賀のレガシーに! 県プロジェクト始動 松下洸平さんが陶芸大使

    県は、半生が物語の参考にされた信楽の女性陶芸家・神山清子(こうやまきよこ)さん(83)が現在の「骨髄バンク」につながる組織の設立に尽力したことも踏まえ、県民を対象に骨髄などを移植したドナーに1日2万円、ドナー休暇を与えた事業所へ1日1万円を助成する制度を新設。助成の半分は市町が負担することを想定し、ドナー10人分、事業所5カ所分に対応する予算87万5000円を2020年度一般会計当初予算に計上している。

    県によると、ドナー登録者は全国で約52万8000人(1月末現在)で、患者との白血球の型の適合率は9割以上に達する。ただ「仕事の都合がつかない」などの理由で辞退され、実際に骨髄を採取し、患者が移植を受けられた移植率は6割未満という。県薬務感染症対策課の担当者は「ドラマで注目が集まっている今、骨髄移植へ理解を深め、助成が骨髄提供を迷っている人の背中を押す存在になれれば」と期待する。

    地味だの、低視聴率だの、モチーフが怒っていて毎朝泣いていて可哀想で失礼だの(※くどいようですが、神山清子さんの認可済み)言われております。

    そうではなくて、骨髄バンクドナー登録が増えるだけでも、助かる命が増えるだけでも、本作は成功なのです。

    ただ、登録を増やすだけでなくて、理解も深まればよいかと思います。

    これも効果ありますよ。

    「武志みたいな人を助けたい。そう思うとるんです!」

    「ええんちゃうか! 最高ちゃうか!」

    職場でこの会話が通じるのであれば、それはもう、大きな進歩です。

    このドラマは、生きることがつらい人を救う。

    そんな大きな功績を残した、2020年代かつ100作目以降にふさわしいドラマだと思います。あと数日、この作品をしっかりと見届けます!

    わたし ドナー登録&骨髄提供を体験しました【スカーレット特別寄稿】

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    文:武者震之助
    絵:小久ヒロ

    【参考】
    スカーレット/公式サイト

     

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